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十勝に巨大ヒマワリ迷路が出現 農家と地域を元気にするカラクリ

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

十勝に巨大ヒマワリ迷路が出現 農家と地域を元気にするカラクリ

北海道の十勝地方に2019年、巨大なヒマワリ畑が登場した。広さは東京ドーム1個分。畑を作ったのは、先進的な経営で知られる前田農産食品(北海道・本別町)だ。7月には畑の中に迷路を作り、地元の人を集めてイベントを開いた。農業が抱えるさまざまな課題を解くためのヒントが詰まったヒマワリ迷路だ。

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出発点は連作障害の防止

前田農産食品(以下、前田農産)は農地面積が120ヘクタールと、北海道でも有数の大規模経営の農業法人。栽培している作物はメインの小麦に加え、砂糖の原料になるビート(てんさい)や、ポップコーンに加工するトウモロコシなど。そこにヒマワリが加わった。
ヒマワリの栽培を始めた理由の一つは、同じ作物を作り続けることで起きる連作障害の防止だ。これまで前田農産は4月にタネをまく春まき小麦の次に、9月にタネをまく秋まき小麦を育て、続いてビートからトウモロコシの栽培に移行するという栽培体系を組み立てていた。
ヒユ科のビートを除くと、小麦もトウモロコシもイネ科。収量が減ったりするなどの連作障害はまだ起きていなかったが、社長の前田茂雄(まえだ・しげお)さんは「そろそろ手を打ったほうがいい」と思ったという。

迷路を作ったヒマワリ畑(写真提供:前田農産食品)

キク科のヒマワリを育て始めたのはそのためだ。前田農産はこれを植えることで、春まき小麦→ヒマワリ→秋まき小麦→ビート→トウモロコシの輪作に挑戦することにした。
栽培面では、畑の中で違う品種の小麦が混じってしまうのを防ぐという目的もあった。というのも、収穫した春まき小麦のタネが一部畑に落ちたままになり、秋まき小麦と一緒に育ってしまうことがあったのだ。秋まき小麦の畑で育った数千本の春まき小麦を、2週間近くかけて手作業で引き抜いたこともある。
春まき小麦の後にヒマワリを育てることにしたのは、前田さんが「もう大変」とため息をつくこうした作業を減らす狙いもある。小麦とはまったく違う作物で育て方が異なるので、一緒に育ってしまうリスクが小さいからだ。

ヒマワリのタネを使って試作したパン(写真提供:前田農産食品)

以上は、ヒマワリを育てる栽培上の理由だ。
農業では地力の維持に目的を絞り、畑にすき込むために植物を栽培する例もあるが、前田さんはせっかく育てたヒマワリを商品にすることを考えた。パンの材料として販売するのだ。
白黒のしま模様の殻から、ヒマワリの小さなタネを取り出す。それをパンの表面にふりかけ、こんがりと焼き上げる。以前から小麦粉の販売でつき合いのある十勝の有名ベーカリー、満寿屋商店(帯広市)にこのアイデアを示した。2018年に試験的にごく狭い面積でヒマワリを栽培し、パンを試作してもらうと、商品になりそうなおいしいパンができた。

連作障害の防止という目的で選んだヒマワリは、こうして販売用の作物になる可能性が見えてきた。だが前田さんは当初から、もっと別の大きな目標も持っていた。地元の食と農のファンを増やしたい――。そのためにヒマワリ畑の中に複雑な道を通して迷路にし、イベントを開いた。ではなぜ迷路を選んだのだろうか。

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