畑の雑草図鑑〜カラスノエンドウ編〜【畑は小さな大自然vol.68】

マイナビ農業TOP > 生産技術 > 畑の雑草図鑑〜カラスノエンドウ編〜【畑は小さな大自然vol.68】

畑の雑草図鑑〜カラスノエンドウ編〜【畑は小さな大自然vol.68】

連載企画:畑は小さな大自然

畑の雑草図鑑〜カラスノエンドウ編〜【畑は小さな大自然vol.68】
最終更新日:2020年04月24日

こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。春先に畑や道端でよく見る雑草の一つにカラスノエンドウという雑草があります。このカラスノエンドウ、畑に生えていたら、根ごと抜いて捨てていませんか? それはもったいないです! このカラスノエンドウの自然界における役割について知っていると、畑づくりに役立つ雑草として、見る目が変わります。ぜひ今回の記事を参考にしていただき、カラスノエンドウを活用して畑づくりに生かしてみてください。

カラスノエンドウとはどんな雑草?

カラスノエンドウはマメ科ソラマメ属の一年生雑草で、成長すると60〜90センチほどの大きさまでになることがあります。標準和名はヤハズエンドウで、学術的にはこちらで統一されているようです。日本では本州以南でよく見られ、畑や道端、空き地などでもよく見られます。基本的には秋に芽が出て、小さい状態で越冬したのち、春に大きく成長して赤紫色の奇麗な花を咲かせます。エンドウという名前がついているように、小さいキヌサヤのようなサヤがつき、熟すと真っ黒になります。畑でもよく見かけ、背丈が大きくなる雑草ではありますが、比較的柔らかい雑草で根の張りも弱いので、そこまで除草に困る雑草ではありません。

小さいキヌサヤのようなサヤができる

元々は地中海沿岸地方が原産で、食用として栽培されていた歴史もあるようです。サヤの部分はキヌサヤのように若くて柔らかいときは食べることができますが、すぐに硬くなってしまうので注意が必要です。

カラスノエンドウの役割とは?

僕はどんな雑草にも何かしらの「役割」があるのではないかと考えています。地球上のほとんどの土地では、時間が経つとたくさんの植物や木々が生え、虫や動物の種類も増えて森になっていくように、自然界の雑草や虫たちはそれぞれ全く自由に行動しているように見えて、全体で見ると「生態系を豊かにする」という共通の目的に向かっているように思えます。畑の雑草たちもいろんな種類がありますが、それぞれ特徴や性質が異なっていて、それぞれがその土地の生態系を豊かにするための違った役割を持っているように思えるのです。これらの役割を知っていると、その雑草との付き合い方も自ずと見えてきます。

僕がカラスノエンドウの役割として重要だなと考えているのは主に以下の3つです。

  1. 土地に窒素を供給する役割
  2. 虫の生態系を豊かにする役割
  3. 土を守る役割

それぞれ詳しく解説していきます。

土地に窒素を供給する役割

根についている白い塊のようなものが根粒菌。この写真はカラスノエンドウではなく枝豆

カラスノエンドウをはじめとするマメ科植物の根には、「根粒菌」という特殊な微生物が共生しています。普通の植物は土の中にある窒素しか利用できませんが、マメ科植物の場合は根粒菌が空気中の窒素も取り込んで供給してくれるのです。代わりに根粒菌はマメ科植物から炭水化物をもらうことで、相利共生の関係ができています。
 
窒素は僕ら人間も含めて、全生物にとってとても重要な栄養素ですが、空気中の窒素はとても安定している状態のため、ほとんどの生物は、これを直接利用できません。そのためほとんどの生き物は他の生き物を食べたり、生き物の死骸に含まれる窒素を再利用することで、窒素を得ています。このことを考えると、根粒菌などの空気中から窒素を土に取り込んでくれる微生物の働きは、地球全体の窒素循環の観点から考えてもとても重要な働きをしていることが分かります。

マメ科植物の多くは、痩せている土地でも比較的育ちやすいですが、この根粒菌の働きによって、空気中からも窒素を補っているのが大きいのだと思います。このマメ科植物は自身が枯れて、土に還ることにより、土の中の窒素を増やしてくれます。よく田んぼにマメ科のレンゲソウが生えているのは、この働きを利用して土を肥やすために農家が種をまいているからです。同じようにカラスノエンドウも自身が枯れて土に還った時に、より窒素の多い肥えた土地にすることで、次世代の植物たちがより生きやすい環境を残す役割を持っているのではないかなと思います。

虫の生態系を豊かにする役割

新芽部分に群がるアブラムシを食べに、テントウムシの幼虫が来ている

春先のカラスノエンドウにはたくさんのアブラムシがつくことがよくあります。特に新芽に近い部分はアミノ酸も多いためか、びっしりとつきます。さらにこれを食べるために、テントウムシやテントウムシの幼虫などの益虫と呼ばれる虫もだんだん増えていきます。

また、これはカラスノエンドウに限ったことではありませんが、花を咲かせる雑草というのは、それだけで大きな役割を担っています。植物が花を咲かせるのは虫を呼ぶためです。ハチやハナアブなど、花の蜜にひかれて虫たちがやって来ます。畑の虫というと、野菜に害を及ぼすものをイメージしやすいですが、花の蜜や花粉を食べに来るような虫はヒラタアブやヒメハナカメムシなどの益虫や、ミツバチなどの野菜に直接影響を及ぼさないただの虫がほとんどです。
 
このようにカラスノエンドウがその土地に生えていることで、虫との関係性がより多様になっていき、生態系が豊かになることに一役買っていることが分かります。

土を守る役割

これはほぼ全ての雑草に言えることですが、カラスノエンドウがその土地に生えていることで、土が守られるという働きがあります。土は、裸になっているだけで風雨によってどんどん風化していき、痩せていきます。特にカラスノエンドウが生える秋から春にかけての期間は寒さも厳しく、カラスノエンドウが地表を覆っていることで、土が凍ったり地温が下がったり乾燥したりするのを防いでいると考えられます。カラスノエンドウなどの冬草が地表を守ってくれることで、土の中の微生物や他の植物たちにとっても生きやすい環境を維持しています。

カラスノエンドウを畑づくりに生かすメリット

僕は雑草を畑づくりに生かすという考え方を提案しています。雑草というと野菜の生育を邪魔するというイメージが強いかと思います。確かに雑草は野菜よりも成長が早く、繁殖力も強いことが多いですし、雑草も土から栄養を取って生きているため、競合してしまうこともあるでしょう。しかし、それぞれの雑草が持つ役割と、自然界の「生態系を豊かにする」という目的を理解していると、それらを畑づくりに役立てることもできるようになります。農家が行うには難しい面も多々ありますが、家庭菜園でしたら雑草を生かすことで得られるメリットが多いと感じています。今回のカラスノエンドウの場合は、それを畑づくりに生かすことによって、以下の3つのメリットが期待できると考えています。

  1. 野菜の栄養となる窒素が増える
  2. 野菜害虫の天敵が増える
  3. 保湿保温効果により野菜が生育しやすい土壌になる

まず根粒菌の働きによって、土に窒素が増えていくことが期待できます。ただ生えているだけでは駄目で、そのカラスノエンドウが土に還っていくことで初めて窒素が土に供給されていく点には注意が必要です。またカラスノエンドウが適度に畑に生えていることにより、アブラムシなどの害虫ももちろん発生しますが、その天敵となる虫も増えます。屋外の畑で完全にアブラムシなどを防ぐのは難しいので、家庭菜園であれば天敵を増やすことで根本的な対策を行った方が、長い目で見ると経済的・効率的だと思います。またカラスノエンドウが冬場の寒い時期に地表を覆ってくれることを生かせば、土の保温・保湿効果を期待でき、野菜が生育しやすい土壌環境を整えるのに役立ってくれます。

カラスノエンドウへの応じ方のポイント

カラスノエンドウを畑づくりに生かすことで期待できるメリットをご紹介しました。次はより具体的にカラスノエンドウが畑に生えていた時の対処の仕方や、利用の仕方について説明します。ポイントは以下の3つです。

ポイント1:野菜の生育に邪魔にならない場合は残す
ポイント2:根から抜かずに根元を切って敷く
ポイント3:冬場は極力刈らないで残す

ポイント1:野菜の生育に邪魔にならない場合は残す

カラスノエンドウを生かすとはいえ、野菜の近くに生えている場合は、やはり刈らないと野菜の生育の邪魔になります。特に野菜がまだ小さい時期は、競争力も弱く、生きている植物の根が周囲にあると根を十分に張ることができません。基本的に葉が広がっている範囲と同じくらい、根も周囲に広がっているので、野菜の葉が広がっている少し先の範囲までは草を刈り、生きている雑草がない状態にしておきます。逆に野菜がもう成長しきっている場合で、カラスノエンドウが生えていることで野菜が日陰になったりしなければ、近くに生えていても問題にならないこともあります。とにかく野菜の生育に邪魔になりそうな場所に生えているカラスノエンドウは刈り、野菜から離れていたり、通路に生えているようなカラスノエンドウは適度に残しておくことをオススメします。

ポイント2:根から抜かずに根元を切って敷く

根元から上の部分を刈り取れば、復活することはない

カラスノエンドウに共生し、窒素を空気中から集めてくれる根粒菌は、根に住み着いています。この窒素を集めてくれるカラスノエンドウの役割を十分に生かすためにも、根はそのまま地中に残しておきましょう。根はそのまま地中の微生物の餌となり、分解されて野菜の養分になります。根だけ残していても復活する心配はありません。またカラスノエンドウが取り込んだ窒素は、そのカラスノエンドウが土に還らないと、土に還元されません。刈った上の茎葉の部分は草マルチとして畝の上に敷くか、雑草堆肥(たいひ)にしてから畑に還すと良いです。根を残して刈ることのメリットや、より具体的な方法については以下の記事をご覧ください。

関連記事
雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】
雑草は根から抜いちゃダメ!? 草刈りの新常識【畑は小さな大自然vol.4】
こんにちは、暮らしの自然菜園コンサルタントのそーやんです。今回のテーマは「雑草は根から抜いちゃダメ!?」です。これから夏本番。草刈りが大変な時期になってきます。普段、皆さんは雑草を根から抜いていませんか? 実は雑草の根…

ポイント3:冬場は極力刈らないで残す

冬場のカラスノエンドウは刈らなくても、野菜の生育の問題にはならない

冬場は土が乾燥しやすく、地温が低下しやすい時期です。地温が低下したり、土が凍ったりすると土へのダメージも大きいので、できるだけ冬場のカラスノエンドウは刈らずに残しておきましょう。冬場は生育も遅く、大きくなることはないので、ほとんど邪魔になりません。

雑草を生かして、豊かな畑づくりを

自然界には「生態系を豊かにする」という目的があり、私たちには「野菜を収穫する」という別々の目的があります。「生態系を豊かにする」という自然の目的を無視して、「野菜を収穫する」という私たちの目的だけを達成しようとすると、自然はそれに反発して、害虫や病気の大量発生につながってしまうことがあります。逆に自然界の目的も尊重し、雑草を適度に残したり、多様な種類の野菜を植えたり、微生物が豊富な土づくりをするなど、できるだけ生態系が豊かになるように畑づくりをしていくと、害になる虫や病原菌もいる一方で、益虫や病原菌に対する拮抗菌なども増えていくため、特定の害虫や病気だけが大量に発生するといったことが減っていきます。また肥料や農薬の使用量も少なくて済むようになっていきます。こういった方法は農家が行うには難しい面がありますが、少量多品目を栽培する家庭菜園では、取り組みやすいかと思います。ぜひ今回ご紹介したカラスノエンドウも、うまく活用して、生態系豊かな畑づくりに生かしてみてください。

関連記事
畑の雑草図鑑〜シロツメクサ編〜【畑は小さな大自然vol.49】
畑の雑草図鑑〜シロツメクサ編〜【畑は小さな大自然vol.49】
こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。子供の時から親しみのある雑草の一つがシロツメクサではないでしょうか。クローバーと呼んだ方がなじみがあるかもしれません。このシロツメクサは畑の周囲などによく生える普通の雑草ですが、実…

関連記事
そーやんの「畑は小さな大自然」シリーズ
そーやんの「畑は小さな大自然」シリーズ
暮らしの畑屋そーやんが、自然の生態系の仕組みを利用しながら楽に野菜づくりができる方法などを伝授します。害虫や雑草などのお悩みも、このシリーズを読んでスッキリ!

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧