ミミズにも種類がある
ミミズにもさまざまな種類があり日本でも100種以上いると言われています。一般的に畑やその周囲でよく見かける陸生のミミズはフトミミズ科とツリミミズ科の2種類です。特に日本ではフトミミズ科の方が多く存在し、主に土の中で生息しています。また堆肥の中や生ゴミの中に生息するのがツリミミズ科のシマミミズで、ミミズコンポストとして使われるのがこのミミズです。フトミミズとシマミミズでは食べものや習性が違いますので、この2種類についてその特徴や違いについてご紹介します。
フトミミズ科の特徴
フトミミズ科は体長10センチほどのものが多く、シマミミズに比べるとやや大きいのが特徴です。畑では最もよく見られるミミズの種類で、地中に穴を掘って巣穴を作って生活しているので、畑を耕している時に出てくるミミズは基本的にこの種類になります。フトミミズ科は土の表層にある有機物や有機物を含んだ土を食べ、栄養に富んだフンを出しながら地中を移動し続けます。そのためこのフトミミズ科によって地中が耕され、通気性や排水性が高まるとともに肥沃(ひよく)な土壌が作られていきます。寿命は1年ほどで繁殖力はシマミミズに比べると弱いです。
シマミミズの特徴
シマミミズの体長は5〜10センチほどのものが多く、フトミミズ科よりもやや小型で、体にシマ模様があります。土の中よりも堆肥の中やその周囲など、有機物の多い湿った場所に生息していることが多く、あまり深くに潜って生活はしません。フトミミズ科があまり食べない生ゴミや腐敗している有機物も好んで食べ、巣穴を作らないので堆肥がかき混ぜられても問題なく、コンポストに向いています。繁殖力もフトミミズに比べて旺盛で、寿命も2年ほどと長いです。釣りエサとして使われるシマミミズは釣り用語でキジと呼ばれることがあり、これは釣り針を刺した時に黄色い血(黄血)が出るからで、フトミミズと見分ける一つの方法になります。
フトミミズ科 | シマミミズ | |
---|---|---|
体長 | 10センチ前後のものが多い | 5〜10センチほど |
生息場所 | 土の中に巣穴を作って住んでいる | 堆肥やゴミ捨て場などの周囲で湿った場所を好む |
繁殖力 | 弱い | 強い |
寿命 | 約1年 | 約2年 |
食べ物 | 有機物を含んだ土壌 | 生ゴミなどの腐敗した有機物 |
ミミズはいろんな生き物のエサになる
ミミズは釣りの時に魚のエサとしてよく使われますが、それ以外にも鳥やアナグマ、イノシシ、モグラ、大型昆虫のエサにもなります。生態系のピラミッドの中では底辺の方に位置する存在で、ピラミッドを支える意味でも重要な生き物であると言えます。畑の中でもミミズがいることで、それを食べるためにいろんな生き物がやってくることがあります。
ミミズは肥沃な土の製造工場?
ミミズはダンゴムシ、微生物などの他の土壌生物達と協力し、畑の表層にある枯れ葉・枯れ草や堆肥、虫の排せつ物や死骸などを食べて体内で分解し、肥沃な土壌へと変えていきます。特にミミズのフンには野菜にとって重要な栄養素となるカルシウム、カリウム、リン酸などが植物が利用しやすい形となって含まれている他、腐植酸、アミノ酸、酵素なども豊富に含まれており、ミミズの体内は肥沃な土の製造工場のようです。またそのフンの周囲は微生物数も増えることがわかっており、土壌生態系を豊かにする働きがあるとも言えそうです。
ミミズがたくさんいるほど良い畑なのか?
ここまで読んでいるとミミズがたくさんいる畑は良い畑で、多ければ多いほど良いように感じるかもしれません。確かにミミズがほとんどいないような畑は良い状態ではありません。施設園芸などで土壌消毒を頻繁に行っているようなところは特に少ない傾向があります。極端な場合はミミズを入れると死んでしまうこともあり、このような場合は微生物も生息しにくい状態のため土壌改善がかなり難しくなります。
しかし通常は、痩せている畑に堆肥などの有機物を入れて土づくりを行うとミミズは増えていき、ミミズの働きによって土づくりのスピードは早まっていきます。さらに土づくりが進むとその数はだんだんと減っていきます。これは土の中の未熟な有機物が分解されていったことで、ミミズのエサが減っていくためだと考えています。そのためあまりにもミミズが多いということは、それだけ未分解の有機物が多いということを表しますので、それを好むカビの菌やセンチュウなども発生しやすく、野菜にとってはあまり良い環境とは言えません。ミミズを食べにアナグマやモグラの発生も多くなることがあります。この傾向が見られる場合は、新たに堆肥などの有機物を追加するのはやめておきましょう。つまり畑にミミズはいた方が良いが、決して多ければ多いほど良いというわけではないと考えています。
ミミズの種類や数で畑の状態を判断しよう
畑の土を良くしてくれるというイメージのあるミミズですが、実際には種類によってもその働きや性質が違うということと、たくさんいればいるほど良いというわけではないということをご紹介してきました。まずはフトミミズ科とシマミミズの性質の違いを理解し、畑にいると良いのはフトミミズ科であり、コンポストなどで使用するのはシマミミズだということを覚えておきましょう。そして畑にミミズがいること自体は良いことなのですが、多すぎる状態はそれだけ未分解の有機物が多い、つまり食べ物をたくさんお腹にいれてはいるけれど、それをちゃんと消化しきれてはいないということです。有機物を畑に入れるのは一旦ストップし、時間をかけて土づくりをしていきましょう。
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