大分県独自の手厚いサポートにより年商1億円を達成
東京に本社を構える人材派遣会社の福岡支店で、半導体関連の請負事業を担当していた後藤専務が、大分県で白ねぎの栽培を始めたのは2008年。半導体業界は繁忙期と閑散期の差が激しいにも関わらず、専門性の高い分野だけに技術者を正社員として常用雇用しなければなりません。そのため、繁忙期が終われば社員の稼働率が極端に落ちてしまうことに、当時は頭を悩ませていたそうです。そこで、半導体サイクルとは異なる異業種への参入を検討し、引越し業やクリーンエネルギー関連の事業などと並行して農業をスタート。その中で、唯一ビジネスとして軌道に乗り、安定した収益を確保できるようになったのが、白ねぎの栽培だったのです。
九州各県をまわり、その中から農業を始める場所として大分県を選んだ一番の理由は、企業誘致にもっとも積極的に取り組んでいる地方自治体だったからとのこと。農林水産部に新規就業・経営体支援課(当時は農山漁村・担い手支援課)という専任の部署があり、参入前の相談から事業計画の策定、農地の確保、営農開始後の技術指導までを総合的にサポートできる体制があるところが、農業についてまったく未経験だった後藤専務たちにとっては非常に心強く感じられたそうです。また、国庫補助事業や制度融資に加え、県独自の補助事業・基盤整備事業が充実していたという点も、大きな決め手になったと話します。
実際、大分県では県内の地方機関にも専任部署を設けて連携しており、参入支援担当や栽培品目担当の普及指導員たちが、きめ細かく参入までの連絡調整や栽培技術の指導をおこなっています。そのため、「白ねぎの栽培を始めたばかりの頃はとても助かりました。今でもお世話になっています」と、後藤専務は当時を振り返ります。そして、「私たちは農業に関しては完全に素人だったので、社員たちにも『指導員さんの言うことは必ず素直に聞いて実践するように!』と、口を酸っぱくして言っていましたね」と、笑いながら話してくれました。こうした手厚いバックアップもあり、同社は3年目に農地を5haから10haへと広げ、5年目にはさらに15haにまで拡大。目標としていた年商1億円を達成することができたのです。
地域に根ざし、良好な関係を築くことが成功への近道
大分県では7種類の野菜と4種類の果樹をはじめとした、戦略品目を設定し、特に生産に力を入れています。その中から後藤専務が白ねぎを選んだ理由は、周年栽培(周年出荷)が可能だったから。とは言え、一時期はそれだけで勝負するのか、それとも多品目にするべきなのか迷ったこともあったそうです。しかし、異なる栽培サイクルの野菜がいくつもあると労務管理が複雑化してしまうため、やはり白ねぎに専門特化することを決断。ただ、最初から計画通り順調に栽培できた訳ではありません。
初期の頃は自分たちの能力以上のことをしようとして、理想と現実のギャップにフラストレーションを感じることも少なくなかったと言います。後藤専務は、「私たちは農業に参入する前、2~3年で年商1億円を達成する計画を立てていました。でも、農業に関しては全員が未経験だったので、それを実践できるだけの技術と経験がともなっていなかったんです。当初の計画が甘かったと言われればそれまでですが、5年目には目標を達成することができたので、結果的には良かったと思います」と語ってくれました。新規参入からわずか5年目で年商1億円を達成するというのは、決して簡単なことではありません。むしろ、同社に経験がなかったからこそ、固定観念にとらわれずに事業計画を立て、その中で試行錯誤を重ねることによりスピーディな成長を実現できたと言えるでしょう。
また、「雇用の創出をはじめとした地域への利益還元や、地域活動への積極的な参加など、事業を地域に根づいて実践してきたというところも、オーエス豊後大野ファームさんが成功できた要因のひとつではないでしょうか」と、現在、普及指導員として同社を担当する衞本さんは話してくれました。
「全国に先駆けて企業の農業参入を推進させてきた大分県では、地元で暮らす人々の参入企業に対する認知度も高まっています。努力を怠らず成功へと歩んだオーエス豊後大野ファームのような企業がモデルとなって、大分県への農業参入の流れが盛り上がっているので、大変にありがたいことです。県としても、この良い流れが続くよう、努力を継続していきます」と井迫さんは話しました。
大分県を代表する参入企業としてスマート農業へ挑戦
農業と言えば、毎年のように変化する気候や、それにともなう価格変動などにより、安定した収益を上げ続けるのは難しいと思われがちです。しかし、後藤専務は「私は長年、半導体業界で仕事をしてきましたが、安定性という観点から見れば農業のほうがずっと良いですよ。実際、当社も農地を15haに拡大してからは毎年1億円ほどの売上を継続することができていますから」と、ビジネスとしての魅力を語ってくれました。真面目に良いものをつくって出荷すれば、農業は自然と結果がついてくる。そこが、どれだけ高い技術力を持っていても、需要がない時期は売上が激減してしまう半導体業界との違いかもしれません。
現在、同社の販売先は、JAへの出荷が50%、あとの50%は食品メーカーや飲食店などとの直接取引だそうです。そして、取引している顧客が離れていったことは、これまでにたったの一度もないのだとか。さらに、こうした顧客は特に営業活動に力を入れて開拓したのではなく、そのほとんどがクチコミで広がっていったと言います。それが、「良いものをつくれば、自然と結果がついてくる」という実感につながっているのでしょう。ただ、それは「商品を決して切らすことなく、お客様が必要とする量をつねに安定供給する」という企業努力を、徹底して継続してきたからこそ。数多くの顧客からの厚い信頼は、設立から一貫して変わらない、そんな姿勢から生まれています。
農業参入から5年目で年商1億円を達成した後藤専務は、半導体業界でISOを担当していた経験を活かしてJGAP認証を取得。そして、現在は農林水産省『スマート農業技術の開発・実証プロジェクト』に、大分県と共同で取り組んでいます。データを見える化する経営管理システムや大苗育苗技術、ラジコン草刈機による雑草防除など、同社は大分県を代表する参入企業としてさまざまな先端技術を導入し、その検証をおこなっているところ。「農業が農業のままじゃダメなんです」と和田さんは言います。取締役であり農場長の和田さんは豊後大野市出身。以前は福岡県で別の仕事についていましたが、地元に戻り、たまたま新聞で目にした小さい求人募集枠に掲載されたオーエス豊後大野ファームへ応募したことがきっかけでした。
農業をビジネスとして考えるのであれば、今後はJGAP認証のような工業分野と同等のマネジメントシステムの確立や、ロボット・AI・IoTなどの導入によるスマート化を実現することで、品質や安全性を担保しながら効率化を図る努力が必要不可欠。そこで得た利益を還元し、より地域社会へと貢献できる存在になることに、オーエス豊後大野ファームは今もなお挑戦し続けているのです。
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