需要あり・ライバル不在でも経営が厳しいワケ
佐藤さんはもともと実家の花屋で働いていた。その仕事を通して、国内で売られているサカキのほとんどが中国産であるということと、国産のサカキに潜在的な需要があることを知り、独立して彩の榊を設立した。
販売用のサカキは当初、近くの山に自生しているものを切り出して調達した。箱にぎゅうぎゅう詰めにして中国から輸入されてくるサカキと比べ、国産は葉っぱの緑が濃く、生き生きとしていた。しかも中国で切り出してから約40日かけて運んでくるのと違い、数日で届けることが可能。サカキを扱う花屋や神社などから品質の高さが評価され、売り先がどんどん増えていった。
サカキは山の中にたくさん生えているし、需要も十分にあった。自生しているサカキを伐採して販売している法人はそれほど多くなく、本格的なライバルは見当たらない。それでも佐藤さんによると、「経営的に楽なことは一つもない。ずっといつつぶれてもおかしくない状態でした」という。
原因はコストの高さだ。山の中に生えているサカキを切り出し、背負って運び出してくるのはかなり大変な作業。一方で、国内で流通している中国産は値段が安く、いくら国産の品質が高くても値段を上げるには限度がある。その結果、売値が原価とあまり変わらないという収益性の低さに悩まされてきた。
かつて日本のサカキの伐採業は、杉やヒノキの森林の整備の一環として成り立っていた。だが林業の衰退に伴い、サカキの伐採も姿を消していった。それだけで利益を出すのが難しいからだ。佐藤さんもこの難題に直面した。
現在、神棚などに供えるサカキの注文は1カ月に20万束に達している。これに対し、実際に応えることができているのは1万5000束。いくら販売を増やしても、利益の確保には結びつきにくかった。