皿に合わせて野菜を作る? 間引き菜を商品にする方法

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皿に合わせて野菜を作る? 間引き菜を商品にする方法

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

皿に合わせて野菜を作る? 間引き菜を商品にする方法
最終更新日:2020年07月13日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

栽培した野菜の中には規格に合わないものも。これらを出荷しない農家がほとんどの中で、「規格外品」「B品」「訳あり品」などと呼び、本来の売価よりも低価格に設定し販売している農家もいます。しかし考え方を少し変えるだけで、規格外の野菜も価値の高い商品となり得るのです。

間引き菜を売る農家はもうかる?

先日、スーパーの顔の見える生産者コーナーで、きれいに洗ってあるニンジンの間引き菜が20本ほど入って90円で販売されていました。「今まで廃棄していた間引き菜も商品になるのではないか」と考えたのだと思いますが、残念ながらこの売り方には工夫が感じられません。
その理由は、間引き菜に対する考え方の違いにあります。
「1本のニンジンを育てるために淘汰(とうた)された間引き菜」という考え方と、「1本1本が主役になる価値がある商品として育てる間引き菜」という考え方です。

私は栽培するニンジンの90%を間引き菜の状態で売り切ってしまいます。タケイファームが販売する野菜は基本1個売り、ニンジンの間引き菜は「1本40円」です。
間引きニンジン1本を40円で販売するのですから、納品書に「ニンジンの間引き菜」とは書きません。タケイファームでは「ニンジンミニ」です。「ベビーキャロット」や「姫ニンジン」と呼んでいる人もいます。「ニンジンの間引き菜」と表現する時点で価値がなくなるからです。重要なのは「サイズをそろえること」。調理の際に火を入れる時間、盛り付けにも統一性がでるため、シェフたちに好まれます。

また、栽培や出荷調整にかかる時間や労力を考えることも重要です。
私が1本40円で販売しているニンジンの間引き菜は洗いません。理由は鮮度を保つためと、洗うことによって表皮を傷つけてしまい傷みやすくなるのを防ぐためです。おかげで調整作業にかかる時間と労力は短縮されました。
仮に、冒頭で紹介したような売り方をしていたとしたらどうでしょうか?
ニンジンの間引き菜1本を洗う時間が1分かかるとして、20本で20分。1時間で3袋しか作れませんので1時間の売り上げは270円です。このケースであれば、間引き菜を販売するよりも自家消費するか破棄してしまった方がよいと思います。
さらに言うなら、間引き菜の状態で収穫してしまいますので、追肥もいらず、畑の回転率も上がります。
出荷するまでにかかる時間・労力のすべてを計算に入れ、売り方や売り先を工夫することで売り上げアップにつなげなければなりません。

サイズをそろえることで価値が上がる

あえて小さな野菜のニーズに向けて

私の趣味は食べ歩きです。といってもほぼ仕事だと思っています。百貨店やマルシェで野菜を販売していた頃は、パッケージングを勉強するためにスーパーやマルシェ巡りをしていましたが、今は、お皿の上で野菜がどのように使われているかを勉強しています。フレンチやイタリアン、和食、中華など、料理のジャンルを問わず、素材としてではなく、盛り付けや見た目の部分で小さな野菜のニーズが高いことに気づきます。
私のお客は飲食店で、基本、週に1回金額を決めてお任せで野菜を発送しています。平日は毎日収穫していますので、野菜が足りなくなることもありますが、プロとして野菜がないという理由でお休みすることはできません。
あるとき、野菜が少ない時期に5センチほどの小松菜を収穫して発送したことがありました。シェフからクレームがくる覚悟でいましたが誰からも連絡はなく、翌週、少し成長した7センチほどの小松菜を発送したところ、シェフから1本の電話が入りました。
「武井さん、今回の小松菜大きいよ」
この時、規格は作られたものではなく、作るものだと気づいたのです。

お店で野菜の使い方を勉強する

サイズはさらに小さく“極小シリーズ”へ

シェフから「○○の料理に武井さんの野菜を合わせたいのですが、何かおすすめの野菜はありますか?」と連絡が入ることがあります。その料理に合う野菜を提案するのですが、その時に必ず聞くことが調理法とお皿の大きさ。それによって、最高の一皿に仕上げる設計図みたいなものが見えてくるのです。小さな野菜が引き出す料理のビジュアル、それを思い描きながらお任せで送る野菜の中に小さな野菜を入れることでシェフに喜ばれ、このサイズにニーズがあることを確信しました。
最近では、葉っぱの長さが5センチほどのニンジンも出荷しています。この時の根の部分はまだ太さ1ミリ長さ2センチほど、ニンジンと呼ぶよりも植物の根っこです。シェフに「このサイズのニンジン、カッコよくないですか?」と聞くと、「カッコイイです。今までいろいろなニンジンを使ってきましたが、このサイズは初めて、スゴイ!」という反応。当然ながらこのニンジンも1本1本に値段をつけています。他にも小指の爪程の大きさのカブもあり、今ではタケイファームの極小シリーズとしてバリエーションが増え大活躍しています。

シェフをうならせたニンジン極小

野菜には商品になる部分がたくさんある

私にとって栽培が初めてとなる野菜に挑戦するとき 、必ずその中の1本は触らずにそのまま放置するようにしています。その野菜の「植物としての一生」を見たいからです。

今のように時間と仕事のコントロールができず、疲れ果てるまでがむしゃらに働いていた時代は、収穫が終了した野菜の片付けにも手がまわりませんでした。ある時、放置していたキャベツからわき芽が出ているのを発見し、それを食べてみるととてもおいしく、ビジュアルもカッコイイと感じたのを覚えています。そのままにしておくと、わき芽は成長し花が咲くことを知りました。この時気づいたのは、キャベツは人間が野菜というカテゴリーの中に入れた「植物」なのだということ。決してスーパーで売られているような姿だけがその野菜の本来の姿ではないと気づいたのです。
それ以来、初めて栽培する野菜の植物としての一生を見るようになりました。今まで野菜というカテゴリーに入れられていた植物の成長を見守ることで、世の中には出回ることがないであろう新しい野菜に出会うことができるのです。これは他の農家が商品にしないものを商品として販売できる強みとなっています。

野菜の一生を知るきっかけとなったキャベツのわき芽

価格設定の方法は?

間引き菜やわき芽といった、他の農家が決して商品にしないものを商品にする場合、その価格設定も重要です。

ダイコンを例にとって説明します。
春先のダイコンは抜かずに放置しておくとトウ立ちといって花芽のついた茎が伸びてきます。その後、成長に伴いわき芽が出て、花が咲き、種の入った“さや”ができます。わき芽も、花も、種が入っている若いさやもすべて食べることができ、ピリッとした辛みのあるダイコンの味がしてものすごくおいしいです。ダイコンとして販売すると種1粒から1本ですが、わき芽や花であれば大量に収穫ができます。
では、これを販売することを考えた時、価格設定をどうするか。
冒頭に書いた「主役になる価値」を思い出してください。あまり出回らない希少性、種まきから収穫せずに花が咲くまで畑を使っている時間、そしてダイコンならではのうまみが感じられる味、そのすべてを価格として表現すべきでしょう。
ちなみに私はダイコンのわき芽1本70円で販売しています。1本のダイコンを収穫して販売するよりも利益があがります。

放置して成長したダイコンのわき芽

1本1本に価値をつけることで売り上げにつながる

野菜の売り方に固定観念は禁物

私は野菜の育て方を習ったことがありませんので、就農当時「家庭菜園大百科」という栽培に関する本を買い、それを読んで野菜作りをはじめました。今となっては、この独学の農業こそが規格という概念にとらわれず、間引き菜を商品にすることができる考え方のもとになったのだと思います。

約20年前に買った私の野菜のバイブル「カラー版 家庭菜園大百科」(家の光協会)。現在はリニューアル版の「決定版 野菜づくり大百科」が販売されている(画像提供:一般社団法人家の光協会)

JAや市場経由で出荷される野菜は規格があるために、形やサイズを優先して栽培をします。規格があるおかげで野菜はスムーズに流通して全国のスーパーに並び、誰もが買うことができます。
一方で、同じような野菜は同じような料理しか生まないのではないかと思うのです。
夕飯のおかずに小松菜を買ったとしましょう。どのように調理しますか? ざく切りにして炒めたり、ゆでてお浸しにしたり、ペーストにする人もいるかもしれません。私が言いたいのは、規格があるがために調理法まで限定されてしまい、家庭での小松菜料理はバリエーションが少ないのではないか、ということです。
私は5センチほどの小松菜を出荷しますが、さすがにこのサイズをざく切りにしたり、ボイルして食べる人はいないと思います。根っこごと軽く焦げ目がつくまでソテーするなど、そのままの形を生かすことによって5センチの小松菜に価値が出てくるのです。
販売対象を誰にするかによって商品も変わり、売り方も考えなければなりません。今までの固定観念を捨てることによって、売り上げのアップにつながり農業も面白くなっていくと思います。

おまけの虎の巻

商品にする前に、毒性について調べよう

基本的に食べられる部分には価値がつくということです。間引き菜、わき芽、花、種など。エディブルフラワーがはやっていますので、野菜の花も人気があります。ただし、毒性があるものもありますので、食べる前にはしっかりと調べることが大切です。

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