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食育の定義とは? 重要性や学べる5つのこと、実際の活動について

食育の定義とは? 重要性や学べる5つのこと、実際の活動について

教育現場などで注目されている「食育」。学校の授業の一環として取り入れられ、食育をテーマにした活動も活発です。では、食育とはどのような取り組みを指すのでしょう。なぜ、注目されているのでしょうか。実際に教育現場で行われている食育活動についても紹介します。

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食育ってなに?

そもそも、食育とはなんでしょう。

食育とは

食育基本法においては、「食育とは生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり、さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できる人間を育てるもの」と定義されています。

食育基本法は、2005年に制定された食育の基本的な理念などを示した法律です。
その目的は「現在及び生涯にわたる健康で文化的な国民の生活と豊かで活力のある社会の実現に寄与する」ことです。

また、食育基本法に基づき、食育の推進に関する基本的な方針や目標について食育推進基本計画が定められています。2016年から2020年までの5年間は「第3次食育推進基本計画」に基づき、各地でさまざまな取り組みが行われています。

なぜ食育が大切なの?

食育が大切とされる背景には、食を取り巻くさまざまな課題があげられます。
たとえば、子どもたちの食。
文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(2019年度)によると「朝食を毎日食べていますか?」という質問に「あまりしていない」、「全くしていない」と回答した小学6年生は4.6%。中学3年生は6.9%でした。そして「毎日食べている」子どものほうが学力調査の平均正答率が高い傾向がみられました。

朝食は一日のパワーの源。欠食することで頭や体が十分に動かなかったり、栄養のバランスが崩れてしまったりする心配があります。また一回に食べる量が増え、肥満や生活習慣病の原因にもなりかねません。子どものうちから朝食を毎日食べることは、基本的な生活習慣を身につけ、健康的な食生活の基礎となるのです。
食育とはこういった食をめぐる課題を解決するために「食べる力」を育むこと。それは生き生きと暮らすための「生きる力」を育むことにもつながります。

食育を通じて学べる5つのポイント

では、食育を実践することでどのようなことが身につくのでしょうか。5つのポイントにまとめました。

1. 食への感謝の気持ちが生まれる

食生活は自然の恩恵の上に成り立っていることを学ぶことで、「いただきます」「ごちそうさま」に込められている食への感謝の気持ちを学べます。
また、農林漁業体験や食品工場、市場などの見学も重要な学びです。毎日の食生活は生産者をはじめ、たくさんの人の苦労や努力によって支えられて成り立っていることを教えてくれます。そういった体験を重ねて、食べ物を残さずに食べたり、無駄なく調理をすることの大切さに気づくのです。

2. 栄養のバランスを学べる

献立を組み立て食材を選びながら食事を作ることで、栄養のバランスを考えるきっかけになります。理想の献立は主食、主菜、副菜の組み合わせ。これらを意識することで栄養のバランスのとれた食事を学ぶことができます。
主食……ごはん、パン、麺など穀類を材料とする料理。エネルギーの源である炭水化物の供給源です。
主菜……肉、魚、卵、大豆などを材料とする料理。健康な体作りにかかせないタンパク質が豊富に含まれています。
副菜……野菜、いも、豆類(大豆をのぞく)、きのこ、海藻などを主な材料とする料理。体の調子を整える各種ビタミンやミネラル、食物繊維などが含まれています。

3. 食を通して社会性を育む

誰かと一緒に食事を作ったり、食べたりすることで、社会性を身につけることができます。手洗い、配膳の仕方、食器の並べ方、片付け、食事中の姿勢やマナーなどを身につけたり、家族や友人と会話をしながら楽しく食べることで人間関係を形成していく力を身につけたり。食を通じたコミュニケーションによってさまざまな学びがあります。

4. 食の安全について学ぶ

食育基本法が成立した背景には、2000年代初めに食品の安全を揺るがす問題が次々と発生したこともありました。国内でのBSE(牛海綿状脳症)の発生、輸入野菜の残留農薬問題、国内における無登録農薬の使用など。子どものときから、食育を通してこういった問題を考える機会を設けることで、食品の安全な選び方などをしっかりと学ぶことができます。

5. 伝統的な食文化を継承する

地域に根ざした伝統的な食文化を受け継ぐ取り組みとして、学校給食の献立に郷土料理や行事食などが取り入れられています。その土地の農作物を使って独自の料理を食べ継ぐことは、食だけではなく子どもたちが地域の自然や文化、産業などへの理解を深め、郷土愛を深めることにも役立ちます。

各地で活発な食育活動

学校や幼稚園、保育所の食育では、子どもたちが食に関する正しい知識を身につけ、健康的な食生活の基礎を作る取り組みが行われています。各地の取り組みの一部を紹介しましょう。

子ども専用料理教室「キッチン・ラボ」
学校法人睦美学園 睦美幼稚園(京都府)

睦美幼稚園では園児自身が料理をする子ども専用料理教室「キッチン・ラボ」を2006年に開設。園の正式なカリキュラムとして全クラス月に1回、年46回(2017年実績)実施しています。「料理ができた」という喜びを繰り返し体験することで、園児の食への関心を高め、好き嫌いがなくなっているそうです。さらに自信がめばえ、心の成長にもつながっています。

「ぼくの畑・わたしの畑」
保育所型認定こども園 つるみね保育園(鹿児島県)

つるみね保育園では、豊かな自然環境を生かして、園庭の一部に作った畑で生産から消費までの食の循環を意識した食育活動を行っています。草むしりや害虫駆除の大変さや、酷暑や台風などで計画通りに作業できないなどの困難を乗り越えながら収穫した野菜を調理して食べる楽しさを通して、食に関する興味や知識を身につけています。

地域全体で学校給食の地産地消を応援
愛媛県教育委員会

愛媛県教育委員会では、今治市、西条市を中心とした東予地区5市町で学校給食を活用し、地産地消の推進と、伝統的食文化の継承に取り組んでいます。地産地消では、各市町の地場産物を取り入れたオリジナル丼やかき揚げを給食の新メニューとして提供するなどしたことで、学校給食の地場産物の活用率の向上に貢献しました。
また、伝統的食文化の継承として、地場産物を使った郷土料理を給食に取り入れました。さらに給食で提供した郷土料理を家庭でも簡単にできるようにアレンジ。親子で調理する親子料理教室を開催しました。

生涯にわたって必要な食育

食育と聞くと、子どもへの取り組みと考えがちです。しかし、食は生涯にわたって続く生きる基本となる営みです。「栄養のバランスの取れた食生活」や「食に関する知識を習得する」ことなどの食育は、どの世代にも必要な「食べる力」です。
世界でも有数の長寿国といわれる日本。健康寿命を伸ばすために、食育の重要性はこれからますます高まっていくはずです。それぞれの年代に合わせた食育を実践し、食を通して生活の質を高めていきましょう。

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