トウモロコシの栽培自体はとても簡単で単純です。生育も強く、枯らして失敗した、という話はあまり聞いたことがありません。果実もよく実りますし、肥料が足りていなかったりタイミングが悪くて実の肥大が鈍かったり小さな失敗は確かにありますが、多くの場合、家庭菜園でのトウモロコシ栽培で問題になるのは害虫「アワノメイガ」でしょう。
ここでは、アワノメイガ対策に比重を置いて栽培解説したいと思います。
以下がトウモロコシの栽培暦です。
トウモロコシの種まき
トウモロコシの種は、畑に直接まくのが一般的です。一番簡単ですし、種の袋に記載されている時期に直接畑にまけば、あとは肥料と農薬を投入し続けることで収穫が可能です。
しかし、アワノメイガの成虫は5月下旬~6月にかけて飛来し、食害は7月頃にピークを迎えるため、無農薬では収穫直前に全滅することが多いでしょう。
作期を前倒しにできる育苗~トンネル被覆栽培は、メイガが大暴れする前に収穫でき、害虫対策としても非常に効果的です。
10℃以下の気温ではトウモロコシは枯れてしまいます。まだ寒い時期に育苗をする場合はトンネル被覆をして暖かくしてあげましょう。セルトレイに培養土を詰め、一穴一粒ずつ種をまき、毎日水やりをしましょう。
ビニールは朝開いて、夕方に閉じます。他の夏野菜と一緒に管理しましょう。
トウモロコシの土づくり
トウモロコシはよく肥えた畑の方がよく育ちます。1平方メートルあたり10リットルの堆肥を投入してよく耕しておきます。初めて作付けする畑でもない限りは、石灰の投入は必要ありません。
1週間前には元肥に化成肥料一握り(50グラム程度)を土とよく混和して、畝を立てておきます。高さは15センチ、畝幅は90センチもあれば十分でしょう。
マルチビニールを張っておけば、初期の生育が良くなり、雑草も生えません。
トウモロコシの植え付け
育苗した苗が本葉3枚くらい揃ったころ、畑に植え付けます。直接種まきをする場合は、一カ所に2~3粒ずつまき、本葉が揃った頃に一カ所1本に間引きます。
株と株の間は30センチ程度、畝に2列植えましょう。
トウモロコシの追肥
トウモロコシの追肥のタイミングは草丈が50センチ程度に達したころ、雌穂(しずい※)が発生する直前になります。本葉の数が5枚を目安に与えましょう。1平方メートルあたり一握りを条間にぱらぱらとまきます。
2回目の追肥は、草丈が自分の背を超えて雄穂(ゆうずい)が見え始めたころ。トウモロコシは非常に肥料をよく吸う植物です。地中に残った肥料を吸いつくすことを目的に植えられることもあるくらい吸肥力の高い作物なので、肥料が足りないと、実が太らなかったり、草丈が低いまま雄穂がついたりします。
また、この2回の追肥のタイミングは、同時にアワノメイガの最も効率的な防除のタイミングでもあります。液体を散布するタイプのトレボン乳剤、または粉を上からふりかけるタイプのデナポン粒剤などを散布しましょう。無農薬で栽培するのであれば、この時期から常に全体を見回して、見つけ次第捕殺します。
※ 実から出ていて「ヒゲ」と呼ばれているものが雌穂で、茎の先端に咲く花の部分が雄穂。
(※後述する「ヤングコーン」の状態で収穫する場合は、農薬の登録はありません。)
トウモロコシのわき芽と摘果
トウモロコシのわき芽が地際から発生します。これを丁寧に除去することもできますが、そのまま放置しておいて構いません。わき芽を残すことで風に強くなると言われますが、正直台風が来たら倒れます。わき芽を切除する労力に対して効果が微小であることから、放置する人が多くなりました。
また、一株に最も大きい果実一個を残し、他はすべて摘果することで一つが大きな果実になりますが、二つつけても十分楽しめるサイズには成長します。摘果した小さなトウモロコシは、市販されているヤングコーンとしても楽しめます。
トウモロコシの授粉
トウモロコシは、雌穂のヒゲ一本一本がそれぞれ一粒一粒につながっており、しっかりと受粉されないと歯抜けのようなみすぼらしい果実になってしまいます。
植えてある数が多ければ何もせずに受粉されますが、数が少ない場合は、先端雄穂をトントンと叩いて回ったり、雄穂を切り取って雌穂のヒゲにパタパタと花粉をつけてあげましょう。
また、アワノメイガは、先端の雄穂につられてやってきますので(雄穂がついてから突然大量発生するのはそのため)、さっさと人工授粉して、すべての雄穂を撤去してしまえれば最も安全です。
アワノメイガ対策のために、5本に1本だけの雄穂を授粉用に残して、他はすべて切除しておくのもよいでしょう。
トウモロコシの収穫
開花からおおよそ25日くらいで収穫時期になります。ヒゲが完全に茶色になる直前、根本に少し青い色が残っているくらいが適期です。手で下方向にパキンと折り曲げると根本が切れて取り外せます。
アワノメイガ対策まとめ
アワノメイガを防除するには、雌穂の発生時期、雄穂の発生時期が最も効果的です。ただし、この2回だけの薬剤散布では完全に抑えることは難しいので、薬剤散布回数を増やすか、雄穂を撤去する方法を併用しましょう。
食害がおきてからの対応では遅すぎます。見たところ被害がないようでも、その時期になったら必ず予防をしておきましょう。
また、農薬を使わずとも、物理的に入れなくするために全体に防虫ネットをかける方法や、果実そのものにネットをかける方法でも、手間はかかりますが完全に防除することができます。カラスなど鳥獣害も防げるので、物理的防除はおすすめです。
以上がトウモロコシ栽培になります。畑でとれたてのトウモロコシ、食べたら絶対に感動すると保証します。