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「40代でも遅くない」 大規模生産法人を卒業した農家の奮闘記

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「40代でも遅くない」 大規模生産法人を卒業した農家の奮闘記

京都府亀岡市でネギを生産する田中武史(たなか・たけし)さんは、45歳だった6年前、長年勤めた農業法人から独立して就農した。掲げた目標は家族経営ではなく、会社として事業を大きくすることだ。大勢の従業員を雇い、不慣れな営業にも挑戦して売り上げを増やしてきた。だが順調に伸びてきた経営を、台風や豪雨などの自然災害が次々に襲う。「これがラストチャンス」という覚悟で就農した田中さんの、不屈のチャレンジをお伝えしたい。

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豪雨でトラックが流された

2018年9月8日の朝6時過ぎ、田中さんは不安な気持ちを抑えながら、亀岡市の山の中腹にある事務所を目指し、車を走らせていた。前日の夜、集中豪雨が一帯を襲い、道路の上を川のように水が流れていた。途中で通行止めにあい、車を降りて徒歩で坂道を上っていった。
しばらくすると、作業場の外に積んであったプラスチックのカゴが流れてきた。要らない葉や根っこなど、調整作業でネギから外した残さを入れていたカゴだった。ドキッとしたが、まだ深刻な被害にあったと決まったわけではない。「もしかしたら」という胸騒ぎと、「カゴが流れた程度ですんでくれればいい。あとは何とか助かっていてほしい」と祈る気持ちが交差した。

事務所の前の道路を濁流が覆っていた(京都府亀岡市)

事務所に近づくと、目に飛び込んできたのは横転した自社の2トントラックだ。駐車場から道路へと押し流されてきたのだった。いまや不安は頂点に達していた。事務所に駆けつけると、数台の車が土砂に埋まっていた。ネギをカットする加工場に細かい土が流れ込み、更衣室の扉を突き破っていた。
独立し会社を立ち上げた田中さんにとって、事務所と作業場は、事業の成長の拠点となる「城」とも言うべき場所だった。「そのときどう思いましたか」という筆者のベタな質問に対し、田中さんは「うわーって思った」という言葉をくり返した。このシンプルな表現が、衝撃の大きさを物語る。

集中豪雨で被害にあった社用車(京都府亀岡市)

田中さんはこのピンチをどうやって乗り越えたのか。そのことを述べる前に、いったん時計の針を独立のころに戻し、これまでの歩みをふり返っておこう。

独立の喜び「畑がお金に見えた」

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