スマート農業で実現できることは? 農家の働き方がどう変わるのか事例を交えて解説

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スマート農業で実現できることは? 農家の働き方がどう変わるのか事例を交えて解説

スマート農業で実現できることは? 農家の働き方がどう変わるのか事例を交えて解説
最終更新日:2020年05月07日

近ごろ、よく耳にする「スマート農業」という言葉をご存じでしょうか。気になっているけれど、具体的な内容はよくわからないという人もいるかもしれません。スマート農業を取り入れることにより、これまで大変だった農作業が楽になり、大幅な省力化ができる可能性があるのです。本記事では、スマート農業で一体何ができるようになるのか、具体例も挙げながら解説します。農林水産省のスマート農業加速化実証プロジェクトについても解説しますので、スマート農業に興味をもっている方は、ぜひ参考にしてみてください。

スマート農業ってどういう農業? 何ができるの?

スマート農業とは、従来の農作業をICTやIoT、ロボット技術、さらにはAIなどを駆使することで自動化・省力化する農業の一手法のことです。農業にICTなどを取り入れ、これまで農作業にかかってきた労力を減らすことで、労働力不足を解決することや国内の食料自給率の安定を目指すことが可能になります。

スマート農業の導入は、農林水産省も力を入れている状況です。その理由の一つに、日本の食料自給率の低さがあります。2018年度の自給率はカロリーベースで約37%と、私たちが日々口にしている食料の大半は輸入に頼っている状況です。もし、輸入先国に大きな問題が起こり、食料の輸入ができなくなった場合、食糧問題が起こる可能性があります。そのため、食料自給率の向上は日本の食糧事情における重要な課題といえるでしょう。

また、担い手の高齢化や後継者不足により、優れた農業技術が途絶えてしまう危険性もあります。農業技術の継承は、日本の高い技術を守り、品質の高い農業を続けるにあたって重要な課題です。農業の労働者不足と農業技術の継承を解決する手段として注目されている方法の一つが、スマート農業です。

スマート農業を実践することで、不足している労働力を補い、さらに食料自給率の向上も期待できます。また、ロボットやAIなどで、優れた農業技術を確実に受け継いでいくことも期待できるのです。

このように、農業に革新を起こし、さらなる進展が期待できるスマート農業。農林水産省は、スマート農業に期待し、普及・導入が進む後押しをする政策を推進しています。

スマート農業加速化実証プロジェクトを推進する農林水産省の狙い

農林水産省は、スマート農業総合推進対策事業のひとつとして、スマート農業加速化実証プロジェクトを推進しています。この取り組みと狙いとはどのようなものでしょうか。

スマート農業加速化実証プロジェクトとは、2025年までにほぼすべての農家がデータを活用した農業を実践することを目指すプロジェクトです。
具体的な施策として、最先端技術の導入・実証と、社会実装を進めるための情報提供の2つがあります。最先端技術の導入・実証では、生産から出荷までそれぞれの工程で活用できる先端技術の例として、次のようなものが挙げられています。

先端技術の例

・耕起と整地:自動走行トラクターの無人協調作業、ICT農業用建機
・移植と播種(はしゅ):乗用型全自動移植機、ドローンによる播種
・栽培管理:リモコン式自動草刈機、自動走行スプレーヤー、イノシシICT自動捕獲檻
・施肥:ドローンによるリモートセンシングと施肥
・収穫:各種自動収穫ロボット、収穫野菜自動運搬車
・経営管理:経営管理システム

最先端技術の導入・実証で得られたデータは、各農家が活用できる形の情報に整理して公開し、農業従事者が先端技術を実際に自分の農業に取り入れる際の判断材料として提供します。このように、スマート農業は国が率先して導入を推進しているため、急速に普及することが期待されています。

スマート農業の導入事例5つを紹介

次は、スマート農業の具体的な事例を5つほど解説します。先進技術がどのように役立てられ、どの部分に効果が出ているのかをチェックしていきましょう。

無人トラクター、コンバイン、田植え機

農機具メーカー最大手のクボタは、2020年1月現在トラクター・コンバイン・田植え機の3種類で、自動運転可能な機種を販売しています。最新の自動運転トラクター「アグリロボトラクタMR1000A」は、近くに位置情報の精度を高めるための移動基地局がなくても単独で自動運転が可能な機種です。従来の自動運転トラクターは、近くに移動基地局を設置する必要がある点が導入のネックになっていましたが、この機種はその問題を解決しています。

コンバインによる脱穀や田植え機も完全に自動化されるため、稲作における農作業はかなりの部分で省力化を図ることができます。また、2023年までに車高を変えられて稲作にも畑作にも使えるトラクター「クロストラクター」の販売を目指しています。クボタは、今後もスマート農業の一翼を担う製品を開発し続けていくことでしょう。

農機具メーカー売上高2位のヤンマーも、ICTを駆使した自動運転トラクターを開発しています。トラクターに乗らなくても近くでタブレットから操作でき、精度の高い農作業が可能です。

ただし、これらの農機はいずれも高価で1000万円以上します。そのため、リースの利用や複数の農家による共同購入など、個々の農家の負担を分散したり、各種助成金を利用したりして導入を進めることも戦略の一つです。

さまざまな用途に使える! 可能性の広がる農業用ドローン

小型で安定走行技術が急速に進んでいるドローンは、各分野でさまざまな利用方法が考えられ、急速にその台数を増やしつつあります。農業用ドローンにおいても同様で、機体登録数は、2017年3月から2018年12月末までの間で6倍強に急増しました。主に、農薬散布用として使われることの多かった農業用ドローンですが、今では以下のような用途での普及が期待されています。

◆農薬や肥料の散布
後述の「圃場(ほじょう)センシング」と組み合わせることで、必要な時期に必要な量の農薬や肥料を効率的に散布

◆播種
中山間地域など作業性が悪い場所でも、短時間で正確な場所への種まきが可能

◆受粉
手作業で行っていた受粉を空中からの散布などにより省力化

◆農産物等運搬
収穫した農作物や農業資材などの運搬

◆圃場センシング
画像分析などで葉の色や虫の付き方などをチェックして、生育状況や病害虫の発生などを可視化

◆鳥獣被害対策
カメラ撮影により生息実態の把握や捕獲現場の見回りなどの負担を削減

農業用ドローンは、実際の農作業が自動化されるだけではありません。高精細カメラやスペクトルカメラなどを搭載したドローンを利用すれば、取得した画像から、これまで人の目では見えなかった小さな病変などにも早く気づくことができるようになります。これにより、病害虫による被害をこれまでよりも小さな規模で抑止し、先手の対策を打てるようにもなります。結果として、農薬や肥料の使用を少なくすることもでき、従来よりも高品質でコストを抑えた農作業も可能です。

さまざまな作物の収穫を自動化する自動収穫機、選別機

「作物の収穫を自動化したい」という願いは、以前から多くの農家が持っていました。その願いをかなえる自動収穫機が、現在どんどん開発されています。2017年に宇都宮大学では、イチゴの果実に一度も触れずに収穫するイチゴ自動収穫機を開発しました。またinaho(いなほ)株式会社では、アスパラガスの自動収穫ロボットを開発するなど、人手でないと難しかった作物の自動収穫が可能となりました。

選別機も果実や野菜などを自動選別する機械が増えてきています。重量や大きさで選別するほか、非接触型のセンサーを利用した選別機もあります。

栽培管理支援システム

気象情報とICTを活用して作物の栽培管理を支援する「栽培管理支援システム」は、農研機構をはじめとした共同研究グループによって開発された農業生産を支援するための情報システムです。

気象情報と予測モデルから、問題が発生しないかどうかを常時観察し、「問題が起こりそうだ」という判定が出たら、農業生産者に早期警戒情報を発信します。また作物の栽培管理に役立つ栽培管理支援情報を作成・配信しており、農業生産者は、それらのデータを判断材料のひとつとして、どのような対策を取るかの意思決定を行います。

センシング技術(センサー・画像分析)

圃場にセンサーを設置して、温度や湿度、照度などのデータを遠隔地からチェックできるようにする技術がセンシング技術です。前述のドローンによる圃場センシングにも活用されています。センシング技術を用いることで、離れた場所にある田畑にわざわざ出向いて状況を観察するといった手間を削減できるだけでなく、取得したデータをAIにより分析し収穫量を予測するなどの、さらなる活用の可能性が高まってきています。

スマート農業の事例を5つ紹介しました。取り上げた事例以外にも、さまざまなスマート農業の製品やソリューションが開発され、導入されつつあります。「自分の行っている農作業で取り入れられる部分はないか」「費用対効果はどれぐらいか」など、いろいろな角度から導入を検討してみましょう。

スマート農業を導入する5つのメリット

スマート農業を導入するメリットは、農作業の省力化だけではありません。スマート農業導入のメリットを5つにまとめて解説します。

業務の見える化

農業にかかわる業務を見える化することは、とても重要です。たとえば、「誰がどこで、どのような作業を、どれだけ行ったか」といった情報を精緻に管理し見える化することで、栽培時のリスク回避ができるだけでなく、従業員の教育にも役立てることができます。また、見える化により出てきた課題に対して改善を行うことで、さらなる効率化が図れ、農業経営におけるメリットも大きなものとなるでしょう。

農業技術のスムーズな継承

篤農家と呼ばれる優れた農業生産者の農業技術は、後継者不足により途絶えてしまうのではないかと心配されている農業の抱える課題の一つです。しかし、スマート農業を実践し「熟練の農業技術をAIに学習させる」「農作業の自動化作業に組み込む」などすることにより、貴重な農業技術をスムーズに後世に継承していくことができます。

農作業そのものの業務改善

たとえば、従来は毎日田畑の様子を見に行き、害虫や、葉・果実の生育具合、色の具合を見て成長の度合いを判断していました。しかし、農薬散布や追肥などが自動化されると、農作業に携わらなくてもよい時間が増え、その分、日々の作業に追われてできなかった、経営判断や従業員の教育などに力を入れることができるようになります。
これにより農作業そのものの業務改善を行うことができ、働き方を大きく変えることが可能です。

農作業の効率化

トラクターや田植え機などの導入で、農作業を劇的に効率化できることも、スマート農業導入のメリットです。自動運転の農機具と農業用ドローンを組み合わせると、より広い範囲の農作業が効率よくできるようになります。農作業の効率化により、広範囲の作付けが可能になれば、農家1軒あたりの生産量を引き上げることができます。その結果、国内の食料自給率の向上にも貢献します。

農作業の省力化(農家の負担軽減)

スマート農業の導入により、各種農作業が省力化できるので、農家の負担軽減になる点も大きなメリットといえます。たとえば、体力を使う重労働が大きく減少するため、高齢になっても農業に携わることが可能になります。これまで体力的な問題で農業をあきらめていた人も参加できるようになり、農業に参入する人が増えてくるといった期待もできます。近年では「農福連携」といった取り組みも注目を集めています。

スマート農業に懸念点はある?


スマート農業が普及することで、「農家の仕事がなくなる」や「農家が考えなくなる」、また「ロボットに取って代わられる」などという心配をする人もいるでしょう。しかし、スマート農業は、従来の農作業にかかわる負担を大きく省力化してくれる切り札です。

「導入費用をどのように調達するか」という課題はありますが、活用することによって収入の改善や農作業にかかる時間の短縮など、メリットも多いといえるでしょう。スマート農業で省力化できた時間は、「人でしかできない作業」「農業経営の意思決定」などに割り当てることで、経営の強化が期待できます。

スマート農業にかかわる費用については、現在、助成金の制度があります。スマート農業の導入を推進する国の意向があるため、条件などを精査したうえで積極的に利用したいところです。今は従来の農業からスマート農業へ変更する過渡期ですが、いち早くスマート農業を取り入れ、農作業の改革を目指してみてはいかがでしょうか。

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