農業は成長産業! 農業ファンドの活用で可能性が広がる農業ビジネスの未来

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農業は成長産業! 農業ファンドの活用で可能性が広がる農業ビジネスの未来

農業は成長産業! 農業ファンドの活用で可能性が広がる農業ビジネスの未来
最終更新日:2020年08月13日

農業を成長産業と見込み、経営を拡大したいと考えたとき、資金調達の方法として融資のほかに検討の可能性があるのが「農業ファンド」の活用だ。ファンドから出資を受けて事業資金を得ることが最大のメリットだが、その他にどんな効果があるのだろうか。「農業法人投資育成制度」に基づいて農林水産省の許認可を受けた農業ファンドの活用の実態について取材した。

借金ではない。「出資を受ける」とはどういうことか

農業は当然ながら重要な産業であり、経済活動だ。
農家はより利益率を上げるために農地を広げたり、新しい作物を試したり、6次産業化に取り組んだりする。また、他業種の企業が成長を見込んで農業分野に新規参入することもあるだろう。
そこで設備の充実などが必要になるが、設備投資にはお金がかかる。自己資金がない場合、まずは金融機関からの融資を検討するだろう。しかし融資とはすなわち借金。利息もあるし、毎月の返済義務もある。利益が出るのに時間がかかることも多い農業では、月々の返済は負担だ。
そこで検討したいのが「出資を受ける」という選択肢。
「出資を受ける」を株式会社の例で説明すると、株式を発行して投資家に売ることで資金を得る、ということになろうか。投資ファンドなどから出資を受けて起業したベンチャー企業が、出資金を元手にビジネスを展開していく、といったイメージを持つ人も多いだろう。

「農業ファンド」とは

画像はイメージです

実は、農業分野では特別な制度に基づいた「農業ファンド」があり、農林水産省の許認可を受けた22のファンドが運用されている(2020年7月現在)。
この制度は「農業法人投資育成制度」といい、「農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法(農業円滑化法)」に基づくもの。2013年に閣議決定された「今後10年間で法人経営体数5万法人」(2010年比約4倍)の目標の実現に向け、農業法人に成長のための資金が供給されやすいように、従前の制度が改善された。法改正により「投資事業有限責任組合」が農業法人に出資できるようになったのだ。

「投資事業有限責任組合」とは、複数の企業が資金を出し合って作った投資のための組合のこと。「有限責任」とは、たとえその組合が損失を出しても組合員は出資金を失う以上の負担は負わないことを指している。過剰な負担がないので、組合員が出資しやすい仕組みだ。
農業法人投資育成制度によって農林水産省から許認可を受けた農業ファンドは「投資育成会社」または「投資育成組合」と呼ばれ、金融機関などが有限責任の構成員となっていることが多い。
一方でファンドの運営に強い会社が「無限責任組合員(GP)」となって運用の際の中心的な役割を担う。

こうした制度による農業生産法人等への出資の現状はどうなっているのだろうか。
今回は、信用組合共同農業未来投資事業有限責任組合(以下「農業未来ファンド」)を取材した。

農業未来ファンドとは

農業未来ファンドはフューチャーベンチャーキャピタル株式会社(以下「FVC」)、恒信サービス株式会社(以下「恒信サービス」)をGPとし、第一勧業信用組合、北央信用組合、秋田県信用組合、いわき信用組合、あかぎ信用組合、君津信用組合、糸魚川信用組合、都留信用組合、笠岡信用組合、そして株式会社日本政策金融公庫の共同出資によって構成され、2017年3月8日から事業を開始した。
有限責任の組合員である地方の信用組合は、地域の中小企業への資金提供などを行ってきた地元密着型の金融機関だ。

農業未来ファンド設立時の説明会の様子(画像提供:信用組合共同農業未来投資事業有限責任組合)

GPの一つであるFVCはベンチャー企業への出資で利益を上げる「ベンチャーキャピタル」だが、これまで地方創生関連ベンチャーへの支援に力を入れてきたという背景がある。農業未来ファンド担当の石坂颯都(いしざか・りゅうと)さんは、「投資の回収の実現可能性は考えつつ、側面から長期間かけてソフトに支援していく。こういう地域活性化の事業の手伝いをすること自体が価値」と、このファンドの社会的意義を強調する。

「農家はこれまでJAとの結びつきが強く、地元の信組との付き合いは少なかった」と語るのは、もう一つの農業未来ファンドのGPである恒信サービス顧問の山田悦弘(やまだ・よしひろ)さん。農業未来ファンドの発足時からファンドに携わってきた。「信組は地元の企業との結びつきは強く、このファンドを通じて地元企業が新たに農業分野に参入するのを後押しできる」と、地方の活性化のための活用に意欲を見せる。

利益を上げるための側面的支援とは

現在の出資先は、全部で9件。純国産の無農薬バナナを生産する岡山県の株式会社プランター、独自の地温制御システムで葉物野菜を生産する福島県の浜の野菜株式会社など、他業種から農業への新規参入企業もある。

経営面の支援

ファンドの出資を受けるには、まずは事業計画書の作成からだ。当初の赤字や台風などの自然災害による損失も織り込んだ計画を立てる。出資を受けるには経営の透明性が求められるから当然のことだが、通常よりもシビアな計画だ。また、過去の決算書などの提出も求められる。
出資が実行された後は、ファンドは株主として経営の一角を担う(農業ファンドが取得する株式は全株式の50%未満で、議決権のない種類株式が原則)。事業計画の進捗(しんちょく)は、四半期に一度、出資している9つの信用組合と日本政策金融公庫が集まる「経営支援委員会」で確認し共有。もちろん計画通りにいかないことも多いが、関係者が多いからこそ多様な視点で状況を分析し、経営を健全化させていく。
一方、自然災害などで予想を超える損失が出た場合は、国や自治体の補助金の活用なども含めたあらゆる策を提案し、事業存続を図る。農業未来ファンドの場合、出資先がそうした制度に疎い場合は積極的にアドバイスを行うとのこと。当事者だけでは気づかなかった打開策を見つけるための支援を行うのもファンドの役割と言えるかもしれない。

信組ならではのネットワークで販路拡大

農業未来ファンドが出資する秋田県の株式会社大潟村あきたこまち生産者協会は、この出資を受けて新商品の「大地の甘酒」の販路拡大を図り、全国展開する人気商品に成長させた。

大地の甘酒(画像提供:信用組合共同農業未来投資事業有限責任組合)

ここで力を発揮したのが、東京を本拠地とする信組である第一勧業信用組合(以下「勧信」)の存在だ。
勧信は「地産都消」を掲げて、地方の優れた商品の販路を都内で拡大するためのサポートを行ってきた。そのノウハウをこのファンドで最大限に生かし、主に取引先の紹介や商談会の開催などを通じて、地方の中小企業と都内のスーパーなどとの橋渡しをしている。
また、ビジネスマッチングの仕組みなどを通じて、経営改善のために出資先と専門家をつなげることも可能だ。特に経営に関する人材の人脈が豊富な信組ならではと言えるだろう。

商談会の様子(画像提供:信用組合共同農業未来投資事業有限責任組合)

出資を受けるには

もちろん、出資を受けるための条件がある。投資事業有限責任組合の投資対象となる株式会社(特例有限会社<※>を含む)であることが必要だ。その他にも、財務体質が健全であることや、意欲、成長性といったところも出資の際の審査の対象になる。
経営体としての健全さと共に、キラリと光るサービスとなるためのアイデアや、事業計画を綿密に立て実行していく粘り強さ、積極的な協力体制をファンドと一緒に作り上げていこうという姿勢も必要であるようだ。
出資の相談については、各ファンドが受け付けている。

※ 特例有限会社は2006年の会社法施行以降は設立が不可能となった。

出資を受けることのメリット

農林水産省のホームページでの説明でも、農業ファンドから出資を得ることのメリットとして「資金使途に制約がない(ただし農業経営のために使う場合に限る)」「自己資本の増強につながる」「対外信用力の向上により融資が受けやすくなる」の3つが挙げられている。
資金面だけでなく、外部の力をうまく活用する機会が得られるのが農業ファンドからの出資のメリットと言えるだろう。
農業経営者としてさらに飛躍したい、新しい農業ビジネスに挑戦したい、という人にとって、新たな選択肢の一つとなるかもしれない。

参考:農業法人投資育成制度について(農林水産省)

取材協力:信用組合共同農業未来投資事業有限責任組合

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