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イオンアグリが拡大中止 農地があってもブレーキを踏んだ重要課題とは

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

イオンアグリが拡大中止 農地があってもブレーキを踏んだ重要課題とは

企業による農業参入で、もっとも存在感を示しているのがイオンだろう。全国20カ所で直営農場を運営し、面積は合計で350ヘクタール。企業参入の枠にとどまらず、農業界全体を見わたしても、抜きんでた経営規模を誇る。ところが、じつは2年ほど前から新たに農場を開くのをやめている。なぜ事業の拡大にブレーキをかけたのか。そのわけを探ると、農業が抱える構造問題の解決に同社が真正面から取り組んでいる姿が見えてくる。

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企業参入で異例の規模拡大

イオンは2009年に茨城県牛久市に農場を開き、農業に参入した。運営しているのは子会社のイオンアグリ創造(千葉市)。最初に牛久農場を取材で訪ねたとき、農場のスタッフが話してくれた言葉を今も鮮明に覚えている。「周辺のベテラン農家にはかないません」。肥料のやり方一つとっても、経験を積んだ農家には簡単には追いつけないというのがその理由だった。「なんて率直な説明の仕方だろう」というのが、そのときの感想だった。

イオンの直営農場の第1号(茨城県牛久市)

企業の農業参入で撤退したり、事業を縮小したりするケースが相次いだため、今では「企業が農業をやればうまくいく」という単純な見方はかなり後退した。だが、10年ほど前は「上から目線」としか言いようのない農業観を持って農業を始める企業が少なくなかった。
例えば、トマトの施設栽培を始めたある企業のトップは筆者の取材に対し、「優秀な人材は2次、3次産業にどんどん流れていった。農業に知恵を注ぐことのできる人材が、どっと入って来たことはない」と言い切った。別の企業のトップは、参入した理由を「農業のコスト構造を調べたい」と説明した。この言葉の裏には「農家がやっていることには無駄がある」との思い込みがあった。
結論から言えば、前者のケースでは、この人がトップに就いている間、事業が黒字になることはなかった。利益が出るようになったのはトップが代わり、栽培と販売の両面から地道に農場の運営を立て直した後のことだ。後者の例は、一度も利益を出すことができずに早々と撤退した。この企業の担当者に撤退後に話を聞くと、「農業は甘くなかった」と反省していた。

人材育成に力を入れるイオンアグリ創造社長の福永庸明さん

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