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【プロに聞く】ホウレンソウの栽培方法とおすすめ品種 発芽をそろえるポイントは?

連載企画:ブリーダー直伝!売上アップの栽培方法

【プロに聞く】ホウレンソウの栽培方法とおすすめ品種 発芽をそろえるポイントは?

これから栽培できるホウレンソウの育て方を、野菜のプロであるタキイ種苗のブリーダーが教えます。発芽をそろえるポイントや注意すべき病害虫、失敗しない寒締め栽培の方法とは……?

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排水・保水のよい土づくり

ホウレンソウは直根性が強いため、耕土が深く排水性と保水性のよい圃場(ほじょう)が適します。タネまきの1カ月前までに堆肥(たいひ)を施し、有機質に富んだフカフカの土づくりを心掛けましょう。ホウレンソウは過湿に弱い作物なので、水はけの悪い畑では高畝にし、排水のよい畑を準備しましょう。

ホウレンソウのタネまき~水管理~

発芽がきれいにそろうポイントは、かん水を行い適湿に土壌を管理すること

発芽をきれいにそろえることが良作のポイントです。そのため、発芽まで適湿に土壌を管理しましょう。圃場が過度に乾燥している場合はあらかじめかん水を行ってから整地します。
また、乾きムラが出ないようできるだけ凸凹のない播種(はしゅ)床をつくり、播種後は均一に覆土・鎮圧をします。播種後のかん水は表面に水が浮かない程度に十分行い、表面が乾くようであれば適宜かん水し、発芽まで適湿を保ちます。
高温期のかん水ポイントは、立枯(たちがれ)病防止のため発芽後、本葉4枚までかん水を控えます。

ホウレンソウのタネまき~温度管理~

低温期の栽培では、不織布のベタがけで地温の確保に努める

発芽をそろえるもうひとつのポイントは適切な温度管理です。最適発芽温度は20℃ですが、30℃を超えるようだと発芽不良を起こしてしまうので注意が必要です。逆に低すぎても発芽まで時間がかかり発芽ぞろいも悪くなります。高温期の播種には遮光資材の「タキイ涼感ホワイト」や「アイスマルチ」で地温を抑制し、低温期の播種には「テクテク」のような不織布のベタがけで地温を確保すれば発芽ぞろいが向上します。

ホウレンソウの適切な肥培管理

色ツヤのあるホウレンソウを収穫するためにも、適切な肥培管理を

見た目にもおいしい色つやのあるホウレンソウを収穫するために、適切な肥培管理で生育後半の肥切れを防ぎましょう。年内収穫の場合、10平方メートル当たり窒素成分で200グラム、生育期間の長い1~2月どりでは250グラムを目安に施します。
地力の低い圃場では、本葉4枚展開したころに10平方メートル当たり窒素成分で30グラム程度の速効性化成肥料を条間に追肥し、生育を順調に進めましょう。

ホウレンソウの収穫

ホウレンソウの適期収穫は25センチ前後です。収穫遅れになることが多いので、一度にタネをまかず、必要分だけ時期をずらしてまく「段まき」をすると安定して収穫ができます。

「福兵衛(ふくべえ)」(写真)「伸兵衛(しんべえ)」「タフスカイ」は多収性と作業性を両立したべと病抵抗性品種。3品種を組み合わせることで、周年栽培が可能になる

プロがお答え! 栽培Q&A

Q. ホウレンソウで注意すべき病害はありますか?

A. べと病はホウレンソウの最も重要な病害です。
病原菌は糸状(しじょう)菌(かび)で平均気温が8~18℃の、葉裏に水滴がつくような多湿条件下で最も発病しやすくなります。春および秋季のべと病被害の多い時期には抵抗性品種を使用することで予防してください。窒素過多や密植栽培は被害を助長するので注意が必要です。また、発生初期からの防除を徹底してください。風で胞子が拡散しますので発病した株は速やかに処分します。

【直売所向け】ブリーダーこれがおすすめ秋冬品種

「牛若丸」は株張りのよい秋冬どり多収種

ボリューム抜群の多収型

「牛若丸(うしわかまる)」は、安定して長期間出荷するための定番品種としておすすめです。大葉で軸がよく太るため、ボリューム抜群な多収型ホウレンソウです。草勢が強く栽培容易で、秋~初春まで幅広い時期での栽培が可能です。葉色が濃いため、お客さまの目を引きます。

土質を選ばないロングセラー

「オーライ」は生育が旺盛で、土質を選ばず幅広い作型に適応するため、とにかく栽培が容易なロングセラー品種です。葉が肉厚でやわらかいため、ベーコンとの炒め物やお浸しにしておいしくいただけます。

子どもも喜ぶ甘さ

「冬ごのみ」は食味を追求したおいしいホウレンソウです。一番の特長は、ホウレンソウ特有のアクがごく少なく、甘みが強いということです。野菜が苦手な子どもでもおいしく食べられます。葉に深い切れ込みが入り、直売所での差別化もできます。サラダや鍋にサッとくぐらせて食べるのがおすすめです。

栄養たっぷり冬どり品種

「弁天丸(べんてんまる)」は、ホウレンソウ唯一のファイトリッチ品種(機能性成分を多く含む品種)です。低温下の栽培で甘みを蓄積させるため冬どり栽培に最適です。また機能性成分ルテインが従来のホウレンソウより豊富で、葉色が濃くてりがあるため荷姿の美しさも目を引くポイントです。

「弁天丸」の常夜鍋。豚肉と合わせることで、脂溶性のルテインの吸収率がアップする

夏季栽培を安定させる3つのポイント

①遮光資材の活用

いかに地温を下げられるかが成功のカギです。ただし、遮光率が高い資材のかけっぱなしは軟弱徒長につながるので注意が必要です。

②適切な潅水管理

潅水をしないと株は大きく育ちません。しかし夏場の日中に潅水すると葉が焼けてしまいます。地面が乾いてきたら気温の低い朝方に潅水するようにしましょう。

③暑さに強い品種の利用

耐暑性にすぐれ高温期の夏~秋どりに適する「タフスカイ」。夏向けに改良されてきた品種を使いましょう。「タフスカイ」は暑さにも土壌病害にも強いため、夏場の栽培に最適です

失敗しない寒締め栽培

2~3週間、低温にさらす寒締め栽培。甘みがぐっと増したホウレンソウは格別です

10月中旬ごろにタネまきをし、年末までに草丈20センチまで生育を進めます。その後低温に2~3週間さらすと、根からの水分給水量が減少し、糖やルテインなどの体内成分量が上昇します。甘みがぐっと増したホウレンソウで差別化し売り上げアップにつなげてください。

夏場に向くホウレンソウ以外の葉物

コマツナ「菜々美」。高温期でもじっくり生育し、在圃性にすぐれる。葉はツヤのある長丸葉で荷姿も美しい

ホウレンソウは元々暑さに弱く、近年の酷暑で栽培がさらに難しくなってきています。コマツナは比較的暑さに強く、夏まきだと25日程度で収穫できるのが魅力です。「菜々美(ななみ)」は春~秋まで幅広くまける多収種で夏場に向く品種です。夏場は虫がつきやすいため、防虫ネットを活用し良品出荷を目指しましょう。

執筆:タキイ長沼研究農場 神田拓也(かんだ・たくや)

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