SNSとネット販売を学びたい! 農業者の声に応えてセミナー開催
茨城県が運営する「いばらき農業アカデミー」で開催された「SNSを活用した販路拡大セミナー」には、県内の農業者約20名が参加。1日の講座でネット流通の知識から、ネットショップ開設、SNSの活用方法まで、ワークショップ形式で学びました。
講師を務めたのはBASE株式会社 Market Development担当の前田崇之(まえだ・たかゆき)さん。ネットショップの普及活動に取り組む中で、数年前から自治体や農業者を支援する団体から、生産者向けにネット流通の販売戦略に関するセミナーを開いてほしいという依頼が増えているのだそうです。
「背景にあるのが、農業者の販路拡大へのニーズの高まりです。JAを中心とした市場流通を基盤とされる農業者が多い一方で、通常の流通に乗りにくい少量生産品や加工品の販売先を増やしたり、農園のPRや六次産業化のために販路を拡大したい、収益性を高めていきたいという農業者が増えてきています」と前田さんは話します。

BASE株式会社 Market Development担当の前田崇之さん
そこで、マイナビ農業と協働し、開催した今回のセミナーでは、ネットショップの知識から実践まで3ステップで講義。第1部「ネット流通について知ろう」では、ネットショップの運営事例とそこで売れている商品の傾向を把握。第2部「ネットショップを開設してみよう」では、ワークショップ形式で実際にネットショップ作成サービス『BASE』を使ってネットショップを開設。第3部「SNSを活用する」では、SNSを通じてネットショップを訪問するお客様が多いことから、商品の購入につながる投稿の方法を学んでいきます。
「SNSもネットショップも、やること自体は簡単に、かつ費用負荷もさほど掛からずできるようになりましたし、慣れてしまえば一人で運営していくことも難しいことではありません。ただ、それまでしてこなかった作業への不安やとまどいは避けられないもの。行動に移すためには “腹落ち” が必要です。セミナーでは何のためにそれをやるのかを伝えることを大事にしています」と、前田さんはセミナーの狙いを話します。
ネットショップの開設も習えば楽しく簡単

井川農園の井川和義さん・裕美子さん
セミナーに参加した井川農園の井川和義(いがわ・かずよし)さん・裕美子(ゆみこ)さんの実家は、茨城県鉾田市で代々農業を営む家系。現在は和義さんの両親と弟2人が農業に従事し、井川さんご夫婦は会社勤務と兼業で週末に家業を手伝っています。
家族全員で点在する総面積6haの圃場で、サツマイモ、人参、キャベツ、カリフラワー、ゴボウ、ダイコン、米など、複数の作物を栽培しています。
「将来は専業で農業に就きたいので、それまでに農園の販路を拡大して収入の基盤を作りたいと思いました」と和義さん。「そのために、自分たちのできる範囲で負担なく始められるのが、SNS活用とネットショップでした」と裕美子さん。ご夫婦でセミナーに参加したきっかけを聞かせてくれました。
今回のセミナーには井川さんご夫婦のように、自家製の石焼きいもを販売したい、平飼い卵を拡販したい、障がい者施設の農産加工品をPRしたいなど、多くの方が明確な目的を持って参加していたのが印象的でした。
セミナーは、まずネット流通に向いている商品を確認することからスタート。普段利用するスーパーなどでは目にできないワケあり品が売れている一方で、贈答品、自分へのご褒美としての贅沢品、加工品など、お客様にとって特別感のあるものが、ネットショップで売れる傾向にあります。

各商品がどのような取引形態に向いているかを判断します
現在、井川農園の出荷先はJAと卸売業者がメインで、少量をスーパーの直売コーナー、農水産物の通販サイト、ふるさと納税サイトで販売しています。
「うちでは市場流通が収入の基盤になっていることが不安でもあったのですが、それ自体が間違っているわけではないと分かりました。それ以外に利益を作っていく方法として、お客さんに直接販売するネットショップなどの売り方があると整理できて、とてもすっきりしました」と裕美子さん。
セミナーの第2部では、参加者のみなさんに『BASE』のサービスを利用してネットショップ開設の0→1を進めてもらいました。ネットショップ開設には、売りたい商品の写真や説明文など用意するものも多いですが、素材が揃っていない場合でも、用意されたデモデータを使って実際にショップ開設までを体験することができます。途中分からないことが出てきても、周りに聞きながらその場で解決できます。
すでに写真やロゴなどの素材がある井川さんご夫妻は、その場でサイトをほぼ完成。数週間後、取材時にネットショップを開設して、サツマイモとゴボウの販売を開始しました。

井川農園のショップのTOPページ

『BASE』はスマートフォンでの表示にも自動対応
「こんなに簡単にネットショップまで立ち上げられたのは大きな収穫です。シンプルで楽しくできることは大事。私たちには『BASE』が合っていると思いました」と和義さん。セミナー参加者同士で情報交換をしたり、ショップを見せあって学ぶこともできたそうです。
「ネットショップはお客様が直接買うだけでなく、小売業やレストランとの取引につながる事例をたくさん見てきました。ただ、服やアクセサリーはそのままで商品ですが、農産物は素材そのものにとどまっていることが多いんですね。このため商品を届けるための梱包材や同梱するパンフレット、おまけなどに工夫があると、より感動を生み出しやすい『商品』になります。他との差や付加価値をつけやすいという観点で、農業はすごくポテンシャルがあります」と前田さん。
ただ開設するだけでなく、商品や売り方を考え、ネットショップを起点にビジネスチャンスが生まれることもあるようです。
ネットショップとSNSで相乗効果を狙う
ネットショップを開設したら、SNSと連動して店舗を運営することが、今回のセミナーのゴールです。例えば、Instagramならリアルさを大切にした写真を、検索でヒットするハッシュタグを付けて投稿し、投稿の内容やいいね数を管理することがSNS運用のコツ。振り返りができて、投稿の精度が高くなります。
和義さんは、「せっかく自分の農園をやるなら発信しなきゃ」という妹の勧めで、InstagramとTwitterのアカウントを開設したばかり。ハッシュタグ検索で商品を購入する人が多いことをセミナーで知り、早速、サツマイモやゴボウに使えそうなワードを探しました。
「SNSとネットショップについては、私たちは5段階レベルの1.5ぐらいなので、0から教えていただけたのが良かったです。ホームページを開設されている方でもネットショップのことはよく分からなくて研修に参加された方もいらっしゃいましたね」と裕美子さん。

セミナーではSNSの活用の意義から拡散のコツまで細かく解説
「SNSは自分たちの農作物や取り組みをいろいろな人に知ってもらうきっかけとして、また知ってくれた人に新しい情報を届けるという点において優れています。ネットショップを開設する際はSNSにも取り組むことで販路拡大をより推し進めることができます」と前田さん。SNSとネットショップ開設がセットになった今回のセミナーの趣旨をこのように話します。
販路拡大の先に目指すのは、地域の活性化
「高齢で農地やハウスを手放したり、農業を辞めようという方もいらっしゃいます。私たちが法人化して規模を拡大すれば、その方たちのお知恵を借りたり引き継ぐこともできるのかなと」とは裕美子さん。
「先祖代々ずっとこの土地で農業をさせてもらってきました。将来は自分が稼いで地域に還元し、貢献できる仕事として農業を継いでいきたいです」と和義さん。
「ネット販売は、農業においてできることの一部でしかありませんが、ここをきっかけに卸などの法人契約が作れたり、新しい商品が生まれたり、また、お客様から直接ご意見をいただくことで新しい発想を得ることも少なくありません。生産・販売・情報発信・商流拡大・商品開発などの異なる要素が、ネットショップをハブとしてつながり合います。さらなる挑戦の足掛かりにしてもらいたいですね」と前田さん。
ネットショップ作成サービスのプラットフォームであり、さまざまな業種でのネット流通の事例を持ち、農業を客観的に見ることもできる『BASE』だからこそ伝えられることがたくさんあります。地域で農業者の販路拡大へのニーズがあれば、セミナーの開催を検討してみてはいかがでしょうか。
<取材協力>
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