売り上げアップにつながる秘訣、まずはやらないことを決める!

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売り上げアップにつながる秘訣、まずはやらないことを決める!

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

売り上げアップにつながる秘訣、まずはやらないことを決める!
最終更新日:2020年05月29日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

学生の頃から絶対にやりたくない仕事は「農業」だった私ですが、33歳の時、半ば人生をあきらめるように農業の世界へ入って最初にしたことは「やらないことを決める」ことでした。それが結果的に、私の農業人生を良いほうに向かわせてくれている気がします。

最初にやらないことを決めたワケ

私は農家の息子に生まれました。中学生になると友達から「百姓!百姓!」と呼ばれはじめ、それは高校生になっても同じで、実家が農家であることを恥じるようになっていました。もちろん、絶対になりたくない職業は「農業」でした。
卒業後は建設会社の社長秘書を経て、自動車販売会社で営業をしていましたが、営業が嫌で先の見通しもないまま会社を辞めました。職安に通いながらやりたいことを探しましたが見つけることができず、職探しをあきらめて、当時農作物を市場へ出荷していた両親に相談し農業の世界へ入りました。33歳の時です。
農業のこと、野菜のこと、一切の興味もなくネガティブな気持ちでスタートした私の農業人生ですが、最初にしたことは「やらないことを決める」ことでした。

農業を初めて最初の頃、職業を聞かれるのが嫌だった

絶対にやりたくない仕事が農業、過去に自分で野菜を買ったこともないド素人でしたので、やるからには勉強しようと思い本屋で一冊の本を買いました。私が初めて手にした農業に関する本でした。その本は、29人の新規就農者にインタビューしたドキュメンタリー本で、栽培品目も多岐にわたり、年齢も幅広く、土地も北から南までいろいろな人が紹介されていました。本を読んだ感想は就農者の8割が失敗しているということ。「やっぱり農業はダメだな……」と心の中でつぶやきましたが、「それでも2割の人は成功しているのだから、失敗した人がやったことはやらなければよいはず」と思い、まだ種まきをしたこともなく、畑に入ったこともない時に「やらないこと」を決めました。

就農する前に決めた「やらないこと」

最初に買った本を読んで決めた「やらないこと」はいくつかあるのですが、ここでは2つ紹介します。

1. 知り合いに売らない

誰もがそうなのですが、最初は野菜を作っても売り先がありません。本に登場していた人は、前の職場や友人に現在の状況を話し野菜を買ってもらっていました。相手は付き合いで買ってはくれていましたが、目先の売り上げがほんの少し上がっただけで本当のお客さんにはなっていなかったのです。

2. 地元で売らない

地産地消という言葉がありますが、どうせ売るなら物価が高い都会で勝負しようと決めました。私が住んでいるのは千葉県ですが、同じ野菜を売るにしても、自分が納得できる価格を付けたいですし、宅配便を使えば都会で販売するのも可能です。そして都会であれば、地元よりもメディアやシェフに出会う確率もあがります。

地産地消、響きはよいですが儲かるのは至難の業です(画像は以前田園調布でマルシェをしていたころのもの)

営業はいたしません

前職が営業ということもあり、農業に就いた頃、「営業はしない」と決めました。営業はご存じの通り、楽な仕事ではありません。何より、営業をすると値段交渉が起こり自分の納得できる価格で販売することが難しくなります。その結果、努力が自分の売り上げを削る結果につながることになる場合もあるのです。そういう点も営業が嫌になった理由の一つでした。

営業をせずにどうやって取引先を開拓してきたのか。
私が選んだのは「情報発信」でした。野菜を販売するためには、取引先に何らかの形でタケイファームの存在を知ってもらう必要があります。お金をかけずに使うツールはTwitterやFacebook、InstagramなどのSNSです。私の場合はブログを使いました。ブログで「営業はしないが情報を発信する」ことにしたのです。営業するエネルギーとSNSで発信するエネルギー、どちらが楽か、私は後者です。
この詳細は別の機会に詳しくご紹介します。

雨の日は収穫しない

収穫予定日が悪天候の日もあります。農業を始めた頃はカッパを着てがむしゃらに収穫をして予定通り発送していました。冬の寒い日などは指先が凍えていたものです。私の畑はハウスがない露地栽培ですので、雨の日に畑に入ると畑が荒れてしまいます。市場へ出荷している人たちは、逆に雨の日の方が野菜の値が上がるのであえて雨の日に収穫するケースもあります。
私のレストランへの基本の販売方法は、週に1度、曜日を決めて発送するスタイル。そのため、野菜の状態を1週間キープするために野菜のクオリティーを重視しています。しかし、雨の日はそのクオリティーをキープする自信がありません。
そしてある日ふと思ったのです。

「雨の日は畑が荒れる」
「雨で野菜がよく見えないので、予備を含めて予定よりも多く収穫し結果ロスがでる」
「雨の日はクオリティーが落ちる可能性がある」
「やっている本人のテンションが下がる、さらに風邪を引く可能性もある」

こうして雨の日の収穫は止め、その分は翌日に収穫することにしました。これは現在の販売先であるシェフの皆さん全てが受け入れてくれています。例えば、沼津港で揚がったばかりの新鮮な魚の刺身を出す有名な飲食店があります。台風で船が出ず、魚の仕入れができない日があったとして、スーパーで魚を買ってきたりはしません。その日は、「魚が入荷していません」と言います。野菜も同じであってもよいはずです。最近では、常連さんがお店にやってきたとき、「昨日雨だったので武井さんの野菜は入荷していませんよ」で通用しているそうです。
これによって、品質の向上、作業の効率化につながりました。

雨の日は土が軟らかくなり畑が荒れてしまう

費やす時間と労力に見合わない野菜は栽培しない

現在まで約350品種、一般の野菜から西洋野菜までさまざまな野菜を栽培してきました。現在は年間約140品種の野菜を栽培しています。そうした中で、全く栽培しなくなった野菜が多数あります。
例えば「枝豆」。私の栽培していた枝豆は、5本を1束にして400円で販売していました。1本の枝豆の虫食いや葉を取り除き、きれいな1本にするためにかかる時間は3分。何度タイムアタックしても3分かかりました。1束作るのに15分、1時間の売り上げ1600円、10時間の売り上げは16000円です。これは1人農業でやる品目ではないと判断し、それ以来作っていません。

何度挑戦しても3分を切れませんでした

「絹さや」もその中の一つです。10月後半に種をまき、収穫時期は4月後半から5月初旬。半年の栽培期間を経て収穫時期は2週間。この時思ったのが、半年もかけて栽培したのに、販売している価格は2カ月ほどで収穫を迎える小松菜と同じ。おかしくない? 当時そう思った私の絹さやは小松菜よりも高価な金額設定にしました。
そして「ゴボウ」。少量多品目栽培のタケイファーム、収穫に費やす時間や労働力と販売価格が見合わないのでこちらもすぐに止めました。
栽培しない野菜となっていったのは、手間をかけた割に利益率が低いものです。

ゴボウを掘る時間と労働力は価格に見合わない

野菜の重さは量らない

私は野菜の栽培を習ったことがないので、小松菜1袋何グラムとかよくわかりません。販売先がレストランということもあり、タケイファームの野菜は基本1個売りです。オクラ1袋○○円ではなく、オクラ1本○○円です。インゲンも1袋○○円でなく、一本当たりで値段を付けています。よって、納品書もオクラ30本×単価○円で計○○円、インゲン50本×単価○円でで計○○円となります。レストランは小さなサイズを必要としますので、通常サイズの一商品と同じ重さにすると、とても多くの数量が必要となります。そのため一本当たりの値段を付けているのです。レストラン側も本数がわかった方が、メインディッシュ何皿分に使えるなど把握しやすくなります。
※ イモ類などは形も大きさもまちまちですので、現在栽培しているジャガイモだけは出荷する際にはかりを使っています。

出番がほとんどなくなったはかりは、普段は倉庫の奥で眠っています

おまけの虎の巻

農業を始める前に決めたやらないこと。これは今でも、いろいろな仕事が舞い込んできた時にやるかやらないかの判断材料となっています。売り先がないのに、せっかく頂いた仕事を断る決断と勇気。最初の頃は「あいつはつっぱっている」とか「あいつはとんがっている」とか言う人もいました。当然です、農業のド素人が偉そうに言っているのですから。今では、「武井さんはブレない」と言われています。
「やらないことを決める」ということは、辛い時期もありますが、結果、良い方向に向かうものです。

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