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【プロに聞く】秋どりキャベツの栽培方法とおすすめ品種は?

連載企画:ブリーダー直伝!売上アップの栽培方法

【プロに聞く】秋どりキャベツの栽培方法とおすすめ品種は?

秋どりキャベツの栽培方法のポイントを、野菜のプロであるタキイ種苗のブリーダーが教えます。直売所向き、飲食店向きといった販路ごとのおすすめ品種情報も。家庭菜園ファンも必読のテクニック集です。

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キャベツの土作り

高畝にして排水をよくする

キャベツの栽培には排水性、通気性が必要になるため、深耕をして畝を立てます。元肥は目標とする収穫時期によって、施肥量を変えます。年内どりでは全窒素成分量の3分の2(10平方メートル当たり125グラム)、冬・春どりでは2分の1(10平方メートル当たり100グラム)が目安になります。リンやカリも同様です。
根こぶ病が発生する畑では、土壌殺菌剤を混和して防除に努めます。近年はゲリラ豪雨や長雨によって土壌中の酸素が不足することがあるため、あらかじめ酸素供給剤「オキソパワー5」を混和しておくことも有効です。

通気性が心配な場合は酸素供給剤「オキソパワー5」を混和しておくことで土壌中の酸素不足を防ぐことができる

また、前作に緑肥を作付けすることで、土壌改良を行うことができます。5月に「緑肥用ソルゴー」をまいて、畝立ての1カ月前までに石灰窒素とともにすき込むことで、圃場(ほじょう)に有機物を投入することができます。冷涼地で夏秋どり栽培をする場合は、早春まきが可能なえん麦やらい麦を用います。

キャベツの播種

夏まきでは高温を避けるために、「タキイホワイトTWシリーズ」などの被覆資材を使って遮光を行う

発芽適温は15~20℃です。夏まきでは高温による発芽不良が生じる場合があります。育苗に白色トレイを使うとトレイ内部の地温上昇を軽減できます。また、播種(はしゅ)後1~2日は風通しのよい日陰や軒下などで発芽を促します。そのほかに「タキイホワイトTWシリーズ」など被覆資材を使った遮光を行えば、地温上昇による育苗リスクを軽減できます。逆に低温期の播種の場合は温床マットなどを使って地温を維持します。

キャベツの育苗

葉が厚く、ガッチリとした健全な均一苗の育苗を目指します。かん水を行う時間と量がポイントです。かん水量は夕方に表面が多少乾くくらいを目安にして、午前中から正午に行い、極端に乾かない限り午後のかん水は控えます。また、少なくとも定植1週間前には、外気にあてて順化(適応させること)をします。

キャベツの追肥

追肥は、定植後15日、30日を目安に行います。キャベツの栽培は初期生育が重要なため、その時期に肥料が切れて、生育が緩慢にならないように気をつけます。2条栽培であれば、1回目に畝の床面中央に肥料を施してから中耕し、株元に土を寄せます。2回目は通路に肥料を施し、中耕と土寄せを行います。どちらのタイミングも肥料が混和された土を、根の近くに土寄せするように意識しましょう。また、中耕によって、除草や土の通気性改善も期待できます。生育日数の長い冬どり作型については、葉色や外葉の張り方を見ながら1~2回追加し、肥料切れを起こさないよう生育を進めます。

キャベツの病害対策

病害対策では、黒腐病に注意が必要です。葉の縁からV字形に枯れてくる症状が出ていれば、黒腐病です。雨がたくさん降ったときや強風にあったときに、発生しやすくなります。黒腐病は細菌による病害です。無機銅系あるいは抗生物質系の農薬を散布し予防します。

キャベツの猛暑・しおれ対策

猛暑日が当たり前の日本の夏。秋どりのキャベツでは、暑い時期に定植するため、定植後にしおれてしまうことがあります。さまざまな野菜に使える資材「タキイ トレエース」を用いることで、しおれ被害が軽減され、初期生育を順調に進めることができます。定植1~2日前にかん注(※)し、定植1週間後以降に葉面散布をします。しおれ軽減だけでなく、鮮度保持や、霜害対策にも有効です。

※ 希釈した薬剤をジョウロなどで土に注いでしみこませること。

天然に存在する糖質トレハロースの保水効果で、蒸散を抑制させるとともに、乾燥後の植物細胞やタンパク質の状態を安定させる

【直売所向け】ブリーダーのおすすめ秋どりキャベツ品種

暑さに強くサラダ向き

抜群の耐暑性をもつ「初秋」

「初秋(しょしゅう)」は抜群の耐暑性があり、秋どりキャベツでは最も早く収穫できる極早生(ごくわせ)種です。この品種の特長は何といっても食味のよさで、非常にやわらかく、サラダにおすすめです。

甘~い定番キャベツ

糖度が高く、冬場のおいしいキャベツ「彩音」

糖度が高く、冬場のおいしいキャベツの定番は「彩音(あやね)」です。耐寒性・低温結球性が強く、玉の肥大にすぐれます。吸肥力が強いため、追肥主体の管理を心掛けてください。

ジューシーで色鮮やか

ジューシーな食感が特長、鮮緑色の「春波」

「春波(はるなみ)」はジューシーな食感を特長とする鮮緑色のキャベツです。肥大性、形状安定性ともによく、色つやにすぐれます。播種期の幅が広く、それぞれの収穫シーズンで楽しめます。

ボール形が目を引く早生種

丸いボール形が目を引く「レンヌ」

「レンヌ」は玉の肥大にすぐれる早生のグリーンボールです。玉は丸いボール形なので、直売所でもお客さまの目を引くでしょう。色つやがよく、肉質もやわらかくて食味良好なおすすめ品種です。

【飲食店向き】ブリーダーのおすすめ秋どりキャベツ品種

おしゃれなレッドキャベツはマリネに

赤キャベツの代表品種「ルビーボールSP」。おいしくて彩りもよく食卓の演出に

キャベツといえば緑色をイメージしますが、「ルビーボールSP」はポリフェノールの一種であるアントシアニンを蓄積することによって、赤紫色になるレッドキャベツです。鮮やかな色が食卓を彩ります。葉は少し厚いですが、オリーブオイルなどであえてマリネにすると食べやすく、おいしく食べられます。
「ルビーボールSP」は定植後約65日で収穫できる極早生種で、耐暑性があるため、夏まきでも作りやすい品種です。株張りがコンパクトなため、肥料切れに注意して栽培することで、よい玉が収穫できます。排水の悪い圃場では、根張りが悪くなることがあるので、高畝にし、中耕をこまめに行うことがポイントです。

栄養素たっぷり! ケールは青汁だけじゃない

「ハイクロップ」は生育旺盛で非結球のため栽培適期が長く、育てやすい

野菜の王様ともいわれるケールは、近年の健康志向で、その注目度が高まってきています。ケールの仲間である「ハイクロップ」はビタミンやミネラル、食物繊維などを多く含む品種で、青汁はもちろん、肉と一緒に炒め物などにするととてもおいしく食べられます。

青汁としても、加熱料理にしてもおいしい

耐暑性、耐寒性にすぐれるため、環境を選ばず栽培することができます。外葉が30センチ程度になったら収穫のタイミングで、下の葉から収穫します。
長期間収穫するためには、定期的に追肥を行って、草勢を維持することがポイントです。

執筆:タキイ研究農場 戸丸 祐貴(とまる・ゆうき)

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