新規就農者必見!「西洋野菜の少量多品目栽培」で失敗しない方法

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新規就農者必見!「西洋野菜の少量多品目栽培」で失敗しない方法

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

新規就農者必見!「西洋野菜の少量多品目栽培」で失敗しない方法
最終更新日:2020年09月24日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

新規就農で少量多品目栽培に挑戦したいという人は少なくありません。しかも少しレアな西洋野菜で差別化したいという人も。しかし、現実は理想通り・計画通りとはいきません。その理由とトラブルシューティングを私の経験をもとに解説します。

新規就農者の少量多品目栽培は是か非か

農業のやり方は農家の数だけあります。どのやり方が正解というのはありませんが、少量多品目栽培というやり方は、直売所やマルシェ、そして飲食店、オンラインショップでの野菜セットなど、最近の販売チャンネルに適していると思います。それは、まだ販売ルートが少ない新規就農者にとって、売り上げを確保するために入りやすい入り口であると思います。

少量多品目栽培とは

言葉通り、少ない量で多くの品目を栽培するという意味です。少ない量とはどのくらいの量を指すのか、農業の世界でこの定義は決められていませんのでその人の感覚となります。多くの品目についても定義はありませんが、一般的に最低でも30品目を栽培するというのがベースとなっているようです。

私は年間140種類ほどの野菜を栽培していますが、それにはいくつかの理由があります。

理由その1:野菜にはいろいろな種類があるのでそれらを実際にこの目で見て食べたかった。
理由その2:シェフをはじめとするお客に新しい野菜を紹介したかった。
理由その3:性格上、一つのことだけやるのは性に合わなかった。

就農当時は興味本位から栽培をし、結果、年間140種類となっていましたが、今となっては販売先の確保やメディアへの掲載など農業経営にもつながっています。

いろいろな野菜の種

入手したいろいろな種

少量多品目栽培のメリットとデメリット

メリット

私がこれまでに感じた少量多品目栽培のメリットは2つです。

●野菜に関する知識と経験値がアップ
いろいろな野菜を栽培することで知識と経験値がアップします。これによって、自分が好きな野菜を見つけることができます。さらに土地に合う野菜、自分の栽培スキルに合う野菜を絞り込むことができます。

●リスクを避け利益を確保
多品目を栽培することで、科目の違う野菜を組み合わせることができ、病害虫の被害による全滅という最悪の事態が避けられる可能性があります。
さらに、近年の異常気象による自然災害のリスクもあります。日照不足や酷暑による影響で野菜にとっては厳しい日々が続いています。毎年頭を悩まされるのは台風ですが、トマトやキュウリなどの支柱を使用する作物が被害にあっても、あまり影響を受けない作物は出荷でき利益を確保することができます。

風対策のソルゴー

ソルゴーでナスの風対策

デメリット

私が考える少量多品目栽培のデメリットは1つだけです。

作業効率の低下

これに尽きます。
実際、一つの品種を広い面積で栽培した方が圧倒的に作業効率はあがります。一方、少量多品目栽培はさまざまな品目を栽培することにより、どうしても作業工程は多くなります。種をまいてから収穫までかかる時間を計算し、畑の使い方を考えなければならなくなりますし、出荷するための資材(防曇袋など)を複数準備する必要もあります。
就農当時、長ネギとダイコンだけを市場出荷していた両親を1年ほど手伝いましたが、私自身が多品目栽培を始めた頃よりは忙しくありませんでした。夏場は1カ月、冬場は2カ月の休みがあったほどです。

畑の使い方

畑は有効に活用する

少量多品目栽培のデメリットを解消するには

何をするにもデメリットはつきもの。デメリットに気づけばそれを改善すればよいのです。
私は現在も少量多品目で年間140種類ほど栽培し、レストランへ出荷をしています。朝7時30分から農作業をはじめ、14時には終了、夕方からは都内でイベントの打ち合わせなどさまざまな仕事もこなせるようになりました。今では朝から晩まで丸1日農作業をする日は年に10日ほど。それは少量多品目栽培の作業効率の悪さというデメリットを改善したからです。せっかくですので改善方法を2つお話しします。

1.「効率の悪い作物はやめる」

栽培期間、栽培の手間、収穫の手間を考え、その労力に見合う売り上げが確保できない作物は、どんなにおいしくて大好きでも栽培をやめる決断が大切です。
過去にはトマトに力を入れ、赤、ピンク、白、オレンジ、黄色、黒、ゼブラなどカラフルなトマトを300本ほど植えた年もありました。結果、わき芽かきや誘引作業に取られる時間が多く、労働力に見合った売り上げが確保できませんでしたので、翌年から今日に至るまで一切トマトは栽培をしていません。

2.「栽培する数を計算する」

種まきや苗を植える際、自分の販売先を想定して数を計算する必要があります。やたらと栽培しても売れ残ってしまったら意味がありません。それを売り切るために、新たな販売先を開拓するなど、販売するためにもエネルギーを使うことになります。
私が毎年夏に栽培しているライムホルンという品種のピーマンがありますが、植えるのは20株ほど。1株から100個ほど収穫できますので、20株もあれば十分です。ヒモトウガラシに限っては10株ほどしか植えません。少量多品目栽培、たったこれだけの数でも1品目としてカウントできます。

苗

販売を計算して無駄なく栽培する

西洋野菜の少量多品目栽培、ここが落とし穴!

少量多品目栽培をはじめた人がたどり着くのが西洋野菜の栽培です。今ではオンラインショップで手軽に種が入手できます。販売サイトを閲覧すると栽培意欲がわき、やる気が起こるに違いありません。
さて、一度栽培したことがある人に聞きたいのですが、種袋の写真と違う品種ができてしまったという経験はありませんか?
私は何度もそういう経験をしています。私が毎年栽培するナスで「フィレンツェ」というイタリアの品種があります。不思議なことに同じ種をまいているのに5種類ほどのナスが出現してしまうのです。もちろん、種袋と同じナスもありますが、見たこともないナスもあるのです。はたして、この見たこともないナスをフィレンツェとして販売してよいのか? 迷ったあげく販売はしませんでしたが、このようなケースはナスだけでなく、他の西洋野菜の種も同じです。今では、このような事態は想定内のことで、何とも思いませんが、最初の頃は真剣に悩んだものです。

パリのビルモラン

パリの種屋さん「Vilmorin」

アーティチョークもそうでした。初めて栽培した時は、1袋の種から苗を100本作り、その中からランダムで20本の苗を選び畑に植えたのですが、結果7種類のアーティチョークが出現してしまいました。でもものは考えようで、「日本でもいろいろな品種のアーティチョークが栽培できるんだ」と学びに変えました。その経験から日本最大級のアーティチョーク畑に発展し、9種類のアーティチョークを栽培することになったのです。フランスのアーティチョーク農家を訪問した際、種のバラつきはどうしているのかを質問したら、現地では種からではなく苗を購入して植えているとのことでした。日本のタマネギみたいなイメージですね。

いろいろなアーティチョーク

いろいろな品種が出現したアーティチョーク

西洋野菜に栽培技術は必要か?

西洋野菜と呼ばれるものでも、トマトやナス、ニンジンなど日本でも普通に栽培している品目の品種は、その野菜の種袋に記載してある栽培カレンダー通りに進めれば普通に収穫までたどり着くことができます。日本にはないような「セロリアック」(根セロリ)などは気候の影響もありますので全てが成功するわけでもありませんが、興味があったら試してみる価値はあると思います。ちなみにですが、過去に「アグレッティ」というイタリア版オカヒジキの栽培にチャレンジしたことがあります。栽培カレンダー通りに種をまいても発芽せず、タイミングを変え、結果、年4回春夏秋冬にわたり種まきをしても発芽しませんでした。翌年、新しい種を購入してみたらすぐに発芽しましたので種が原因だったという事です。
全ての西洋野菜に言えることではありませんが、2年チャレンジしてうまくいかなかったら気候や土地柄に合っていないということで栽培をあきらめるという選択肢は必要です。栽培技術とは関係なくダメなものはダメということです。私の経験からその割合は5パーセントほどです。

こんな野菜はやめておく

西洋野菜に興味を持つと今まで見たことのない野菜に出会います。私がそうだったのですが、あまりの美しさに、ビジュアルにひかれて栽培した品種がたくさんあります。例えばゼブラ模様のナス。誰もがその美しさに手に取りたくなるビジュアルを持っているのですが、個人的にはおすすめしません。その理由は、加熱するときれいなゼブラ模様がうすれてしまうのです。真っ白なナスも同様です。せっかくの白が加熱すると茶色くなってしまいます。ゼブラ模様のトマトもありますが、ほとんどが加熱用の品種ですのでナスと同様のことが言えます。私はこれらの品種を1度栽培してやめてしまいました。ただし、インスタ映えなど、イメージ画像などの撮影には抜群の効果を発揮すると思います。
味に関しては好みもあるので一概には言えませんが、食べておいしくないものに次はないということです。「この野菜変わっている」「この野菜きれい!」など、見た目だけで売れるのは一度だけ。売り上げアップにつながるカギは、次も購入してもらうことですので、食べておいしい品種を選びましょう。

おまけの虎の巻

少量多品目栽培だけでは差別化にならない
冒頭にも書きましたが、新規就農者にとって少量多品目栽培は販路を広げるためのよいきっかけとなります。栽培する品種も、面白そうだからという好奇心からくるチャレンジは絶対に必要です。ただし、同じように考えている人が周りにたくさんいることを忘れないでください。きっかけを作るだけでなく、それ以外のプラスアルファを作ることが大切です。ブランディング、ストーリー、ビジョン、これらをプラスすることでライバルに差をつけることができます。

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