日向夏とは?
日向夏は、「ひゅうがなつ」と読む柑橘です。見た目はレモンのようにやや淡い黄色で、温州みかんよりも大きく、外皮はなめらかな手ざわりをしています。中の果肉は、ふわふわの白いわたに包まれており、果肉だけを食べると酸っぱいのですが、そのわたの部分と一緒に食べるとさわやかな甘みを感じることができるのが特徴です。地域によってニューサマーオレンジ、小夏などの呼び名もあり、学名のcitrus tamurana(シトラス・タムラナ)には、日向夏を世に紹介した功労者の田村利親(たむら・としちか)さんの名前が冠されています。
主な産地
日向夏は、その名前のとおり日向国(ひゅうがのくに)と呼ばれた宮崎県の特産で、全国の生産量の半分以上を占めています。発見されたのも宮崎県で、江戸時代末期に旧宮崎郡(現在の宮崎市)の曽井地区で偶然発見され、タチバナという柑橘がルーツと言われています。明治時代の1887年に「日向夏」と命名され、元々は酸味や苦みが強く、種が多いものでしたが、工夫や改良を重ね、現在の日向夏となりました。最近では、種なしの日向夏も作られています。
旬の時期
日向夏は、ハウス栽培と露地栽培で作られています。12月中旬ごろからハウス栽培の収穫が始まり、3月下旬ごろまで収穫・出荷されます。露地栽培は3月上旬~5月下旬が時期となります。追熟しないので、店頭に並んでいるものが食べごろです。
カロリーの目安
可食部100gあたり45kcalで、温州みかんと同程度です。
可食部は白いわたの部分と薄皮も含みます。
日向夏に含まれる主な栄養
ビタミンC
ビタミンCは抗酸化ビタミンとも呼ばれ、皮膚や血管の老化を防ぎ免疫力をアップさせる働きがあります。コラーゲンの合成に働くので、筋肉や骨を強くし、肌にハリを持たせてくれます。鉄の吸収を高めたり、メラニン色素の沈着防止や、ストレスを和らげる効果などの生理作用も持っています。
クエン酸
柑橘類に多く含まれ、さわやかな酸味を持ちます。カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラルの吸収を助ける働きがあります。
食物繊維(ペクチン)
ペクチンは水溶性食物繊維の一種で、果物に多く含まれています。中でも皮の部分に多いため、白いわたと果肉を包む薄皮も一緒に食べる日向夏は、他の柑橘類と比べて多くの食物繊維をとることができます。ペクチンには、善玉菌を増やして腸内環境を改善したり、腸内の老廃物と結びつき、便のかさを増やしてぜん動運動を促進し、体外に排出するなどの働きがあります。
日向夏の切り方・むき方
1. 包丁で黄色い皮をむく 2. 芯を避けるように、削ぐように切り落とす |
1. 包丁で皮をむく
包丁を使って、リンゴの皮をむくようにくるくると回しながら、白いわたを残してむいていきます。
2. 芯を避けるように、削ぐように切り落とす
芯を避けながら、中心から削ぐように切っていきます。種は芯に近い部分に多いので、このように切ると種を中心に残すことができます。
日向夏のおいしさの秘密は、果皮の下にあるアルベドというふかふかの「白いわた」にあります。試しにこのわただけ食べてみると、ほんのりとした甘みを感じます。そしてさわやかな酸味の果肉と一緒に食べると、酸味はマイルドになり、わたのふわふわ感と相まって、日向夏ならではの風味を楽しむことができるのです。
日向夏のおいしい食べ方・レシピ
そのまま食べる+砂糖と味わう
そのまま食べてももちろんおいしいですが、産地である宮崎流の食べ方も試してみてはいかがでしょうか。切って並べた日向夏に、砂糖をたっぷりとまぶして食べてみてください。酸味が苦手な方でもとても食べやすくなります。
ジュース
さわやかな風味の日向夏は、ジュースにしてもおいしくいただけます。手しぼりやコールドプレスジュースにする場合は、酸味があるのでハチミツなどを混ぜると飲みやすくなります。スムージーなら白いわたも一緒にミキサーにかけると食物繊維をしっかりとることができるのでおすすめです。
日向夏のスムージー
【材料(作りやすい分量)】
・日向夏…1個
・リンゴ…1/2個
・冷凍マンゴー…ひとつかみ
・水菜…40g
・水…50g
日向夏は外皮をむき、他の材料となめらかになるまでミキサーで撹拌(かくはん)します。種が入ると苦みが出るのでご注意を。
サングリア
実はサングリアを自宅などで楽しむ場合、法律により作り置きはできません。漬けておくことができないので、提供する直前にその都度作って、飲み切るようにしましょう。

柑橘のサングリア
【材料(作りやすい分量)】
・お好みのワイン(よく冷やしておく)…1本
・日向夏…2個
・はちみつ…大さじ4
・シナモンスティック…1本
【作り方】
1. 日向夏はスポンジなどで表面をよく洗い、8~10等分にカット。種はとり除きます。
2. 少量のワインではちみつを溶かしておき、他の材料と一緒に瓶などでなじませます。
ジャム
日向夏のきれいなレモンイエローをいかしたジャムもおすすめです。皮も果肉もまるごと使います。
【材料(作りやすい分量)】
・日向夏…5~6個
・砂糖…日向夏の重さの50%程度
・水…適量
【作り方】
1. 日向夏は外皮、薄皮、果肉に分け、皮はどちらも細く刻みます。
2. 外皮はよくもみ洗いし、1時間ほど水にさらしておきます。
3. 鍋に外皮、薄皮とかぶるくらいの水を入れて中火にかけ、軟らかくなったら半量の砂糖と果肉を入れて煮詰めます。
4. 残りの砂糖を入れ、軽くとろみがついたら火を止めて、煮沸消毒した保存瓶に詰めます。
ドレッシング
日向夏の酸味をいかしたドレッシングは、サラダはもちろんカルパッチョなどにもよく合います。酸味が苦手な方はハチミツを追加しても。
【材料(作りやすい分量)】
・日向夏…2個
・エクストラバージンオリーブオイル…大さじ3
・塩…小さじ1/2
・こしょう…少々
【作り方】
1. 日向夏は外皮をむき、薄皮と果肉の間にナイフを入れるようにして果肉を取り出します。
この時、果汁を受けられるよう下にボウルなどを置いて作業します。取り出した果肉はサラダなどに使いましょう。
2. 1で使ったボウルに、薄皮に残った果汁をしぼり、他の材料を入れてよく混ぜ合わせます。
日向夏ピール
透明感のあるレモンイエローと、日向夏のさわやかなほろ苦さが絶妙な大人のおやつです。
【材料(作りやすい分量)】
・日向夏の外皮(厚めにむいておく)…100g
・グラニュー糖…100g
・水…100ml
【作り方】
1. 日向夏の皮をよく洗い、1センチほどの縦切りにします。
2. 鍋に皮とかぶるくらいの水(分量外)を入れて火にかけ、沸騰したら3分ほど煮てザルにあけます。この工程を3回繰り返します。
3. 鍋にグラニュー糖と水を入れて火にかけ、2を入れて全体にとろみがつきツヤが出るくらいに煮詰めます。
4. 天板にオーブンシートを敷いて3を並べ、100℃のオーブンで20~30分加熱して乾燥させます。粗熱がとれたらグラニュー糖(分量外)をまぶして完成です。
時間はかかりますが、自然乾燥でもつくることができます。
日向夏を味わうなら、ぜひ“わた”まで! おいしく栄養を摂取
見た目も味もさわやかな日向夏、その持ち味を最大限にいかすには、「白いわたと果肉を一緒に食べること」がポイントです。おいしく食べながら食物繊維もしっかりとることができますので、ぜひお試しください。