アイスプラントってどんな野菜?由来や特徴など
アイスプラントはキュウリやキャベツなどの多くの野菜と異なり、多肉植物に分類されます。多肉植物とは主に乾燥地帯で見られる葉が肉厚な植物で、アロエやサボテンがよく知られています。アイスプラントもアフリカ原産の野菜なので、乾燥を好み雨は苦手です。
さらに珍しいのが、他の植物に比べて土の中の塩分などの物質を吸収しやすいという性質です。吸い上げられた物質はキラキラ光る水泡の中に蓄えられます。この水泡が凍っているように見えるため、アイスプラントと呼ばれているのです。また塩味がするのもこのためで、日本でアイスプラントが普及したのは、塩類が集積した土壌の修復作用に佐賀大学が注目したことが大きなきっかけでした。

光る水滴のようなものが塩分を蓄えるブラッダー細胞
味はまずい?おいしい?ほのかな塩味が特徴的
まだ日本では見かけることの少ないアイスプラント。食べたことがないという人にとって気になるのは味ですよね。
アイスプラントはプチプチコリコリとした食感が楽しく、ほのかな塩味と後に残らない癖の無さが特徴で、よく冷やして食べるととても美味しい野菜です。また、茹でたり揚げたりと色々な調理方法でも美味しくいただける楽しい野菜です。
栄養豊富で肝機能に効果的?
アイスプラントは栄養豊富な野菜で、カリウムやマグネシウム、βカロテンなど多様な栄養素が含まれています。中でも他の野菜にはあまり見られない、肝機能に効果的な栄養素であるミオイノシトールという栄養成分が含まれているのが特徴です。
ミオイノシトールはビタミンBに近い物質で、体内の脂質や糖代謝を調整したり、肝機能を高め、肝臓の病気を防いでくれる効果が期待されています。また、卵子や胚にとっても良い影響をもたらすという報告もあり、体にとても良い野菜の1つでしょう。
アイスプラントの基本的な食べ方やアレンジレシピ
ここではアイスプラントの基本的な食べ方や、ちょっとしたアレンジレシピを紹介します。洗って生のままサラダとして食べるのがメジャーなレシピですが、火を入れても美味しく食べることが出来ますよ。
洗って生で食べる
アイスプラントで最もオススメの食べ方がサラダで食べる方法。
さっと洗って一口大に切って、そのまま食べると素材のプチプチ感と、ほのかな塩味をもっとも活かすことができます。お好みで生ハムやクリームチーズなどと和え、ドレッシングをかけると更に美味しくいただけます。
アイスプラントには塩味がついているとはいえ、何もかけずに食べるとかなり薄味です。他の葉物野菜と同じように、好きなドレッシングで美味しくサラダにしましょう。
さっと茹でておひたしやスープに
アイスプラントを加熱すると、外はプチプチ中はトロッとした食感になり、生で食べるのとはまた違った楽しみ方が出来ます。おすすめのレシピはさっと茹でておひたしにして、ゴマや鰹節と和え和風にして食べる食べ方。スープや味噌汁の具にしても新鮮な感じがして楽しめます。
火を入れ過ぎるとプチプチ感がなくなってしまい、デロっと柔らかい食感になってしまうので注意してください!
マヨネーズで揚げる天ぷら
意外なアレンジレシピがアイスプラントの天ぷら。しかも衣に卵の代わりとしてマヨネーズを使うことで、サクッと美味しく食べられます。
作り方はいたってシンプル。普通の天ぷらを作る時と変わりません。
天ぷら粉に水とマヨネーズを混ぜ衣を作り、アイスプラントにつけて揚げるだけ。アイスプラントは本来生食できる野菜なので、揚げ時間も短めに。180℃くらいの油で30秒ほど揚げれば十分です。天ぷらの他に、パン粉を使ってフライにしても美味しくいただけます。
意外と育てやすい!アイスプラントの栽培方法
市場に流通しているアイスプラントの殆どは水耕栽培で作られたものですが、もちろん畑やプランターでの栽培も可能です。ただ、アイスプラントは収穫前に塩水を吸わせることで、野菜に塩味をつけていくという栽培の仕方をします。そのため、与える塩の量が多すぎて吸収しきれないと土に塩が残ってしまい、塩害のような状態になってしまう恐れも。畑で栽培すると大きな株にできるというメリットもありますが、プランター栽培のほうが塩害を気にしなくて良いので、気軽に取り組めますよ。
栽培環境を整える
上記の栽培暦を見てわかるように、アイスプラントの播種は3月頃の春蒔きと9月頃の秋蒔きの年2回です。発芽適温が15~20℃前後なので、春蒔きするときはマルチングなどして保温をしてあげると発芽が良くなるでしょう。秋蒔きは夏の厳しい暑さが落ち着いてから行います。
発芽適温と比べ、生育適温は5~25℃ほどと幅が広いので、長期間に渡って収穫できます。ただ暑さには弱く、30℃を超えると葉がしなびたように溶けて枯れてしまうので、夏場の収穫はできません。一方寒さには強いので秋蒔きは12月くらいまでは収穫が楽しめますし、室内栽培であれば越冬も可能です。
土の準備
プランターで育てる場合は、「野菜の土」や「ハーブの土」と書いてあるものを使うか、自分で赤玉土や腐葉土を混ぜて使います。アイスプラントは横に横にと大きく成長するので、大きめのプランターを使った方がいいでしょう。畑が過去に汚染されたことがある、または天然の重金属が多いような土地であるなどという場合は、アイスプラントが吸い上げてしまう可能性がないとはいえません。大量に何年も食べ続けることはないと思いますが、もし気になる場合はプランターや水耕での栽培に挑戦してみましょう。
地植えで育てる場合、植え付け2週間前までに1平方メートルあたり苦土石灰100グラムを施し、1週間前に完熟堆肥2キロ、化成肥料を100グラム程度施用します。肥料と土をよく混ぜ、畝を立てましょう。
播種(はしゅ)
アイスプラントは一般家庭で食べる場合は2、3株植えておけばおそらく十分な量が収穫できます。足りないと思えば、後々挿し芽で増やすこともできます。種の発芽率はあまりよくないうえに、芽が出てから植え付けできる大きさになるまでの成長がかなり遅いので、育苗には手間がかかります。大量に栽培するのでなければ苗を購入することを強くおすすめします。ただ、苗が手に入らない場合は仕方ないので種から頑張りましょう。
まず、ポットかセルトレイを用意して、土を入れます。アイスプラントの種をセルトレイであれば2~3粒ずつ、ポットなら5〜6粒まきます。種が非常に小さいので一度にたくさん落ちないように十分気をつけましょう。上から土をかぶせ霧吹きで水をかけます。もしじょうろでやる場合は水が土の上からあふれ出さないようにごく軽くやりましょう。
セルトレイに播種した場合は、発芽して本葉が3枚出た頃にポットに移植します。この頃のアイスプラントの茎は糸のように細く折れやすいので、できるだけ触れずに土を持って植え替えるようにしましょう。箸でつまんだり、フォークですくうとやりやすいです。
ポットにまいた場合は、本葉2枚で3本に、本葉3〜4枚のときに1本立ちとしましょう。
定植(プランター推奨)本葉が5〜6枚になったら定植します。プランターの場合は、25〜30センチ間隔で1列に植えます。このときは葉がとてもやわらかいので、傷つかないように十分に注意して植えましょう。植えるときは株間が広すぎるように感じるかもしれませんが、ここからはこれまでとは違いぐんとスピードアップして生育するので大丈夫です。下葉はプランターからはみ出るんじゃないかと思うくらい大きくなりますし、ぐんぐん茎も伸びてきますよ。
畑に植える場合は、マルチング必須です。アイスプラントは土をはうように成長するので、雨の時の泥はねを防ぐことができますし、病気にもかかりにくくなります。もちろん草取りの手間も省けます。マルチと土に穴をあけて、プランターの場合と同じように丁寧に植え付けます。
また、日差しが強い時期に栽培する場合、黒マルチに触れた葉が焼けてしまうことがあります。株元に敷きワラを敷いてあげるだけでかなり株の負担が軽減できるので、余裕があればマルチングにワラも合わせて使いましょう。
追肥、塩水の補給
定植してから2週間くらいたったときに、化成肥料を施します。もしくは液肥をあげてもいいです。アイスプラントは肥料の程度が葉の色ではよくわからないので、生育が遅いと感じたらあげてみましょう。
さらに、植え付けてから20日ほどたち、そろそろ収穫という頃になったら塩水をあげます。1週間に2度、1〜2%程度の塩水を作り根元にかけます。塩水をやらないと塩味は薄くなりますがプチプチ感は残ります。それでもよければ水だけで育ててもいいでしょう。
収穫
収穫は摘心の要領で行います。一番てっぺんの葉を4枚くらいまとめてはさみで切ります。最初の収穫はてっぺんの一つだけにしておくと、しばらくしてその下のわき芽が伸びてくるので、いい大きさになったら今度はいくつか収穫します。そしてまたしばらくするとわき芽が伸びてくるので、どんどんわき芽が増えて次々に収穫できるようになります。長く収穫するためには肥料も必要なので、追肥を必ず施しましょう。
夏に向かっていくと、アイスプラントの葉先が赤くなって、花を咲かせます。花が咲くと葉の成長は遅くなり、次第に枯れて種ができます。種を取らない場合は花はすぐに摘んでやると、少しは長く収穫できますが、そのうち追いつかなくなったら栽培を終了しましょう。
栽培中は病害虫に注意
ネキリムシやヨトウムシ、アブラムシなどが葉を食べます。大きな害虫は手で駆除するか、ひどい場合は農薬をかけるなどして対処してください。化学農薬はアイスプラントで登録があるものがないので、有機栽培に使えるBT剤などの農薬がいいでしょう。夏の暑い時期には葉が溶けるように腐ることがあります。暑いのは苦手な野菜なので、無理せず病気がひどくならないうちに収穫し尽くして栽培は終了しましょう。
アイスプラントはペットボトルで水耕栽培できる
水耕栽培ならば病害虫や塩害を心配せずに、アイスプラントを栽培することができます。
種から育てようとすると、スポンジに植え付けて育苗しなくてはならず、この作業は難易度が高いので、水耕栽培初心者は苗から育てると良いでしょう。苗から育てる場合はペットボトルを使うと簡単に水耕栽培できますよ。
ペットボトルを使った水耕栽培
ペットボトルを使えば、費用を抑えて気軽に水耕栽培にチャレンジすることができます。
必要な素材は以下の通りです。
・1.5~2リットルのペットボトル
・ハイドロボール
・アルミホイル
・アイスプラントの苗
・水耕栽培用液体肥料
ペットボトルなどの素材を用意したら、いよいよお手製水耕栽培キットの作成です。次の手順に従って作ってみましょう。
①ペットボトルを奇麗に洗い、上から3分の1あたりでカットする
②飲み口の部分を逆さまにし、底側になる本体のペットボトルに被せる
③全体にアルミホイルをまく
④飲み口の部分にアイスプラントの苗を挿し込み、ハイドロボールで固定する
⑤規定の割合で薄めた液体肥料を、苗の根が浸かる高さまで注ぐ
見てわかるように意外と簡単に作れてしまうので、ぜひペットボトル栽培に挑戦してみてください。ちなみにアルミホイルをまくのは日光を遮断することで藻が繁殖しないようにするためなので、黒い布などでも代用できます。
専用キットを使った水耕栽培
本格的に水耕栽培をしたいという人は、専用の水耕栽培キットを使うのも良いでしょう。
水耕栽培キットには、数株栽培できる初心者向けの簡単なものから、1度に数十~数百栽培できる業務用のものまで、幅広い種類があります。自宅でしっかり水耕栽培を楽しみたいという人であれば、LEDライトつきで、培養液循環システムのついた水耕栽培キットがオススメです。LEDライトのお陰で室内でも栽培できる上、ポンプによって培養液が入れ替わることで、藻類の発生を抑えてくれます。
キットを使った栽培方法については、使う栽培キットによって異なるため、それぞれの使い方を守って栽培しましょう。基本的に、根から水と肥料を吸収させるというところは変わらないので、培養液がしっかり根に届くように注意しましょう。
水耕栽培のポイントと注意点
アイスプラントは手軽に水耕栽培できる作物ですが、以下の点に注意して栽培に取り組みましょう
・温度管理に注意
・半日陰が最適
・2~3日に1回を目安に水を換える
・葉が弱っていたら液肥を使う
それぞれ詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
温度管理に注意
室内で栽培する水耕栽培では、温度管理に注意しましょう。アイスプラントは発芽適温15~20℃、生育適温5~25℃となっています。特に15℃を下回ると発芽が悪くなります。また室温が高くても生育が悪くなってしまいます。春蒔きの時期であれば、そこまで問題ではありませんが、冬蒔きの時期だと朝冷え込んだり、逆に日中は暖房などで室温が上がり適温を超えているということもあるので、注意が必要です。
半日陰が最適
アイスプラントは陽の光が大好きな作物ですが、水耕栽培の場合は直射日光は控えたほうが良いでしょう。
夏場などの強すぎる日光は培養液の温度を上げてしまったり、葉を焼いてしまうこともあるので、半日陰がベスト。レースのカーテンを引いた窓際など、日光を確保しつつ直接当たらない、という場所に培養器を置きましょう。
2〜3日に1回を目安に水を換える
健康で美味しいアイスプラントを作るには、培養液である水を常に清潔に保つ必要があります。最も良いのは毎日水を交換して、奇麗な状態で栽培することですが、その分手間がかかります。できれば毎日換えたいところですが、難しい場合は2~3日に1回でも構いません。水を交換する時に、容器に藻や汚れがついているときは一緒に奇麗にしてあげましょう。
葉が弱っていたら液肥を使う
アイスプラントの葉は、健康であれば水泡がしっかり出ていて、茎も硬く、葉も青々と元気よく伸びていきます。もし、肥料不足で弱っていると、葉が柔らかくへにゃっとしたような見た目になるので、そういったときは液肥を使ってあげましょう。液肥を使うときは、必ず希釈倍率を守り、多すぎず少なすぎずをキープしましょう。水換えの際に液肥を適量入れることも忘れずに。
アイスプラントは手のかからない健康野菜
アイスプラントはふだんあまり見かけない珍しい野菜ですが、家庭でも簡単に育てることができます。本記事ではプランターや水耕栽培をメインに紹介しましたが、土地が許すのであれば地植え栽培もオススメです。大地の栄養をたっぷり吸い込んだアイスプラントは、信じられないくらい大きく育ち、毎日たくさんの葉を収穫できるようになりますよ。
他の野菜と比べても、ミオイノシトールなど肝機能に優しい珍しい栄養素が含まれているので、毎日お酒を飲むという方にもピッタリな野菜です。サラダに入れてプチプチコリコリとした食感を楽しんでもよし、お浸しや天ぷらにして少しトロッとさせても美味しい、面白い野菜なので、ぜひ家庭で作って楽しんでみてください。