2000円で1食分のポトフセットはなぜ売れる?

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2000円で1食分のポトフセットはなぜ売れる?

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

2000円で1食分のポトフセットはなぜ売れる?
最終更新日:2020年08月26日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

マルシェや直売所で見かける「カレーセット」や「お鍋セット」などの詰め合わせ販売。この野菜セットの値段設定はどう考えるのが正解か? 消費者目線でお得感を演出するか、生産者目線で在庫の消費を目的とするか――。それで儲かる? 満足できる結果が得られる? 打ち出し方次第で野菜セットの価値を上げる方法を伝授します。

タケイファーム人気の「究極のポトフセット」とは

私がマルシェに出店していた頃、12月の最終出店日に「ポトフセット」と名付けた野菜の詰め合わせを販売していました。4人家族で食べられる1食分のポトフが作れる野菜セットで、このほかに豚の肩ロースやソーセージを買ってもらえば究極のポトフが完成するというものです。
実はこのポトフセットの野菜は毎年微妙に変わります。ポトフとはフランスの鍋料理で、大きめに切った野菜を肉と一緒に煮込んだもの。入れる野菜はレシピによって違います。

ある年のポトフセットの野菜はこんな感じです。
・ニンジン2本
・ジャガイモ2個
・ミニ大根1本
・カブ3個
・ネギ1本
・ブロッコリー1個
・サボイキャベツミニ1個

さらに、毎年変わらずここにレシピを付けます。
レシピには「味付けは塩のみ、勇気をもって塩だけで勝負してください」と記載してあります。もちろん、塩だけで十分おいしくなる野菜を入れている自信があります。

別の年の1食2000円のポトフセット

販売価格は2000円。この値段をどう思いますか? スーパーでそれぞれの野菜を個別に買ったら合計で700円くらいですが、高いか安いかを判断するのはお客さんです。この2000円という価格に満足してもらえれば決して高くはありません。もちろん、お客さんに満足してもらうための工夫は欠かせません。私がした工夫は3つあります。

  1. セットの中に普段売っていない高級感のある野菜を1つ入れる
  2. セットを入れる袋に高級感を出す
  3. 「味付けは塩だけで十分」と強調する

1. セットの中に普段売っていない高級感のある野菜を1つ入れる

先ほど紹介したセットの場合はサボイキャベツミニがこれに該当します。サボイキャベツは西洋野菜のキャベツの1種で別名チリメンキャベツと言い、スーパーで気軽に買えるキャベツではなく、百貨店でも置いてあるかどうか。大きさはこぶし大ほどのミニサイズですので「鍋に丸ごと入れてください」とぜいたく感をアピールします。これによって、お客さんが普段購入することのない野菜が入っている為、セット全体の価格感が底上げされます。

2. セットを入れる袋に高級感を出す

百貨店などで買い物をしてそこの紙袋を持って歩いていると、少し満足した気持ちになりませんか。2000円の詰め合わせセットなのですから、入れ物もそれなりのものを使わなければなりません。スーパーなどで使っているビニール袋ではいけません。私が選んだのは、黒いつや消しの高級感がある紙袋でした。「ポトフセット」を購入した人は、毎年、皆その黒い紙袋を持って帰っていくのです。

奥の黒い紙袋で高級感を演出

3. 「味付けは塩だけで十分」と強調する

「本当に塩だけで大丈夫?」と不安に思うお客さんがほとんどです。なぜなら、たいていのポトフのレシピはコショウなどの香辛料を入れるということになっているから。そこにあえて「塩だけ」と強調します。そう言われると、完成したシンプルな味付けのポトフのおいしさはどんなものだろう、と思わず期待してしまいませんか? 「高い気がしないでもないが、食べてみたい!」というワクワク感をかき立てるのです。

野菜と肉を煮込む。味付けは塩のみ

毎年12月の最終出店日にこのポトフセットの販売を始めてから、予約である程度埋まってしまうようになりました。一度食べた人は年に一度しか買えない、年に一度しか食べることのできないタケイファームの「ポトフセット」を楽しみにしてくれるようになったのです。

カレーでも鍋でもなくポトフにした理由

スーパーなどでよく見かける、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンが1袋にまとめて入った「カレーセット」。今日の夕飯にカレーを考えている人にとってはありがたい詰め合わせです。冬の寒い日、今夜は鍋にしようと足を運んだお客さんは、長ネギ、白菜、春菊などが入った「お鍋セット」を手に取るかもしれません。これらのセットを販売する側の目的はどこにあるのでしょうか。

・お客さんの目線に立った考え方。
カレーを作るために、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンをそれぞれ買ったら使いきれないが、セットであれば使い切ることができ、出費もおさえられます。

・野菜の在庫処分を目的とする考え方。
個別だと売れ残ってしまう野菜も、セットにすることで平均的に販売でき在庫を抱えるリスクを減らすことができます。

お客さんにとってはうれしいセットですので今後の顧客になるかもしれません。販売する側も売れ残りが軽減されるのであれば、両者にとってメリットがある販売方法だと思います。

しかし、ちょっと考えてみてください。このようなカレーセットを販売した場合、自分の納得できる利益が確保できますか?

あなたなら「カレーセット」1袋をいくらで販売しますか?
例えば、家族4人でカレーを食べるとして、ジャガイモ、タマネギ、ニンジンが入った「カレーセット」は400円くらいでしょうか。言いかえると400円だったらお客さんもお金を払うでしょう。
私が出店していたマルシェは、上質な肉料理を提供するレストランを併設しているお肉屋さんの中にありましたので、「しゃぶしゃぶ用の野菜の詰め合わせセット」や「すき焼き用の野菜の詰め合わせセット」も作ることができました。お肉屋さんで肉を買えば料理の材料がそろうので消費者にとっては便利なセットになります。しかし、私はそれらのセットを販売しませんでした。その理由は、お客さんが野菜の値段のイメージがしやすいからです。各家庭ですき焼きに使う野菜はだいたい決まっていますよね。しゃぶしゃぶもそうです。ファミリーレストランでもこれらのメニューはありますから、ある程度の人はそれらの料理に使う野菜を把握できているのです。

おいしそうな肉が販売されている店内

「カレーセット」のように、単品での野菜の価格を計算して、そのセットの販売価格を判断することになります。私の「ポトフセット」が2000円で売れ、予約まで入る最大の理由は「ポトフに使う野菜がよくわからない」からなのです。そのため、ポトフに使う野菜の価格帯がイメージしにくいのではないでしょうか。そして、普段はめったに出会わないサボイキャベツなど高級感のある野菜も入っていれば、2000円という価格にも満足してくれるのです。

肉を買ったイメージをディスプレィ

野菜の価値を高める農家の目線

直売所での販売を例に考えてみましょう。
直売所で野菜を選ぶお客さんの目線は、新鮮、おいしい、そして「安い」です。Aさんがジャガイモを1袋200円で販売しているとして、Bさんはいくらで販売するでしょうか。その答えはBさんも200円です。農家全体の雰囲気もありますし、その直売所のルールもあります。参加している農家の数が多ければ200円で販売されているジャガイモは多くなるわけですから、自分のジャガイモを選んでもらうために、シールやポップで差別化を図っているわけです。
もっと高い金額で販売したいという意気込みのある農家は、他とは違う野菜を作って販売を試みます。例えば、先ほどあがった「サボイキャベツ」を販売したとしましょう。私はレストランへ1個800円で販売していますが、直売所でその値段では厳しいでしょう。仮に1個500円で陳列したとします。普通のキャベツが200円で販売されていたら倍以上の値段です。この値段で売るには、価値を説明しなければなりません。対面販売では身振り手振りでトークを交えて販売できるかもしれませんが、直売所のポップの説明だけではハードルが高くなります。結果、売れ残り、その原因は値段が高いからと結論付ける人が多くいます。そして、確実に1個500円の価値があるサボイキャベツに200円の値付けをしてしまい、農家自らが野菜の価値を下げるパターンがよくあります。その野菜の価値をしっかり説明できなければ、お客さんは価格を下げても買いません。自分の作ったものに自信をもって適正な価格を付けて販売する心構えが大切なのです。
その適正な価格設定の工夫として有効なのが、今回紹介したセット販売の手法です。あなたの野菜の価値を最大限に発揮する野菜セットを開発してみてはいかがでしょうか。

マルシェ風景

おまけの虎の巻

皆さんが得意とする品目は何かしらあるはずです。その品目を中心に料理に合う詰め合わせセットを作って販売してみてはいかがでしょうか。ただし、そのセットに入る野菜を計算して販売価格を決めるのでは面白くありません。そこに粗利をしっかりのせた販売価格を付けてみませんか。例えば、ビーツを作っている人は「ボルシチセット」とかはいかがでしょうか。100人中100人が必要とするセットでなくてよいのです。ビーツが好きなお客さんのためでもありますが、他の農家との差別化を図ることが目的でもありますので。

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