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食害の犯人は? 食べられた跡で鳥獣を特定しよう

連載企画:狩猟入門

食害の犯人は? 食べられた跡で鳥獣を特定しよう

野菜や果物が鳥や獣に食べられたら、残された食べ跡の形状から犯人を推定しましょう。獣害対策をする際、相手によって防除の方法は変わります。効果的な対策をするために、食べ跡は重要な手がかりになります。ここでは、特徴的な動物の食べ跡について解説します。以前ご紹介した足跡とともに覚えておくと、役に立つはずです。
※ ここで紹介している食べ跡はあくまでも一例です。足跡やフンなど別の痕跡も同時に探し、総合的に判断してください。

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野菜を食べる鳥獣

鳥獣

葉物 キャベツ・ホウレンソウ・ネギなど

キャベツ、ハクサイ、ブロッコリーといった葉物野菜は、苗から収穫期までの全期間、シカの食害を受けます。シカが疑われる場合は、近くに足跡やフンがないか探してみてください。また、野生のエサが少なくなる冬場は、サルに食害されることもあります。サルは主に集団でやってくるため、想像以上に大きな被害になります。ひと口だけかじって捨てたり、食べかすを放ったりするのはサルです。

銃砲所持許可

シカのフン。俵型で、一カ所に数十粒まとめて落とされています

ヒヨドリもキャベツとブロッコリーが好物で、コマツナなども食べます。食べ跡の形状が細かいので虫だと思われがちですが、ちぎったようにギザギザしていたら虫ではなくヒヨドリの可能性があります。防鳥ネットなどの設置を検討してください。

ヒヨドリ

ヒヨドリの食べ跡

また、ホウレンソウなどもシカに食べられ、地際の甘みのある部分はサルに食べられることもあります。

タマネギ、長ネギ、ワケギといったネギ類はサルに食害されます。手先の器用なサルは株を抜き取り、タマネギもネギも白い部分をひとかじりして、さらに次の株に手を付けます。広範囲にわたって食い散らかされていたら、サルを疑いましょう。

果菜 カボチャ・トマト・キュウリなど

カボチャの実はイノシシ、シカ、サル、アライグマ、タヌキ、カラスなどの食害を受けます。ネズミもカボチャを食べます。歯型が刻まれた穴はネズミかもしれません。

ヒヨドリ

ネズミに食べられたカボチャ

糖度の高いトマトはサルに狙われます。イノシシ、シカ、キツネ、タヌキ、カラスなどに食べられる場合もあります。

キュウリ、ナス、ピーマンなどもサルに食べられます。果菜類が「ひと口かじってポイッ」とされていたら、サルの可能性が高いです。

根菜 ダイコン・ニンジン・イモなど

ダイコンはシカ、サル、イノシシなどに食害されます。ニンジンは、葉の部分をシカに、根の部分をサル、イノシシ、タヌキ、ノウサギなどに食べられます。

イモ類では、ジャガイモはよくイノシシとサルに食べられます。味を覚えたイノシシやサルが群れで来襲し、株を掘り起こすこともあります。甘いサツマイモはイノシシ、サル、タヌキ、アライグマ、ネズミなどの好物です。

穀類・豆類 トウモロコシ・コメ・ダイズなど

トウモロコシの実は、アライグマ、イノシシ、サル、ハクビシン、タヌキ、キツネ、カラスなど多くの野生動物に好まれます。アライグマは茎を横倒しにして実全体を食べてしまいます。ハクビシンやタヌキもトウモロコシを食べますが、実を食べ残す場合が多いそうです。葉はシカに食べられることがあります。

田んぼでは主にスズメの被害があります。スズメは乳熟期の穂や出芽直後の胚乳を好み、ムギも食べます。稲の穂は、カモ、イノシシ、サル、カラスなどにも食べられます。また、ヌートリアはイネ科植物の葉や茎を食べてしまいます。

ダイズなどの豆類は、マメの実をサル、イノシシ、ハトなどにやられます。葉と茎はシカに食べられます。

果物を食べる鳥獣

ヒヨドリ

放置された甘い柿は鳥獣に狙われています

樹木になる果物 柿・ブドウ・ミカンなど

柿、リンゴ、ナシ、ブドウなども野生動物の大好物です。イノシシ、ハクビシン、サル、アライグマ、クマ、カラスなどに好まれます。特に問題となりやすいのは柿です。放置された柿の実が格好のエサとなり、イノシシ繁殖の原因となるケースが増加しています。被害の多い地域では、管理できない柿の木は伐採を検討してもよいかもしれません。

近年増えているのは、ハクビシンによる果樹被害です。甘いものが好きでブドウ、ミカンなどを食害します。木に登るのが得意で、枝先まで器用に登って実を食べます。手先は器用ではないので、実をもぎ取らずに、前足で枝を引き寄せてかじりつきます。実が木についたまま食べ跡がついていたら、ハクビシンを疑ってください。ただしカラスにつつかれている場合もあり、ハクビシンとカラスの食べ跡の判別は難しいです。

ヒヨドリ

顔の真ん中が白い「ハクビシン(白鼻芯)」

ミカンなどの柑橘(かんきつ)類はイノシシ、サル、タヌキなどにやられます。主な柑橘類は野生のエサが少なくなる冬場に実を付けるため、獣にとって魅力的なエサになります。シカに葉や木の皮を食べられ、枯れてしまう場合もあります。

果樹はカラス以外の鳥による被害も多く見られます。柿、ナシ、リンゴなどの落葉果樹はヒヨドリやムクドリなどに食害されます。柑橘類の被害は主にヒヨドリです。ムクドリはショ糖が消化できないため、ショ糖を多く含む柑橘類をほとんど食べません。

果実的野菜 スイカ・メロン・イチゴなど

スイカやメロンはアライグマ、イノシシ、タヌキ、サル、カラスなどにやられます。アライグマがスイカを食害した場合、スイカの一部に穴をあけ、そこから両手を差し入れて中をくりぬくように食べます。中身がなく空洞になっていたらアライグマの仕業です。穴があいていても中身が残っていたら、カラスの可能性が高いでしょう。

イチゴはハウス栽培の場合は被害が少ないのですが、自家消費用の露地栽培で被害があります。アライグマ、イノシシ、ハクビシン、タヌキ、サル、ネズミなどが食べてしまいます。

土壌を荒らす獣

ヒヨドリ

イノシシに掘り返された痕跡

幼虫やミミズなど

畑や田んぼが派手に掘り返されていたら、おそらくイノシシです。イノシシは土壌の幼虫やミミズが好物で、重機が入ったかのように田畑を掘り返して虫を探します。休耕田や竹林も被害を受けやすいようです。イノシシはタケノコも好きで、タケノコの中身だけを食べられ皮が散乱していることもあります。

イノシシは体についたダニなどの寄生虫を取り除くために泥水の上で転げまわる習性があり、そのような場所をぬた場と呼びます。周辺に巣もあるかもしれませんが、ダニがいるのでむやみに触らないでください。

ぬた場

田畑の近くに「ぬた場」があったら要注意!

イノシシの他にイタチやアナグマなども土壌の虫を食べます。かじられたミミズが畑に落ちている、虫が食べられた形跡がある、という時にはこれらの動物を警戒してください。

野生動物は私たちが想像するよりも賢く、しつこいものがたくさんいます。食べ跡や足跡を観察して犯人をつきとめ、あきらめずに対策を施しましょう。

参考文献:
「フィールドで出会う哺乳動物観察ガイド」(誠文堂新光社)
「哺乳類のフィールドサイン観察ガイド」(文一総合出版)
「これからはじめる狩猟入門」(ナツメ社)

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