自分のビジョンにあった販路を見つけ、確実な売り上げにつなげよう!!

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自分のビジョンにあった販路を見つけ、確実な売り上げにつなげよう!!

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

自分のビジョンにあった販路を見つけ、確実な売り上げにつなげよう!!
最終更新日:2020年08月13日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

栽培した野菜をどのように販売するかは難しいテーマです。農業は、労働力と時間をかけ、そこにお金もかかります。一生懸命働いた割に利益が少ないとつぶやいている人もいるのではないでしょうか。今の販路を変えたい人もいるかもしれません。今回は今一度、「販路」について考えてみたいと思います。

自分が納得できる販路を見つける

農業の入り口(栽培方法など)を勉強する人はたくさんいますが、出口(販売方法や販路)を勉強する人は意外と少ないです。特に新規就農者の場合、野菜は作ったけれど、販売先が見つからない為、とりあえず買ってくれるところに売っているという人も多いと思います。「とりあえず、買ってくれるところ」。ここがひとつの問題で、「自分が納得できる価格で販売できているか」が大切です。
改めて考えてみます。野菜の販路にはどのようなものがあるでしょうか。

  1. JAへの出荷
  2. 市場への出荷
  3. 直売所・道の駅への出荷
  4. スーパーなどの小売店への出荷
  5. 飲食店への出荷
  6. マルシェへの出店
  7. インターネットでの通販
  8. イベントの開催

細分化できる販路もありますので、選択肢はこれ以上に増えます。どれが正解というのはなく、どれも正解です。何人で農業をしているかによって作る野菜も量も変わりますし、畑の面積も関係してきます。人と話すのが苦手であれば、マルシェの出店などの対面販売は選択肢から消えるかもしれません。農業を営む条件はそれぞれ違いますし、農家の性格も皆同じではありません。
そして、農業を続けていく上でビジョンは変化するもの。実際に始めてみてわかった自分が描いていたイメージとのギャップや、農業を通して得ることのできる楽しさや喜び、それに伴って販路も変わっていきます。現在の私の販路は「5. 飲食店への出荷」ですが、過去に2、4、6、7、8の販路を経験しています。そこで、販路を変えるきっかけとなったビジョンの変化についてお話しします。

ビジョンの変化による売り方の変化

市場への出荷

就農当初は、市場へ出荷する両親の手伝いをしていました。このときの私の農業のビジョンは、両親のやり方を踏襲して「家族経営で市場出荷して稼ぐ」でした。市場出荷で学んだことは、見た目の良い野菜を作ることの大切さです。
市場のメリットは、規格品であれば全量買い取ってもらえることです。金額は自分では決められないので、少しでも高い値段を付けてもらうために見栄えをよくする必要があります。うちでは、長ネギと大根を出荷していました。長ネギは、決められた本数を箱に詰めていくのですが、箱を積み上げた時、一番上にのせる箱にはきれいなネギを詰めて見栄えをよくしたものです。大根は、1日約2000本の大根を収穫し、それを洗って箱に詰めて、その日のうちに市場へ運びます。大根も長ネギ同様、一番上に乗せる箱にはきれいな大根を詰めます。
大根の1箱の重さは約10キロですので、この時期は、筋トレをしていたようなもの。この市場出荷スタイルは、体力と人手が必要だと気づきました。当時から「ひとりでできる農業」を考えていましたので、市場出荷はひとりでは無理だなと思い、両親とは違う農業のビジョンを描き始めました。

市場出荷していた時のネギの箱詰め

インターネットでの通販

私が次に描いた農業のビジョンは「一人でできる農業」。市場出荷の合間、ほうれん草や小松菜などの野菜やカラフル野菜などを作っていました。それらの野菜を一人で販売できる方法を考えた結果、野菜セットを作りインターネットで通信販売することを思い付きました。
インターネットで販売するにあたり、一番に気を付けていたことは「お客さんを不安にさせない」こと。購入お礼の連絡、発送の連絡、その他の連絡など、顧客一人一人にフォルダを作り、メールの送受信を管理していました。安心して買ってもらうことがリピートにもつながるのです。「安心安全な野菜」などのフレーズの文章よりも「安心できる取引」が大切なのです。この経験は、今の顧客との関係構築の際にも役立っています。
「野菜がおいしい」などの評価が直接もらえることが励みにもなり、しばらく続けていましたが、労力の割に意外と儲からないことに気付きました。ここでまた「労力に見合う収益を上げる農業」というビジョンが見えるようになりました。

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マルシェへの出店

インターネット通販をやっていた時期、私は複数の販路を持っており、その一つに「マルシェへの出店」がありました。
私が出店していたマルシェは、田園調布で有名料理研究家さんと始めた「つかの間のマルシェ」と、文京区でレストランと始めた「はりまざかマルシェ」の2つです(共に現在は開催していません)。この2つの共通点は、既に開催されていたマルシェではなく、どちらもゼロから作ったマルシェだという点です。インターネット通販と同様、お客さんからの評価が直にもらえますが、マルシェは直接お客さんと対面することが大きな違いです。マルシェでは、野菜の説明の仕方、野菜の見せ方、ポップなどの書き方を学ぶことができ、その経験は今の私のブランディングのテクニックや考え方につながっています。
しかし、私はマルシェをやめることになります。その理由は3つあります。

  1. 土曜日に収穫し日曜日に販売するので2日間の売り上げをあげる必要がある。
  2. 売り上げをあげるためには野菜の量が必要なので準備に時間がかかる。頑張っていた時は深夜0時まで袋詰めしていた。
  3. 毎回、お客さんが来るかどうか不安だった。天候に左右され、連休など外出が多い時期は来店客が少なく、準備した野菜が売れ残るリスクがあった。

やはり、「労力に見合う収益を上げる農業」という私のビジョンに合わなかったのです。

スーパーなどの小売店(百貨店)への出荷

また同時期に、新宿にある百貨店のバイヤーから誘いがあり、そこの野菜売り場にしばらく出荷していました。その売り場はバイヤーが厳選した生産者の野菜のみを扱うことで有名で、当時、通年でレギュラーを張っていた農家はわずか7人ほど。ここでの販売はプレッシャーだったものの、自信につながりました。また、出荷した野菜を日持ちさせる工夫など、当時学んだことは現在の販売にも生かされています。

しかし、ここに出荷するための準備は大変でした。シールを貼ったり、何百本の葉付きニンジンをスポンジで洗う労働に疲れてきたのです。当時は、売り上げよりもこの百貨店で販売してブランド力を得ることを重視していましたが、やはり「労力に見合う収益を上げる農業」というビジョンには合わず、出荷をやめることにしました。

百貨店に出荷する洗ったニンジン

飲食店への出荷

現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しています。誰もが予想していなかった新型コロナウィルスの影響で2020年4月の売り上げの落ち込みはありましたが、現時点でその販売スタイルを変える気はありません。
インターネットで野菜セットを販売していた時は、当時あった運送会社のサービス「ナイト便」に間に合わせるため21時まで働き、マルシェの時は深夜0時まで働いていましたが、現在は14時に出荷は終わり、前よりも利益があがっています。どこかのタイミングで飲食店の販売方法についてもお話しできればと思っていますので、興味のある人は期待していてください。

タケイファームの野菜を使った一皿

イベントの開催

農家が開催するイベントは会費千円前後で開催するものが多い中で、私が開催するイベントはしっかりと利益を出します。会社員と違い、農家はボーナスがありませんので、この定期的に開催するイベントは私にとってのボーナスみたいなものです。

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ビジョンによって変わる売り上げの考え方

農業のやり方として、とにかく売り上げをあげたいという人は、土地を広げ、人を雇い、機械を導入して大口顧客を確保するというパターンもありますし、スローライフや田舎暮らし、自給自足がテーマの人は、稼ぐことより農業を通して人生を楽しむという考え方が優先順位第1位となるかもしれません。
就農1年目の農産物売上高の平均は259万円(2016年度、全国新規就農相談センター調べ)とのことですので、仮に1年目の目標を平均売上高をクリアする300万に設定すると、月に25万円売り上げれば達成します。これを4週で割ると6万2500円。1日休んだとして6日で割れば1日当たり1万500円となります。この金額をどのようにして稼ぐかですが、売り先、品目、価格設定、労働力などによって大きな違いが出てきます。

前にも書きましたが、過去に私がインターネットでの野菜セットにも入れていた枝豆は、5本を1束にして400円で販売していました。1本の枝豆の虫食いや葉を取り除き、きれいな1本にするためにかかる時間は何回計っても3分。1束作るのに15分、1時間の売り上げ1600円。目標の1万500円に要する時間は6.5時間です。
一方、タケイファームの人気野菜「アーティチョーク」は1個500円、21個収穫すれば1万500円。これに要する時間は15分です。このやり方が通用するのは、アーティチョークの販売先がレストランだからです。これがスーパーだったら売れないでしょう。売り先、品目、価格設定、労働力を選定することがいかに大切かがわかると思います。販路は一本化するより、リスクを分散化するためにも複数確保しておくことが大切です。私はメインとなる販路をレストランに一本化しましたが、それはブランド作りと仕事の効率化のため。目的に合った販路選びが何よりも大切です。

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出荷されるアーティチョーク

販路開拓にホームページは必要か?

ホームページを持っている人、持っていない人、検討中の人。結論から言うと、ホームページはあった方がよいと思います。販路を開拓するにあたり、営業する人もいるでしょうし、野菜を食べた人があなたを調べるかもしれません。今の時代、ホームページは名刺代わり。ホームページがあることが普通で、相手に自分のしていることを伝える便利なツールなのです。資材や種の購入など入り口にお金をかける人は多いのですが、販売するための出口にかけるお金を渋る人がいます。名刺作りやホームページ作りなどがそうです。もちろんお金が発生することですので皆さんの判断となります。私個人の意見ですが、トップ画面1ページのホームページでもかまいませんのであったほうがよいです。勘違いしないでほしいのは、ホームページを作ったから、オンラインショップを作ったからといって野菜が売れるわけではありません。それらを生かすためのブランディングは必要となります。

ホームページのトップ画面

おまけの虎の巻

農家の売り上げを考えてみます。例えば社員やパートさんなど20人のスタッフがいて年間5000万の売り上げをあげるところもあれば、夫婦2人で年間600万円というところもあります。1人当たりの売り上げは前者250万円、後者300万円。後者の方が稼働率は高いのですが、販路によっては人手が必要な場合もあるということなのです。売り先、品目、労働力などをよく考え、現在、自分が置かれている環境にあった販路を見つけ、「納得できる価格」で販売できるようにしましょう。


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