はじめまして。ライターの少年Bです。2012年にブドウの魅力に取りつかれて以来、毎年100房以上のブドウを食べ、いきおいあまってブドウの同人誌も作ってしまうほどのブドウマニアです。今回はスーパーでもよく見かけるものから、ちょっとめずらしい品種まで、日本で作られているブドウ品種を25種類紹介します! 気になった品種があれば、ぜひ食べてみてくださいね。
巨峰(きょほう)
日本人が「ブドウ」と言われて真っ先に思いつく品種は巨峰じゃないでしょうか。スーパーでは6月ごろから見かけます。最近は種なし巨峰が増えてきましたが、甘みが強く、コクのあるうまさを持つ種ありのものも根強い人気を誇っています。表は種なし巨峰をオール3とした基準で書いています。
デラウェア
シーズンの到来を告げる、最も収穫時期の早い品種です。ゴールデンウイークごろからハウス栽培のものが徐々にスーパーに出回りますが、本格的に増えてくるのは7月上旬ごろから。名前を聞いて米国デラウェア州で作られたブドウかと思いきや、実はオハイオ州のデラウェア市生まれ。小粒で甘酸っぱく、ファンも多い王道の品種です。
シャインマスカット
2015年ごろから注目を浴び始め、今では定番となった人気のブドウです。種なしで皮ごと食べることができ、強い甘みとパリッとした皮の食感、そしてシャクっとした果肉の歯ごたえがたまりません。スーパーや青果店では冷蔵貯蔵したものやハウス栽培のものなど、1年を通して売られていますが、最盛期は9月。見た目はちょっとよくないかもしれませんが、粒がほんのり黄色みを帯びているものが甘くておいしいですよ。
ピオーネ
巨峰をさらに進化させた品種で、90年代に一気に普及したブドウです。今なお黒ブドウの高級品種として人気が高く、贈答品としてもよく見かけます。コクのある濃厚な甘みと適度な酸味が特徴。粒は平均20グラム程度にもなる大玉で、巨峰と比べると、実が硬く締まっていて、歯ごたえがあります。巨峰と食べ比べてみてはいかがでしょうか。
サニールージュ
ラグビーボールのようなかたちが特徴的な赤いブドウ。小粒のデラウェアを大きく食べやすくしたような中粒の品種で、デラウェアと巨峰系のいいとこ取りをしたような味。デラウェアの上品な甘さはそのまま、後味にピオーネ由来の濃厚なコクがあります。スーパーでは7月中旬ごろから出回ります。
藤稔(ふじみのり)
ひときわ大きな粒が最大の魅力。巨峰の仲間で、1粒が20~30グラム、大きいものだと40グラムにもなるという品種です。「藤みのり」やまれに「大峰」という名前で出荷されていることもあります。味は巨峰よりもさっぱりしていて、果汁が多く、ジューシーな味わい。冷凍してもおいしいですよ。
ブラックビート
藤稔とピオーネをかけ合わせたブドウ。皮のアントシアニンの含有量が多く、ひときわ真っ黒になるため、見た目の美しさから近年人気が高まっています。さっぱりしてジューシーな藤稔と濃厚な甘みでコクのあるピオーネのちょうど中間のような味わいです。酸味や渋みはなく、食べやすいブドウと言えます。
マスカット・オブ・アレキサンドリア
シャインマスカットが出てくる前に「マスカット」と呼ばれていた高級ブドウで、農家や市場関係者は「アレキ」と呼びます。特徴は何といってもその香り。食べるときにふわっと鼻に抜けていく華やかな香りがアレキの最大の魅力です。種なしにもなりますが、種を抜くとこの香りがなくなってしまうため、一般的には種あり栽培が主流。かつては日本一の高級品種でしたが、シャイン人気に押されて価格が下がっている今が狙い目です。
黒いバラード
デラウェアと同時期に収穫できる、極めて甘く、コクのある味わいのブドウ。その甘さはしばしば黒糖に例えられます。皮ごと食べられますが、皮はやや厚め。あたらしい品種ということもあり、スーパーで見かける機会はほとんどありません。作っている農家も少ないので、もしも出会えたらラッキー! 濃厚な甘さをぜひ体験してみてください!
ヒムロッド・シードレス
関東・東北地方のローカル品種として、観光農園の直売所や道の駅で販売されている品種です。主に8月上旬ごろから出回り始め、8月末ごろにはシーズンを終えてしまいます。小粒ですが名前のとおり種なしの品種で、独特の香りがあり、好きな人にはたまりません。果肉は柔らかく、とろっとした食感です。
スチューベン
寒冷地でも栽培できるブドウで、とくに青森県のものが有名です。山梨県などでは8月末ごろから収穫できますが、一般的にスーパーに出回るのは10月以降。非常に日持ちがするので、冷蔵保存されたものが翌年3月ごろまで流通します。シャインマスカットのおばあちゃんにあたる品種で、シャインマスカットの強い甘味はこのスチューベン由来のもの。小粒で種があり、食感は柔らかいですが、この味を愛するファンも多い品種です。
バッファロー
主に北海道や関東で栽培されている品種で、「アーリースチューベン」という名前で販売されていることもあります。主に直売所などで売られていて、スーパーで見かけることはほとんどありません。小粒で皮は食べられませんが、一部では種なし栽培もされていて、強く濃厚な甘みと適度な酸味を併せ持った品種です。
ゴールドフィンガー
なんといっても指のようなユニークな粒のかたちが特徴的なブドウ。種はありますが、皮ごと食べることができます。穏やかな甘みと適度な酸味が持ち味で、関東では8月ごろに観光農園で見かけることが多いですが、たまにスーパーで売っていることもあります。粒が外れやすいので、なるべく早めに食べてくださいね。
クイーンセブン
シャインマスカットの子どもです。現在一般的に日本国内で手に入るブドウの中ではもっとも甘く、糖度は一般的な品種が20度前後のなか、25度を超え、最大では27度にも達するとか。とにかく甘いブドウが食べたいという人にはおすすめです。去年あたりから、たまにスーパーでも姿を見るようになってきました。
スカーレット
シャインマスカットの子どもの赤ブドウとして注目を集める品種のひとつです。赤系のシャイン子品種の中では色付きがよく、比較的よく作られています。皮の厚さはシャインと同じぐらい。果肉はパリッとしていてジューシー。甘味は強いですが、適度な酸味もあり、味の余韻が舌の上に残ります。香りはなく、シャインとは違った味わいですが、ぜひ一度食べてみてほしいブドウです。
富士の輝(ふじのかがやき)
シャインマスカットの子どもで、「ブラックシャインマスカット」の異名を持つブドウ。皮はシャインよりやや厚いですが、果肉は硬く、強い甘味とほのかな酸味があります。香りはあまりありませんが、ジューシーで、噛むと果汁がじわじわと出てきます。特徴は何といっても粒の大きさ。見た目に高級感があり、人目を惹きます。当然ながら高級品で、高級果専店のレギュラー。見た目・味・価格のすべてがすべて高いレベルで安定しているブドウです。
クイーンルージュ
シャインマスカットの子どもで、長野県のオリジナル品種。現在は長野県でしか作ることができません。本格的な出荷が始まったのは2021年ですが、すでにスーパーでも一定の売場面積を確保し、高級ブドウの地位を築きつつある品種です。果肉はシャインよりやや柔らかいですが、甘味が強く、ほのかなマスカット香があります。皮はシャインより薄く、まったく気になりません。海外には「妃紅提(ヒコーテイ)」の名前で出荷されます。
サンシャインレッド
シャインマスカットの子どもで、山梨県のオリジナル品種。現在は山梨県でしか作ることができません。花のような香りが特徴で、噛んだ瞬間に強い香りが広がります。甘味は強く濃厚ですが、あまりべたつかずにさっと消えます。最新品種のためまだ出荷量は少ないですが、徐々に増えてきており、数年後にはさらに増える見込みです。
神紅(しんく)
シャインマスカットの子どもで、山梨県のオリジナル品種。現在は山梨県でしか作ることができません。花のような香りが特徴で、噛んだ瞬間に強い香りが広がります。甘味は強く濃厚ですが、あまりべたつかずにさっと消えます。最新品種のためまだ出荷量は少ないですが、徐々に増えてきており、数年後にはさらに増える見込みです。
リザマート
「旧ソ連が生んだ最高傑作」と呼ばれるブドウ。種なしで、皮はまったく気になりません。実は硬く締まっていて、さくらんぼのようなさっぱりとした甘味を持つブドウです。非常に割れやすく、デリケートなため、スーパーや青果店に流通することはまずありません。8月中旬ごろにブドウ園に行けば見かけることもありますが、栽培が難しいため、作っている農家もあまり多くない品種です。探してでも食べてほしい、個人的イチオシ品種です。
常陸青龍(ひたちせいりゅう)
茨城県の常陸太田市でしか栽培されていない、常陸太田オリジナルの品種。緑のブドウですが巨峰の仲間です。巨峰よりは小粒でややあっさりしていて、甘みと酸味のバランスがいい。皮は厚く、食べることはできません。農家によって種なし・種ありの両方で作っているので、購入時に確認しておくといいかもしれません。
ちちぶ山ルビー
こちらも現在は埼玉県の秩父地域でしか作られていない、貴重な品種です。小粒ですが、鮮やかな鮮紅色をしたロケットのようなかたちの細長い粒で、見た目にもインパクトがあります。実はやや柔らかいですが、とにかく皮が薄く、皮ごと食べてもまったく気になりません。甘みは強いですがさっぱりとした味わいで、気付いたら手が伸びています。
天山(てんざん)
粒の大きさは20グラムを軽く超え、大きいものでは40グラムにもなるという超巨大なブドウで、「一粒でも果物」というキャッチコピーが有名です。写真の房は1キロですが、中には2.5キロにもなるものも。粒のかたちは円柱形で、皮ごと食べられて種もありません。見た目によらず、さっぱりしたさわやかな甘さを持っています。
悟紅玉(ごこうぎょく)
2019年までは「ゴルビー」という名前でしたが、事情があり改名したようです。赤い大玉のブドウで、濃厚な甘みとさっぱりした酸味、そして後味にはちょっと渋みと苦みもあって、ちょっとエッジの利いた大人の味。「甘いだけの果物は苦手」という人にこそ食べてほしいブドウです。
黄玉(おうぎょく)
巨峰の仲間で、糖度は22度から最大で25度になるという、とても甘いブドウ。種なしで販売していることが多いですが、糖度が上がりやすい種あり栽培で作っている農家もあります。
おすすめのブドウとは?
このように、ひとくちに「ブドウ」と言ってもさまざまな品種があります。甘いもの、酸味のあるもの、種があるもの、ないもの……そこで、わたしの独断と偏見でおすすめのブドウを紹介します!
とにかく甘いブドウが食べたい!
そんなあなたには「クイーンセブン」や「サンシャインレッド」、「神紅」に「黄玉」、「黒いバラード」、そして「シャインマスカット」をおすすめします。シャインマスカット以外はまだまだスーパーでは手に入りづらいですが、どれも甘みが濃厚でおいしいですよ。シャインマスカットはきれいな緑色のものよりも、少し黄色みがかったもののほうが熟していておいしいです。高級品ですが、9月末ごろには手ごろな価格でスーパーにも並んでいるはずなので、食べてみてはいかがでしょう。ぶどうの少ない冬は輸入ぶどうや冷蔵のシャインマスカットが並びますが、価格も手ごろな「スチューベン」もとっても甘いのでおすすめですよ。
種や皮を出すのがめんどくさい!
めんどくさがりなあなたには、皮ごと食べられる「シャインマスカット」や「クイーンセブン」、「サンシャインレッド」に「クイーンルージュ」、「神紅」、巨峰の味で皮ごと食べられる「ナガノパープル」などがおすすめ。最近は種なしや皮ごと食べられるブドウ品種が増えてきています。今回は紹介しませんでしたが、「雄宝」や「マスカ・サーティーン」など、スーパーでもシャインマスカットの子品種の姿を見かけることも増えてきました。ぜひ探してみてくださいね。
変わったブドウを食べてみたい!
とても大粒の「富士の輝」や「天山」、見た目がおもしろい「ゴールドフィンガー」、作っている農家が少ない「リザマート」や花のような香りがする「サンシャインレッド」がおすすめです。また、その地域に行かなければ食べられない「常陸青龍」(茨城県常陸太田市)、「ちちぶ山ルビー」(埼玉県秩父地域)もめずらしい品種です。ドライブついでに、おいしいブドウを探してみるのもいいかもしれません。
日本だけでもブドウの品種は150種類以上あります。好みに合わせて、いろんなブドウを食べてみてくださいね!
ブドウのシーズンは?
地域やハウス栽培か路地栽培か、などによっても変わってきますが、ブドウのシーズンはだいたい7月から11月まで。12月になると、海外から輸入されるブドウがメインになってきます。また、品種によってもかなり差があります。
「シャインマスカット」など通年スーパーに出回っている品種もありますが、ブドウ狩りは主に9月に入ってから。ここでは主に、スーパーや直売所で手に入る時期を紹介しましたが、地域や育てかたによっては時期が前後するので、注意してくださいね。
それではみなさま、よきブドウライフをお楽しみください!
表:ししとう(@774_10)