「管理機」ってな~に?
「管理機」とほぼ同じようなスタイルを持つ農機具に「耕運機」があります。どこが違うかというと、耕運機は“土地を耕すための機械”です。管理機は“トラクターや耕運機で耕した後の土を管理するための機械”。標準で装備されているロータリーだけでなく、畝立てや土寄せなどの作業機(アタッチメント)を連結できることが前提です。ただ、最近の耕運機は、ほとんどが管理機の機能を持つようになったため、定義としての区別ができなくなっているのが現状。メーカーによっては“ミニ耕運機”というカテゴリーがあったりしてややこしいですが、ざっくりと、小型のものが管理機、大型が耕運機という大ざっぱな分け方をされることが多いようです。
いちばん多いトラブルは?
管理機のトラブルで多いのは、やはりエンジン周り。なかでも「エンジンが始動しない」が多数派でしょう。次がロータリー部分。回転軸に関わる不具合が少なからずあります。
エンジンが始動しない
【原因①】ほとんどのケースが「キャブレター詰まり」
原因はいくつかありますが、70%以上の確率で見られるのが「キャブレターの詰まり」です。キャブレターは、コンピューター制御のインジェクション方式が主流になった自動車では聞かれなくなりましたが、農機具の世界ではまだまだ現役。霧状にしたガソリンと空気を混ぜてエンジン内部に送り込む燃料供給装置として、いまでも普通に使われています。キャブレターにはガソリンを噴射するジェットノズルなどがあり、エンジンのなかでもとても繊細な部分です。変質したガソリンや空気と一緒に取り込まれたゴミなどでよく詰まってしまいます。燃料の供給源がふさがれば、エンジンが動くことはないのです。
【対処】キャブレターを分解して掃除する
詰まったキャブレターは分解してクリーンアップするしかありません。まずは、エンジン本体からキャブレターを取り外し分解を開始。すべてのネジや弁などを外していきます。段階的に写真を撮っておくと組み立ての時にラクです。分解が完了したら掃除。市販のキャブレタークリーナーを使いますが、インターネットでも、場合によってはホームセンターでも購入できるはずです。いちばん念入りに洗浄しなければいけないのがジェットノズルの部分。デリケートなので、十分注意して作業してください。分解した時の逆の手順で組み立てて終了です。
【原因②】チョークの操作を行う時の「燃料かぶり」
冬場などエンジンが冷えている時、よく使うのがチョークです。チョークは空気の供給をストップさせることでピストン内のガソリンの割合を多くし、エンジンを掛かりやすくします。しかし、エンジンの始動後もチョークを閉じたままにしておくと、過剰にガソリンが供給されるので、点火プラグが濡れた状態になり、火花を出さなくなってしまうのです。これが「燃料かぶり」という現象。エンジンが掛かったら、すぐにチョークは開けましょう。
【対処】燃料かぶりはプラグを外して拭く
プラグが燃料をかぶってしまったら、しばらく置いていれば、燃料が気化し乾いてエンジンが掛かることもありますが、プラグを外して乾かすのがいちばん早い解消法。キャップを外して、プラグレンチでプラグを取り出し清潔な布で先端のスパーク部分の油分を拭けばいいだけです。ティッシュペーパーや繊維が付いてしまうような毛羽だった布の使用は避けましょう。
ロータリー軸のオイルが漏れる
【原因】軸のオイル漏れの原因は巻き込んだ草など
管理機はロータリーにつけられた数本の爪を回転させて土を耕します。当然ながら、爪を回す中心にあるのは軸です。回転軸にはベアリングがつけられていますが、より円滑に回すためにオイルも入っています。このオイルが漏れてしまうことが、ロータリーでよくあるトラブル。原因になるのが、軸に巻き込まれた草など。巻き込んだ草が積もり積もると、オイルが漏れるのを防いでいるオイルシールを圧迫し変形させてしまうのです。そこからオイルが漏れているのに気づかないで使っていると、最悪の場合には軸が壊れて動かなくなってしまいます。
【対処】オイルシールを交換して漏れを防ぐ
オイル漏れを解消する方法はオイルシールの交換です。オイルシールはインターネットで購入もできますし、交換はちょっとメカに強い方なら自分でできる作業。軸のカバーを外して、古いオイルシールをマイナスドライバーなどで取り去ります。シャフトにオイルを塗って滑りやすくして、新しいオイルシールを少しずつたたいて押し込めは終了です。軸受けのボルトを外して、そこの穴からオイルを補充するのもお忘れなく。ただ、この交換作業、古いオイルシールを取り除く時、シャフトを傷つけてしまったら取り返しのつかないことになってしまいます。自信のない方は、農機具屋さんに交換をお願いする方が安心です。
わずか3つのことでノントラブル
「エンジンが始動しない」「ロータリー軸のオイルが漏れる」。管理機の代表的なトラブルとその対処法をご紹介しましたが、そもそもこの2つをあらかじめ回避できれば、不具合もなく末永く使っていられる可能性が高いということになりませんか。その方法があるのです。わずか3つのことを行うだけで、管理機とずっとつき合い続けることができます。
1. 使った後はガソリンを完全に抜く
よく“ガソリンは腐る”と表現されますが、ガソリンは必ず劣化します。ガソリン自体の酸化や揮発、水や不純物の混入が原因です。ガソリンの品質を保持できる期間は、ガソリンスタンドのタンクなど気温の変化が少ない冷暗所に保管して6カ月。管理機は置かれる条件が給油所レベルではないと思われるので、もっと短いのではないでしょうか。腐ったガソリンはエンジンが始動しない最大の原因。キャブレターに詰まってしまうからです。予防法はただひとつ。1カ月以上使用しない時は、必ず残ったガソリンを完全に抜きましょう。燃料タンクからは給油ポンプで吸引し、残量分は燃料ストレーナーカップを外すことで抜くことが可能。キャブレター内のガソリンはブルドレンを引いてください。その際、流れ出てくるガソリンを受ける容器が必要です。これさえやっておけば、次に使う時に、エンジンが掛からないということはおそらくないでしょう。「ガソリンが空っぽになって、エンジンが止まるまで待つよ」という方もいらっしゃいますが、これは“ガソリンを抜かないよりかはマシ”のレベル。ガソリンはキャブレター内に少量ですが残ります。
2. 回転軸にからまったワラや草などは排除
回転軸にからみついたワラや草などはこまめに取り除きましょう。マルチの破片やビニールヒモといった人工物はもってのほか。排除しないと前述のようにオイルシールを圧迫し変形させて、オイルが漏れる原因になってしまいます。たかが草だと思ってもされど草、軸の回転力で圧迫し続けるわけなのでオイルシールは傷むのです。こんなささいなことで、トラブルは防げます。
3. 保管場所は屋根付きの倉庫やガレージに
最後は管理機のねぐらです。管理機を保管すべき場所は日が当たらない雨風をしのげる屋根付きの倉庫やガレージ。シャッター付きがベストです。「野ざらしでもシートをかければ大丈夫」と思わないでください。やはりアウトドアはアウトドア。さびはシートなどでは防げないのです。管理機をできるだけ長く使いたかったら、環境のいい保管場所を用意してあげてください。
まとめ
管理機の二大トラブルは、「エンジンが始動しない」と「ロータリー軸のオイルが漏れる」です。この原因となることを排除すれば、管理機を10年、20年、不具合なくず~っと使える可能性がとても高くなります。「使わない時は完全にガソリンを抜く」「ロータリーの回転軸にからまった草などはマメに取り去る」「屋根付きの場所に保管する」。たったこれだけで、管理機のトラブルは激減します。
エアクリーナー、プラグ、オイル回りと、他にも注意すべきことはありますが、このあたりは、年に1回ぐらいは農機具屋さんに格納整備(格納前に行う点検整備)をお願いするのが得策です。ご自身でできるトラブル予防策を実践し、愛用の管理機をいつまでも快適な農作業のお供にしてくださいね。