自分の時間をコントロールできるのも一人農家の魅力。効率的な農家の時間の使い方とは

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自分の時間をコントロールできるのも一人農家の魅力。効率的な農家の時間の使い方とは

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

自分の時間をコントロールできるのも一人農家の魅力。効率的な農家の時間の使い方とは
最終更新日:2020年10月28日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

一日の作業は4~6時間。朝から晩まで丸一日農作業をするのは年に10日ほど。そして雨の日は休み。効率の良い時間の使い方で、野菜を売る以外の活動が活発にでき、“人生の種まき”もできるようになりました。そんな人生を楽しむ私の一日を大公開!

豊かな生活を送るための時間の使い方

「あなたの豊かな生活とは何ですか?」

この質問の答えは人それぞれです。自然が好きで、畑で土に触れている時間が幸せという人もいるでしょう。売り上げをあげ、収入を増やすことという人もいるかもしれません。

私にとっての豊かな生活というのは、半日で作業を終わらせ、人と会う時間がたくさんとれる生活です。売り上げをあげようと思えば、まだ使える時間があるので何とかできそうですが、それは私にとっての豊かな生活ではありません。

農業を始めてもうすぐ20年になりますが、これまでの試行錯誤を経て、農作業の時間が短くてもしっかりと売り上げを確保しつつ、余裕ある一日を過ごせるようになりました。そんな私の時間の使い方の秘密を紹介します。

ある晴れた月末の武井敏信の一日

こちらが月末のとある晴れた日の、私の一日のスケジュールです。時間の使い方について少しずつ紹介します。

一日のスケジュール

武井敏信の一日(月末のある晴れた日)

愛犬の散歩は、今日一日を決める大事な時間

毎朝の習慣は、愛犬の散歩です。
私はできるだけ明日の仕事のことは考えないようにしています。仕事の内容は、レストランへの出荷、農作業、取材、畑見学、講演などいろいろとありますが、考え始めると、プレッシャーがかかり眠れなくなってしまうからです。今日のことは今日考えます。
ですから、一日のスタートで大切な時間である愛犬の散歩の時間は、「今日やらなければならないこと」「今日やりたいこと」を考え、そこに集中する態勢を整えるようにしています。

愛犬の散歩

朝の愛犬の散歩

データチェックで出荷するものを決める

私のレストランへの基本の販売方法は、週に1度、曜日を決めて発送するスタイル。契約した金額に応じて、その都度出荷する野菜を決めています。そのため、前回送った野菜の内容のチェックは欠かすことができません。例えば、ダイコンを1ミリの厚さにスライスして使っているフレンチのお店に2週連続でダイコンを送っても使いきれない可能性があります。前回送った野菜がどうなっているかを想像して今日収穫する野菜を決めるのです。

独自の出荷スタイルはこちらの記事で紹介しています
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午前中の4時間ほどしか農作業はしない

仕事を絞り込み、効率化して、農作業の時間を短くしています。仕事の効率化のテクニックについては、のちほど紹介します。

午後以降は農業以外に時間を使う

午後からは主に都内で打ち合わせや会食に参加します。畑以外での時間が私とタケイファームにとっての価値ある時間。そしてそれが新しい仕事にもつながっていくのです。

イベントの打ち合わせ

レストランでイベントの打ち合わせ

ムチャクチャに働いていた時期を反省

今では、出荷作業や農作業をしている時間は一日に4~6時間ほどですが、以前は、普通に12時間以上働いていました。
なぜ、そんなに働いていたのかというと、複数の販売チャンネルを持っていたからです。
「飲食店への出荷」「野菜セットの出荷」「百貨店への出荷」「マルシェへの出店」。販売先があるということはありがたいのですが、それぞれが求めている野菜も違えば、調整作業の仕方も違います。既に京都の大学での講師の仕事も始まっていましたので、外出も増えてきていました。それらを一人でやっているのですから、忙しいに決まっています。今日やらなければならないことが終わらないのです。

思い切った引き算

忙しさを改善しようと、私は仕事の引き算、つまり「販売のチャンネルの整理」を始めました。

まずは、出荷の準備だけでなく、ミーティングなどにかなり時間をとられていたマルシェへの出店をやめました。
マルシェは対面販売で、野菜についての伝え方を学べたりお客さんの話が聞けたりと勉強になることも多かったのですが、天気の影響のせいでロスがでることもあったためです。

独特の出荷スタイルはこちらの記事で紹介しています
マルシェの売り上げはもっと増える! だれでもできる工夫とは
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そして、農業を始めたころから目標にしていた百貨店への出荷もやめました。売上高日本一を誇る百貨店の野菜売り場のバックヤードを見られたことは今の農業人生の中での貴重な経験です。ここでは、ブランド作り、野菜の見せ方を学びましたが、百貨店の企画に合わせた商品づくりは効率が悪かったためです。

まずはこの2つの販売チャンネルをやめたことで、心に余裕ができ、疲労も軽減されました。
今思うと、この2つの販売先をやめる直前は、腰や背中の痛みがあり、週に1度、鍼(はり)を打ちに2年ほど診療所に通い、体の状態も良くありませんでした。

もちろん、売り上げにも影響は出ますが、やめる方向で考え出した時から、販売のウエートを飲食店へシフトチェンジしていましたので、それほどのダメージにはなりませんでした。それよりも、空いた時間の有効な使い方をすることによって畑での労働時間が短縮されることになったのです。

作業時間を短くするための工夫

作業時間を短くしても売り上げが落ちてしまっては話になりません。売り上げをあげつつ、時間を効率良く使う4つの工夫を紹介します。

単価が高く設定できるものを栽培する

勝負するステージをどこに設定するかでも変わりますが、同じ労働力や時間を使って、同じ資材や肥料を投入して栽培した時、価格を高く設定できるものを栽培することです。私がやらないと決めていることで「簡単に売れるものは作らない」というのがあります。そういうものは、他にも作っている人が多いので、価格競争の中から脱出することができず、売り上げをあげるためには、数を売るしかありません。単価が高く設定できるものは、変わった色の品種でもよいでしょうし、その売り場で見かけない珍しい野菜などがあります。しかし、大切なこととして、ポップの説明やシールなどで、その野菜の食べ方などを説明する努力が必要となります。

長く収穫できるものを栽培する

畑を耕す準備から始まり、種をまいて収穫し、片付けまで。この作業の回数が少ないほど農作業は減ります。全ての作物が該当するわけではありませんが、種をまいて半年も収穫が続くものがたくさんありますので、ぜひ探してみてください。

出荷に時間のかからないものを栽培する

これは言いかえると、「出荷に時間のかかるものは栽培しない」ということです。収穫から調整作業、袋詰め。この時間をいかに短くするかは、栽培する品目と販売先によって変わります。
まずは、品目。私の畑には、カーボロネロやプチヴェールなど収穫は切るだけというものが多く栽培されています。切ったその場で出荷OKかNGかを判断しますので、あとは袋に入れるだけ。
販売先についてですが、取引先が飲食店のため基本的に野菜は洗いません。ニンジンやカブなどの根菜類も土付きのまま本数を数えて大きなビニール袋に入れるだけ。

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季節に合ったものを栽培する

露地栽培で冬にレタスを栽培するには、マルチとトンネルを張らなければなりません。ホウレンソウであれば、寒さに強いので、マルチもトンネルも必要ありません。季節に合ったものを栽培すれば、労力と時間と経費が節減できます。

余った時間で何をする?

作業時間を短くして余った時間、余ったというよりも作り出した時間です。この時間を、打ち合わせやレストランでの食事に使うことができるようになりました。もともとは人見知りなのですが、今では人と会うのが楽しく、ここから新たな仕事が増えたり、勉強になったりしていて、人生の種まきをしています。野菜の発芽は何日後と先が読めますが、人生の発芽は読むことができません。いつ発芽するかわからないので、たくさんの人と会い、たくさんの種まきをしておきます。すると突然連絡が入ったりして仕事に結びつくのです。

外食はお勉強

外食はお勉強の時間

作り出した時間は仕事をするためだけのものではありません。自分のために使うこともできます。外国人の先生とマンツーマンで英会話を習い、ジムに通って肉体改造も始めました。

ジムでトレーニング

ジムでトレーニング

農家の皆さんへのアドバイス

朝から仕事を始め、昼過ぎに仕事が終わり、夕方からは打ち合わせや会食をして帰宅は深夜。全てを仕事と考えると一日の労働時間はとても長く、深夜に帰宅しても翌朝は5時に起きますので疲れもたまってきます。
この記事を書いている10月21日現在の10月の予定です。

Screenshot

10月のスケジュール、青い部分は農業以外の予定

青く塗られている所は農作業以外の予定です。毎月このような予定ですので、忙しいといえば忙しいのですが、畑から飛び出すことによって、新たな出会いや発見が必ずあります。時間が空けば百貨店の野菜売り場を見ているだけでも参考になりますし、次の攻めのヒントも浮かびます。
雨で作業ができない日など、畑を飛び出してみてはどうでしょうか。時間を作ろうと思えばきっと作ることができると思います。

おまけの虎の巻

今のように時間を有効に使えるようになった最大の理由は「引き算」のおかげですが「引き算」はとても難しいのです。畑に肥料を入れるのは簡単ですが、入れすぎてしまった肥料を取り除くのは大変です。人間も同じで、体重を増やすのは簡単ですが、減らすのは簡単にはいきません。しかし、「引き算」がうまくできると意外と良い方向に向かうものです。

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