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【害獣対策】専門家が教える!効果が高いワイヤーメッシュの選び方

【害獣対策】専門家が教える!効果が高いワイヤーメッシュの選び方

日本全国で野生鳥獣による農作物被害が発生しています。被害を食い止めるために農家さんは農業系の新聞や雑誌、インターネットなどから情報を集め、被害対策グッズを購入すると思います。しかし、田畑を囲うための柵一つとってみてもさまざまな製品が販売されており、何を選んで良いのか迷ってしまいます。そこで、被害対策の効果が高いワイヤーメッシュの選び方を紹介します。

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選ぶのが難しい! ワイヤーメッシュ

ワイヤーメッシュ(溶接金網)にはさまざまな規格があります。
本来は建築用の資材であるため、これまで農作物の被害対策にはあまり利用されることがなく、かんきつ類の被害対策で山の中で使われる程度でした。15年ほど前にイノシシの跳躍および乗り越え行動を抑制する折り返しワイヤーメッシュを私が開発し、侵入防止効果が認識されてからは、あっという間にワイヤーメッシュの利用が広がり、複数のメーカーが参入して鳥獣害対策用のワイヤーメッシュや金網が販売されるようになりました。

近年では、店頭に並ぶワイヤーメッシュの種類も多くなり、選ぶのに苦労したり、お店で唯一売られているものを購入して失敗したり、あるいは精度を比較せずに効果の低い商品を購入してしまう人が見受けられます。
そこで今回は対象となる動物や農地環境に合わせたワイヤーメッシュの選び方を紹介します。

価格は、金網に使用している針金の太さや、目合い(網目の一区画)の大きさによって大きく変化します。価格と効果の両方を見て検討しましょう。

針金の目合いは正方形がおすすめ

ワイヤーメッシュは本来、コンクリートをはる時に使われる建築用資材です。基本は、目合いは正方形で、3、5、7.5、10、15、20センチ四方などの規格があります。

さまざまな規格のワイヤーメッシュ

近年は鳥獣害対策用のワイヤーメッシュがいくつも販売されるようになってきましたが、これらのほとんどが建築資材用と異なり、横に長い長方形の目合いになっています。また、鳥獣害用として販売されているものは、建築用のメッシュのように共通した規格があるわけではなく、各メーカーがそれぞれ1種類から数種類の製品を販売しています。

獣害対策用のワイヤーメッシュは横長の長方形の目合いを持つのが特徴ですが、ワイヤーメッシュ全体が同じ目合いを有するものと、部位によって目合いのサイズが変わるものがあります。
目合いサイズが変化する製品は、横幅は一定で20センチ程度に固定され、目合いの縦の長さが変わります。
縦の目合いの変化は、柵を設置した時に地面に近い下部の縦軸が5センチ程度と短く、高くなるにつれて20センチ程度まで広がるものが主流です。

横長の長方形の目合いは野生動物がくぐり抜けやすい

これまでの研究や野生動物の観察から、ワイヤーの目合いは正方形の方が防除効果は高いと考えられています。実際に行った試験でも、野生動物は、面積が同じであれば正方形よりも長方形を選んでくぐり抜けました。

被害対策に使われている長方形ワイヤーメッシュの一般的な格子のサイズは縦が5〜6センチ、横が21〜22センチ です。面積にすると105〜132平方センチです。10センチ四方の正方形の面積よりも大きいですね。それも当然です。売る側からすれば、格子の面積を大きくすればワイヤーメッシュに使うワイヤーの原料費が下がるので、利益が上がります。

売る側にはメリットがありますが、被害対策としてワイヤーメッシュを使う側にとって、横に長い目合いは、以下のデメリットがあります。

  • 縦線の間隔が広いため動物が横線をかみやすい。
  • 動物の口が奥まで入りやすい。
  • 一辺が長いと動物が触れた時に曲がりやすい。
  • ワイヤーメッシュ同士の連結は一マス重ねて設置するのが基本だが、長方形だと重なりが大きくなるため、ロスも大きい。

対象動物によって適した目合いが違う

対象となる野生動物によって目合いを使い分ける必要があります。イノシシやシカなどの大型野生動物に対しては、くぐり抜けられるかどうかだけではなく、破壊されないような規格を選択します。

イノシシ、シカ、サル

正方形の格子のワイヤーメッシュで、10センチまたはそれ以下の目合いを使用します。イノシシ対策で15センチ格子を選択した場合、生まれてから半年までの子イノシシは目合いをくぐり抜けることができます。子が田畑に侵入すると、母イノシシもしつこく侵入しようとします。たとえ侵入されなくても、メッシュ柵を長時間いじられることになるので、耐久性に問題が出てきます。したがって子イノシシも侵入できない10センチ以下の格子のメッシュ柵の設置が必要になります。

タヌキ、アライグマ、ハクビシン、アナグマ

中型動物は7.5センチまたはそれ以下の目合いを使用します。

テン、イタチ

5センチまたはそれ以下の目合いを使用します。
初めはイノシシ用に10センチの目合いを購入したが、後から中型動物がやってくるというような場合があります。高価な5センチ目合いを購入するのが理想ですが現実的ではありません。10センチ目合いのメッシュを追加購入して5センチずらして重ねて設置することや、ネットをワイヤーメッシュの内側から重ねて設置するのが良いでしょう。

線径の選び方

柵に使われているワイヤーの線径(断面の直径、太さ)も3.2、5、6ミリなど、いくつかの種類があります。
イノシシ、シカ、サルを対象とする場合は5ミリ径以上が理想ですが、4ミリ以下でも支柱の設置間隔を短くすることや地際を補強することで使用可能になります。

線径が太いほど丈夫になりますが、重量も増していくので、取り扱いは難しくなります。
体力も予算にも余裕のある方は5ミリ径のワイヤーメッシュを選択してもよいでしょう。
体力に自信のない場合や、作業人数が少ない場合は5ミリや6ミリ径を使うのは大変だと思いますので、軽めの3.2ミリ径がおすすめです。

一方で強度には欠点があり、野生動物が下から無理やりくぐり抜ける可能性があります。必ずメッシュの接地面にパイプや竹など、棒状の資材を固定する必要があります。ワイヤーメッシュと一緒に、ハウス用の金属パイプなどを用意して、接地ぎわを補強することをおすすめします。直径22ミリ以上の鉄筋を使う方もいますが、この場合は直径が13ミリ以上のものを使ってください。固定するのがやや大変ですが間伐した竹を使うと安上がりです。

地際をパイプで補強してくぐり抜けを防止い

強度の高いワイヤーメッシュ

これまでに紹介してきた以外のワイヤーメッシュも販売されています。従来のワイヤーメッシュは丸棒状のワイヤー同士を十字に溶接していますが、ねじれた角棒状の金属棒を十字に溶接して、溶接部分の金属棒同士の接着面積を増やして強度を高めようとするものなども販売されるようになりました。

もしもの時の注意点

まれに、ワイヤーメッシュの溶接が甘く、新品を設置する時に溶接が剥がれていることがあります。このような場合、製品ロット全体の溶接が甘くなっている可能性がありますので、すぐに販売店に相談して、ロットごと交換してもらってください。
木登りの上手なサルやハクビシン、アライグマがやってきた場合、対応するワイヤーメッシュのサイズは紹介しましたが、それだけでは足りません。彼らの侵入を阻止するには、ワイヤーメッシュの上に電気柵を設置する必要があります。
詳しい設置方法は「【害獣対策】専門家が教える!効果が高い電気柵の選び方」で紹介します。

ワイヤーメッシュは値段だけで決めるのではなく、製品の特徴をよく理解した上で、対象動物への効果をあらかじめ把握して選びましょう。

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