重さあたり単価が世界一高いスパイス、サフランとは
サフランはなぜ高い
1グラムの相場は約1000円、1キロ当たりの価格は100万円以上。高価なスパイス、サフランはアヤメ科の多年草でめしべを乾燥させたものです。1グラムのめしべを得るには150本以上の花が必要とされ、摘み取りは全て手作業でしかできないため人件費が非常にかかるのです。栽培は比較的簡単なのですが、収益ベースで考えるとコスパが悪く、割に合わないのが現実です。タケイファームが栽培しているサフランは1グラム1800円。乾燥する際に独自のテクニックを使いクオリティーの高いサフランに仕上げ、シェフ達からは、色も出て香りもすごいと喜んでもらっています。

サフランの花
日本におけるサフランとは
サフランの原産地は地中海東部沿岸といわれています。パエリアの文化があるスペインが有名ですが、生産量世界一はイランです。日本では江戸時代に薬品として乾燥させためしべが伝わりました。栽培が始まったのは1886(明治19)年で、その後、1903(明治36)年に現在の日本のサフラン生産量のシェア8割を占める大分県竹田(たけた)市に伝わりました。知り合いの竹田市農政課職員に聞いたところ、サフラン生産のピークは1984(昭和59)年から1985年、生産していたJA組合員は350戸、年間350キロの生産量がありましたが、現在では30戸、生産量も7から8キロまでに激減しているそうです。その一番大きな要因は生産者の高齢化です。私が訪問した生産者も80歳を超え、「いつまでできるかねぇ」と話していました。ちなみに2019年度のタケイファームの生産量は50グラムほどです。

竹田の生産者、地道な手作業
サフランの特徴
もともとは染料、香料、薬用として栽培されてきたサフラン。今ではスパイスとして知られていますが、サフランティーやサフランオイル、花びらをお風呂に入れたサフラン風呂などの使い方もあります。
私が昨年竹田市の生産者を訪れた時にはサフランティーをいただきました。お湯の中にめしべを数本入れただけの黄色いお湯ですが、風邪の初期症状に効果があるとのことで、地元の人達は子供の頃から風邪気味になると飲んでいたそうです。
古くから薬用として使われてきたサフランですが、副作用が出る場合もありますので、健康に不安のある人は専門家に相談したうえで使った方がよいと思います。
シェフがサフランに求めるもの
私が野菜を届けているシェフに、サフランについてどう考えているか聞いてみました。真っ先に出た言葉は「料理、デザート、ソース、本気で使おうと思えばたくさんの利用価値がある」でした。前菜からデザートまでサフランを使ったフルコースも作れるようです。サフランに一番求めるのは香りで、魚ベースのだしの中に入れてリッチな香りを楽しむのが最高とのこと。使用するにあたって重視するのは価格。プロも世界一高価と言われているサフランを使うことには慎重なようです。
最高においしいリッチなサフランリゾットの作り方
使うお米も1カップなので食べすぎることもなく、生米から作るので時間もかからない。
ささっと作れる黄金色に輝くリゾットを作ってみましょう。

黄金色に輝くサフランリゾット
【材料(2人分)】
・サフラン…一つまみ(お湯50㏄に入れて色を出しておく)
・生米…1カップ(洗わずに使う)
・タマネギ…1/4個(みじん切りにする)
・ブイヨン…1リットル(温めておく。おすすめはチキンコンソメ)
・無塩バター…20g+10g
・パルミジャーノチーズ…50g(すりおろす)、または粉チーズ
・塩…少々
- フライパンにバター20gとタマネギを入れて焦がさないように透明になるまで炒める。
- 生米を加え、軽く炒め、サフランと色の出た戻し汁2/3を入れる。残りは仕上げに使う。
- ブイヨンを米がつかるくらいまで入れて煮詰め、煮詰まってきたらブイヨンを少量足す。焦がさないように注意。ブイヨンの味が濃く塩気が強い場合は水を加える。
- 3を数回繰り返し、米がアルデンテになるまで煮詰め、塩で味を調える。目安は15分。
- 仕上げに残しておいたサフランで香りを調整し、バター10gとパルミジャーノチーズを加え混ぜて完成。

お湯で戻すことで黄色に変化
水もいらない土もいらないサフランの育て方
リッチなサフランリゾットを、自分で育てたサフランで作ってみませんか?
サフラン栽培には露地栽培と室内栽培の2通りの方法があります。家庭で栽培するなら室内栽培がおすすめです。これによって、雨風を防ぎ汚れることもなく品質のよいサフランができます。
- 9月中旬、サフランの球根をうす暗く風通しの良い所において放置します(夏の間、球根は休眠中)。タケイファームでは物置の窓を段ボールでふさぎ、光が差し込まないようにして少し風が入るようにしてあります。
順調に育つと1つの球根から複数の芽が出てきます。 - 10月下旬、開花が始まります。朝と日中の気温差が大きくなると開花が進みます。
開花の条件は、温度と湿度のバランス。雨が降ると花は咲き始め、温度が高くなると咲くのをやめてしまいます。 - 花は完全に開かないうちに摘み取り、めしべを取り出します。めしべは花を指でたたくと表に出てきて取りやすくなります(しっぺをするイメージ)。
完全に開いてしまうと黄色い花粉が付着してクオリティーが落ちてしまいます。 - 摘んだめしべはすぐに乾燥させることが重要です。タケイファームでは摘んで30分以内にフード乾燥機に入れるのですが、この時に独自のテクニックを使っていますのでチリチリしていない真っすぐなサフランとなります。竹田市の生産者の中にはこたつで乾燥させる人もいます。

放置されているタケイファームのサフラン

完全に開かない状態で摘み取った花
球根は増やすことができるのでぜひチャレンジ!
せっかく育てたサフラン、1年で終わらせるのはもったいない! 次の年も楽しむために、球根を植え付けて増やす方法もお伝えします。
- 開花終了後、11月下旬に球根を土に植え付けます。植え付けは、畑でもプランターでも可能です。
肥料は使いません。1つの球根には花を摘み取った後の芽が数本残っていますが、その中の太くて立派なものを2本残して植え付けます。
2本残すことによって、翌年掘り上げる際、球根は2つに分裂します。3本残すと3つに分裂しますが、それぞれの球根自体が小さくなってしまいますので、2本残すことがベストです。 - 4月下旬、葉が枯れ始め光合成が終了している球根を掘り上げ、日陰で乾燥させます。夏期は休眠していますので保管しておき、9月になったらうす暗く風通しの良い所におきます。
この栽培を繰り返すことによって現在の球根の数を増やすことができます。

摘み取りが終了し植え付けた球根

2つに分裂した球根
球根は7月から8月、インターネットやホームセンターで購入することができます。
タケイファームでは、明治から継承されている竹田の球根を使っており、球根に栽培マニュアルを付けたセットを数量限定で販売しています。このセットで実際に栽培した人は、見事にめしべを摘み取りパエリアを作りました。

自ら栽培したサフランで作ったパエリア
まとめ
私のサフラン栽培は女優の杉田かおるさんに勧められたことがきっかけです。杉田さんが九州で農業をしていた時、生産者が激減している竹田市のサフランのことを知り、明治から受け継がれてきたものを継承していくべきと考え「武井さん、サフランを栽培してみませんか?」と言われたのです。実際に栽培してみると面白さ反面、コスパの悪さに気づきましたが、今は、微力ながら竹田のサフランの普及の力になれればと思っています。
生産量が激減している竹田のサフランのめしべは、以下で購入可能です。
・JAおおいた豊肥事業部 園芸課 0974-63-1224
・(一社)農村商社わかば 0974-66-3553
・国産サフラン商い処 八世屋(hasseya)