アグリホールディングス岩崎氏から学ぶ、農家の営業と販路開拓【農家の課題解決ゼミ開催レポート#05】

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アグリホールディングス岩崎氏から学ぶ、農家の営業と販路開拓【農家の課題解決ゼミ開催レポート#05】

連載企画:農家の課題解決ゼミ開催レポート

アグリホールディングス岩崎氏から学ぶ、農家の営業と販路開拓【農家の課題解決ゼミ開催レポート#05】
最終更新日:2020年02月07日

阿部梨園・FARMSIDE worksの佐川友彦(さがわ・ともひこ)さんとマイナビ農業が送る、生産者の悩みを解決する「農家の課題解決ゼミ」の第5回が、11月25日に東京・人形町のノウラボセミナールームで行われました。今回の特別講師は、岩崎亘(いわざき・わたる)さんです。みかん専業農家の長男に生まれ、農業の諸問題を痛感してきたそうです。岩崎さんは、これまでも農業法人、アグリホールディングス、実家であるみかん農園など多岐にわたる販路開拓に尽力してきました。今回のテーマは、「農家の販路開拓ことはじめ」。満員御礼の当日の様子をレポートします。

食材だけではなく、人・畑・地域も売ることができる

熱心に話に聴き入る参加者のみなさん

第1部はゲストセッション。まずは特別講師である岩崎亘さんのトークからスタートしました。

東京、静岡、シンガポールと日々飛び回る岩崎さん

「販路拡大と言うと農家のみなさんが丹精込めて作った食材を売る意味合いが強いですが、“人、畑、そして広い意味では活動されている地域そのもの”も売り物になるのではないでしょうか?」と岩崎さん。2006年に早稲田大学を卒業後、営業力を磨くために株式会社リクルートに入社。その後、農事組合法人 和郷園に入社。2015年には、野菜や果物を低温で絞るコールドプレスジュースの事業を行う会社を設立し、代表取締役に。ジュースの原料は規格外野菜や摘果みかんなどの農作物を活用し、原価を抑えて付加価値をつけ、販路を拡大しました。2018年からは株式会社アグリホールディングスに参画。「日本のAgri(農業)とFood Culture(食文化)を世界に、世界を豊かに」をスローガンにし海外に販路を作っています。現在はシンガポールのおにぎり専門店やニューヨークの居酒屋出店をはじめ、加工品を出したいメーカーさんと輸出したいバイヤーさんのオンライン上でのマッチングサービスも行っています。国内では、BENTO LABO(ベントーラボ)での健康に配慮した弁当の販売や日本酒ワインを飲食店に卸すなど各方面で事業を展開。「一口に販路開拓と言っても、ただ農産物をそのまま売るだけではないということがわかってもらえたら」と岩崎さんは話します。
岩崎さんのゲストトーク後は、佐川友彦さんと対談の時間となりました。

対談:青果流通の構造から考える販路開拓

大切なのは販路を一つにせず分散させてリスクに備えること

佐川:販路全体像を踏まえて、生産者側や農家側の立場になったときに、どんな販路を選べばいいでしょうか?

岩崎:手間やコストを考えるとどの販路もメリットデメリットがあります。例えば、販路を一つに絞って万が一何かあった場合は大変な損害になりますから、「分散させる」ことが大切になってきます。

佐川:品目や取引先にもよりますが、どんなに単価が良くても一つの販路にはせず、その都度選択し組み替えるベストミックスな形をとるのがよいですね。

個人農家の戦略とは、キャラクターや畑、地域などをアピールしファンになってもらうこと

佐川:個人農家の販売戦略や「強みの生かし方」もしくは「売り込み方」をどうしたらいいでしょうか?

岩崎:個人農家であれば売るものは農産物だけでなく、自身のキャラクター、畑、地域をアピールして売るのが差別化になるのではないでしょうか。最近は、オンラインサロン(ウェブ上での会員制コミュニティー)がポピュラーになりつつありますが、この仕組みは生産者に親和性が高いように思えます。

佐川:「販路開拓」、どこまで営業に時間とパワーを使えばいいのでしょうか?

岩崎:普通の農家さんは営業をしていないので、商談会に出る、営業電話をかけるなどの営業をするだけで圧倒的に差がつきます。やり方がわからない方は周りで営業している人に聞いたり人の力を借りて時間をかけると意外な販路を開拓できると思います。

参加者の経験と知恵を出し合うワークショップ

第2部は「販路研究」ワークショップを行いました。参加者は経験と知恵を出し合いながら、農家直売、農産物直売所、市場出荷、契約販売、その他全ての販路プロファイルを作成。「書き出してもらうこと自体が経験になる」と佐川さん。賛否両論合わせて白熱した意見が交わされました。

その後、佐川さんと岩崎さんによる講評タイムへと移りました。

1. 農家直売

岩崎:メディアやネットの活用に関していえば、資金が限られている中でいかに広報を活用するかが重要です。地元の新聞やテレビ局、あるいはインターネットメディアを活用する。例えば、地道に営業先の代表メールアドレス宛てに情報を送る、テレビ局に取材依頼の電話をしてみるなどです。メディアがきっかけで売り上げが上がるケースもあります。戦略的に仕掛けることもできると思うのでぜひ試してみてください。

佐川:プレスリリースの書き方などを調べて書いたり、地元紙の記者さんにイベント掲載を依頼してみるのもいいかもしれません。新聞に載ることで信頼度も増しますし、逆に反応がなかったときに何が足りなかったのか学ぶきっかけにもなります。

2. 農産物直売所

岩崎:直売所は、時に採算を重視しない方も参入するため低価格になりがちです。価格競争を避けるには、価格に関するルールがある直売所を選ぶのがおすすめです。また、直売所のなかで目立つためにPOPを作るなどの工夫も必要です。直売所でお客さんをつかみ、農家直売につなげるのもよいですね。

佐川:直売所側との関係性は大切です。レイアウトの工夫や、品物がないときに積極的に協力するなど直売所を味方につけるというのも大事です。

3. 契約販売

岩崎:契約書づくりのコツは、生産者にとってベターな条件で作ること。バイヤー主導ではなくみなさん自身が作るほうがいいと思います。

佐川:契約販売は上下関係が生まれやすいので、生産者は戦略が複数ある状態の方が強いです。例えばキロ10円というのはそのときは小さい差ですが、年間で言うと10万・100万と差が出ます。数円高いなと思われても乗り越えると自信を持って提案できるようになります。強い気持ちで営業することが大切です。

4. 市場出荷

佐川:新規就農でできるだけ早く安定したい場合、農協さんにお世話になりながら他の販路を拡大するのがよいでしょう。

岩崎:直販をしながら市場出荷というケースは多いと思うので、市場出荷の良さも生かし、相場を見ながら戦略的に利用するのがいいと思います。大事なのは日々のリサーチ力です。

佐川:出荷メインの場合は、市場で利幅が出やすい品目にするなど組み合わせのパターンがあるのは長所だと思います。農協に関していえば生産指導もあります。価格はコントロールできないかもしれませんが、品質向上や生産技術を共有できるバリューチェーンがあります。

5. その他について

岩崎:観光農園に限りませんが、6次化でカフェや小売店をする場合、ターゲットは重要です。年齢層や所得、家族構成に至るまで具体的に想定し「こういう人に来てほしい」と言語化するのが大切です。

佐川:それぞれの販路に対して正解があるわけではないですが、ここで集まってそれぞれの意見を出し合った情報は非常に価値があるものだと思います。そして、アクションを起こしていただければ扉が開かれるはずです。

左から、講義をリアルタイムに記録するグラフィックレコーディング担当のヨシさんと、岩崎さん、佐川さん

▼第6回は12月23日(月)13:30~17:30、テーマは「作るから売るへ!農家のマーケティングと経営改善」です。マーケティングとは何か、農業におけるマーケティングの特徴や経営への取り入れ方を学びます。特別講師の中島さんは、全国で2500を超える直売所・生産者が利用している「チョクバイ」を作り、農業マーケティングを牽引(けんいん)してきました。経営改善のコツをたっぷりと伝授していきますのでお楽しみに!
お申し込みはこちらから。

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