たくさん取れた葉物野菜を保存したい!
きっかけは、昨年の秋冬シーズンに育てた鍋物野菜でした。ミズナ、コマツナ、シュンギクを一つのプランターに混植した通称“鍋畑”を作って、我が家の鍋内自給率を上げてやろうという、いたずらな思いつきでした。
その試みはおおむね成功し、ちゃんと育った葉物野菜を使った鍋料理が何度も食卓に上がったのですが、一方で大いに反省する部分もありました。というのは、鍋畑の野菜たちが一気に育ってしまって、収穫が間に合わぬまま、トウ立ちさせてしまったものもかなりあったのです。
はたして一気に収穫期を迎えた葉物野菜を上手に保存する方法はないものか──。その手段を考えるうちに、灯台下暗し的に出会ったのが漬物です。そもそも昔の農家さんがたくさん収穫できた野菜をもたせるために考えた手段が漬物であり、それに適していた葉物野菜が漬け菜なのではないか、と。
もちろん令和時代の我が家には冷蔵庫という文明の利器があるので、“冷凍”という、ごく簡単な保存手段もあるのですが、これはいかにも簡単すぎてちっともときめかない。手間をかけて自分で野菜を育てて、手間をかけて保存したい。そのための漬物であり、漬け菜。なにはともあれ、ビバ漬け菜っちゅうわけなんです。
三大漬け菜があった
さて、何を栽培して漬けようか。
調べてみると、三大漬け菜というものがありました。「野沢菜」「高菜」「広島菜」の3つです。
野沢菜は長野県の野沢温泉村で作られてきた漬け菜で、「信州菜」とも呼ばれています。大きいものは1メートル近くにも育ち、根元にできる小さなカブも食用可能。漬け物としては浅漬け、古漬けのどちらも人気があるようです。
高菜は西日本で広く栽培されており、主に漬物として食されています。20〜60センチの丈に育ち、ピリッとした辛みがあるのが特徴。広島菜は幅の広い茎と色鮮やかで大きな葉が特徴的な広島の特産品です。
いずれもアブラナ科に属する葉菜類。一般的に漬け菜とは、アブラナ科の葉物野菜のうち、キャベツやハクサイなどのように結球しない野菜のことを広く指すのです。
ご当地漬け菜も魅力的
そのほか、全国を見渡すと、さまざまなご当地漬け菜が存在し、根強く支持されているよう。
例えば、奈良の「大和まな」に大阪の「大阪しろな」、福岡の「かつお菜」、山梨の「鳴沢菜」に、関東地方で広く栽培されている「べか菜」などがあります。
また近年、漬け菜かいわいで静かな人気を呼んでいるのが、埼玉県・秩父地方の「しゃくし菜」です。葉の形がご飯をよそう“しゃもじ(しゃくし)”に似ていることからこう呼ばれているといい、正式名称は「雪白体菜(せっぱくたいさい)」。味は淡白で歯切れがよく、おいしいとテレビで紹介されて評判になったとか。
調べるほどにさまざまな種類があって、あれもこれも魅力的。しかし、ベランダのスペースには限りがあるので、今年は三大漬け菜から野沢菜、そのほかのご当地漬け菜から、しゃくし菜(雪白体菜)の種を取り寄せて育てることにしました。
野沢菜、しゃくし菜の育て方
9月中旬過ぎ、種まきをしました。育て方は簡単で、コマツナなどの葉物野菜と同様です。プランターに筋まきして、発芽後2〜3回に分けて間引き。大株にしたい場合は最終的に15〜20センチくらい株間を空けるといいようです。
我が家の場合は、ベビーリーフの状態で一度間引きした後は例のごとく放置気味の栽培で、すっかり葉が混み合ってきた11月頭に2度目の間引き。さらに大きく育つのを待って、12月に入ってからやっと一部を収穫するに至りました。
漬物のレシピのようなもの
収穫したものは早速、漬けてみることにしました。といっても、漬物の経験が豊富にあるわけではなく、ほとんど見よう見まね。さまざまなレシピを読み漁った結果、①粗塩をもみ込んで重しを乗せる、②数日漬ける浅漬けから1カ月以上漬け込むものまで好みで仕上げればいい──という2点だけを頼りに、あとは試行錯誤です。
①塩をもみ込んで重しを乗せる
まず、塩をもみ込んで重しを乗せます。この時、重量に対して野沢菜は3%、しゃくし菜は8%の塩分を目安にしてみましたが、それほど厳密に考える必要はなかったかもしれません(後述)。好みで唐辛子を入れます。
漬物用の桶(おけ)などがないので、100円ショップで購入したプラスチックの食品保存容器を重ねて使用しました。一番下の容器にしゃくし菜、その上に野沢菜を詰めて、一番上の容器には辞書を2冊入れて重しがわりにします。置き場所は涼しい場所であれば良いようですが、我が家の場合は冷蔵庫に落ち着きました。
②数日から1カ月くらい漬け込む
数日で水が上がってくる予定だったのですが、ちっとも漬かっている感じがしません。その場合の対策として、呼び水を入れました。水が増えた分、塩も足したのですが、大ざっぱな性格ゆえに、この時点で早くも塩分量が狂いました。
ここから再び、漬かるのを待ちます。
漬物以外の活用方法
漬けている間に、生の葉を料理にも活用してみました。炒め物にしたり、みそ汁に入れたり、煮浸しにしたり……。どれもおいしくいただけましたが、特にしゃくし菜はコマツナと同じように使えるのではないかと感じました。
漬物の出来栄えは?
さて、呼び水を足した漬物はどうなったのか。さらに数日置いたものはこんな感じになりました。
うーむ。わりとナマな感じが漂っています。その割に葉が一部黄色く変色していて、状態が悪くなっている様子。全体がきちんと漬かっていない感じがします。
で、実は呼び水を入れるのと同じタイミングで、新たに少量を収穫して漬物用の容器に液体の「浅漬けのもと」を入れて漬けておきました。それぞれを刻んでみます。見た目はあまり変わらないようですが……。
いざ、実食!
食べてみるとその差は明らかでした。
浅漬けのもとの方が断然おいしい!(泣)
簡単に言うと、自分で漬けた方は見た目の通りちゃんと漬かっておらず、シャキシャキした半ナマ状態。味は悪くはありませんが、マイルドな塩味です。特に塩分量の少ない野沢菜の方は、この時点では塩味より生の葉の味が前面に出てしまっています。
一方の浅漬けのもとは専用容器できちんとプレスされたおかげもあって、しっかり漬かっていて味も濃い。じつはこのような容器を使わずともビニール袋に入れてもみ込むだけで良かったらしいのですが、よく味わうと塩味だけでないいろんな味も感じられます。
完敗です。浅漬けのもとって、なんて偉大!
こうなると、なんとかしてうまく漬けられるようになりたいと思ってしまうのがベランダ栽培家というもの。ただし、極めるまでにエラい時間がかかりそうです。漬物沼にズブズブと漬かっていく音がいたします。
◆次回、島ニンジン&島らっきょうを育ててみる。