少量多品目農家の武井が栽培をやめた野菜5選。やめた理由とその結果を語る

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少量多品目農家の武井が栽培をやめた野菜5選。やめた理由とその結果を語る

少量多品目農家の武井が栽培をやめた野菜5選。やめた理由とその結果を語る
最終更新日:2020年12月10日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

今までいろいろな野菜を栽培してきましたが、現在は2度と栽培しないと誓った野菜があります。
その中には、消費者に人気がある野菜もたくさん入っていますが、思い切ってやめたことで、仕事の効率化につながり売り上げもあがりました。今回は、その中の5つの野菜を例に、やめた理由とその結果についてお話しします。

武井流、栽培をやめる野菜について

皆さん、栽培する野菜はどのように選んでいるでしょうか。農家の考え方や条件によっても違いがでてきます。例えば、

何人で農業をするか
どこで農業をするか
どのような農法で農業をするか
どのくらいの面積で農業をするか
どのくらいの労働時間で農業をするか
どこへ販売するか

これらは、農業を始める上で決めることですが、続けていくうちに変化していく場合もあります。

私は少量多品目の野菜農家で、就農したころから栽培は独学でしたので、新しく取り組む野菜が、うちの土に合うのか、気候に合うのかなどブレーキとなる考え方はいっさいなく、栽培するものは野菜というくくりで、小松菜もアーティチョークも全く同じ感覚でした。野菜の知識は全くなかったため、野菜を知るという意味でも、はじめての野菜に出会うと栽培にチャレンジしてきたのです。結果、一般的な野菜から珍しい野菜まで、約350を超える野菜を栽培し、今では年間約140品種を栽培しています。これらの野菜は、タケイファームの定番野菜に加え、その時のひらめきによって変わってきます。
こうしていろいろな野菜を栽培してきましたが、現在はいっさい栽培をやめてしまった野菜がたくさんあります。その理由は、タケイファームの販売スタイルに合わなかったから、です。
タケイファームで働くのは私一人。千葉県で2つの畑を使い、露地栽培で1日の労働時間を6時間以内におさえ、主に都内のレストランへ販売しています。
このような現在の販売スタイルを続けていくために重視したのは、時間あたりの売り上げ、労働力に対しての売り上げ、自分自身の考えをつらぬくこと。そのためには栽培する野菜も取捨選択する必要がありました。今回は5つの野菜を例にとって栽培をやめた理由とその結果を話します。

やめた野菜その1 トマト

必ず好きな野菜ランキング上位に入るトマト、子供から大人まで人気の野菜です。食べ方も生食から加熱料理まで豊富なメニューがあり、一般家庭からレストランまで需要があります。世界では8000種類以上の品種があるといわれ、大玉、中玉、ミニの大きさ、赤以外にも黄色や白、オレンジ、黒などカラフルな色に加え、生食用、加工用と、生産者目線から見ても品種が多く、栽培する面白みのある野菜の一つではないでしょうか。
私もそんなトマトの魅力にはまった生産者の一人で、ある時は、カラフルなトマトに注目していた時もありました。

Screenshot

栽培していたブルートマト

トマトをやめた理由

トマトの栽培には誘引、わき芽かきなど毎日の作業があります。一人で200株ほど栽培しているとそれだけで時間がとられてしまいます。さらに、支柱などの資材にもお金がかかりますので、トマトを販売して得られる売り上げは少なく効率が悪いと考えました。トマトの栽培をやめることにした決定的な理由は、施設栽培のトマト農家を見学した時です。品質の差と安定した量の確保の違いに明らかな差がでていたのです。この時、露地栽培でトマトはやるものではないと判断しました。

割れてしまったトマト

割れてしまったトマト

トマトをやめた結果

当初、夏の定番野菜トマトをやめることで、お客さんからタケイファームが敬遠される不安がありましたが、トマトが欲しい人はトマト農家からトマトだけ購入するのでそれほど大きな問題にはなりませんでした。露地栽培では、品質の高いトマトが安定して収穫できなかったので、作業時間や資材に投入したお金の回収などの利益率を考えると、一人で栽培する品目ではないという結果に。やめたことによって、その労力を安定して収穫できる作物に回すことができ、売り上げがアップしました。

やめた野菜その2 エダマメ

エダマメといえばビール。私自身ビールのお供として大好きな野菜の一つでもあり、こちらも夏の野菜ランキングの上位に入ります。販売価格も一般的な野菜よりも高く設定でき、直売所やマルシェではとれたてのエダマメは大変人気があります。

枝豆

エダマメ

エダマメをやめた理由

この連載の「売り上げアップにつながる秘訣、まずはやらないことを決める!」でも書きましたが、私がエダマメを栽培していた時は、5本を1束にして販売金額は400円。1本のエダマメの虫食いや葉を取り除き、きれいな1本にするためにかかった時間は3分。1束作るのに15分、1時間の売り上げ1600円、10時間の売り上げ16000円。今考えても決して一人でやる品目ではないといえます。味はおいしく、お客さんにも人気があり、高価な価格設定もできますが、作業時間を細分化してみると、決して労働時間に見合った稼ぎができるわけではありません。

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エダマメをやめた結果

ビールのお供に自分で栽培したとれたてのエダマメを食べることができなくなりましたが、近所の直売所で購入し対応できています。それよりも、トマト同様、作業効率の悪さから解放され、ストレスも減り、労働時間の軽減につながりました。

やめた野菜その3 ゴボウ

ゴボウは農業を始めてすぐのころに栽培していました。品種は通常のゴボウより根が短い30~40センチのサラダゴボウでしたが、すぐに栽培をやめました。それからずっと栽培していなかったのですが、数年前に久しぶりに私が執筆していた雑誌の企画で栽培することに。千葉県の匝瑳(そうさ)市の大浦地区で育てられている伝統野菜「大浦ゴボウ」です。とてもおいしかったので、それ以来ゴボウの香りや食感が大好きになり、時々購入していますが、自分では栽培しません。

ゴボウをやめた理由

ゴボウの栽培をやめた理由は、収穫の疲労感と労働に見合わない販売価格です。短いサラダゴボウですら、途中で折れないように、周りを深く掘って収穫する必要があり、その疲労感に打ちのめされました。今では、収穫を楽にするために袋や塩ビ管を使った栽培方法もありますが、当時はそのことを知らず、疲れた記憶しかありません。今でも不思議なのですが、販売されている価格があのつらい労働力に見合っていないのはなぜなのでしょうか?

ゴボウ堀り

ゴボウを掘ってクタクタになった武井

ゴボウをやめた結果

私の場合、一度も販売せずにゴボウの栽培をやめていましたので、売り上げがダウンしたり、タケイファームの野菜のアイテムから減るということはありませんでした。数年前の雑誌の企画で久しぶりに栽培したゴボウですが、疲労感と労働量は変わらずで、いくらおいしくても栽培を続けようとは思いませんでした。今も農業を続けられる体があるのは、あの時ゴボウをやめていたからかもしれません。

やめた野菜その4 サトイモ

2年前にやめた野菜がサトイモです。取引先のシェフからは「武井さんのサトイモはおいしい」といわれ、私自身も本当においしいと思っていました。このサトイモは祖父の時代から代々種イモを引き継いできたもので品種がわからず、やめてしまうと二度と栽培することができません。この受け継いできたサトイモをやめてしまうことは迷いに迷ったのですが、シェフから惜しまれつつも栽培をやめました。

サトイモをやめた理由

サトイモは低温に弱いので、一般的な収穫時期は霜が降りる前までに終了します。収穫後は貯蔵も可能なのですが、私は農業を始めた頃に「野菜の貯蔵はしない、発送する日に収穫する」と決めていました。野菜の中には貯蔵した方が甘みが増し、おいしくなるものもありますが、他の農家との差別化を図るために「とれたて」を決めたのです。そのルールを崩すことはしたくありませんので、サトイモも発送する日にその都度掘っていました。しかし、収穫期間後半になると、虫食いは増え、イモは腐り、10株掘っても1キロにも満たない収量ということもあり、ロスがあまりにも多いのでやめることにしたのです。

サトイモ

掘ったばかりのサトイモ

サトイモをやめた結果

代々引き継がれたサトイモをやめたことで、冬の寒い午前中の収穫時間を大幅に短縮することができました。サトイモもエダマメ同様、一般的な野菜よりも単価を高くすることができるので、売り上げを考えると効率の良い野菜のようにも思えますが、現在、タケイファームでは、カーボロネロやサボイキャベツなど、単価を高く設定できて冬に稼げる野菜がありますので、売り上げには影響がでませんでした。

やめた野菜その5 ハーブ

ハーブはかなり勉強しました。少し使うだけで本格的な料理にもなり、お茶や虫よけなど実用的な使い方もできます。レストランでは必需品でもあり、定番のハーブからあまり見かけないものまで使用していますので、ハーブは必ず売れるという自信がありました。しかも、多年草の品種も多く、栽培にも手間がかかりません。タケイファームではいろいろな種類のハーブを販売していましたが、現在は、レストランから注文がある数種類のハーブのみ栽培しています。完全に撤退したわけではありませんが、本格的に栽培に取り組んでおらず、放置している多年草のハーブが元気に育っています。

ローズマリー

庭で放置しているローズマリー

ハーブをやめた理由

ハーブは予想通り需要がありましたが、儲かりませんでした。レストランは一年中必要としていますが、露地栽培で一年を通して供給するのは難しく、安定供給ということでは、大手のハーブ園から仕入れた方が効率は良いのです。現在少量栽培しているハーブは、大手が力を入れておらず入手が簡単ではない品種のものなので、タケイファームでも販売することができています。
ハーブは、現在は出店をやめてしまったマルシェでも販売していましたが、一般家庭では大量に使うものでもなく、料理も限定されてしまうので、大きな売り上げにはつながりませんでした。

ハーブをやめた結果

ハーブはほとんどタケイファームの利益に貢献していませんでしたので、こちらもほとんど売り上げには影響はなく、細かい作業が減っただけ精神的なストレスはなくなりました。ハーブを栽培している人の多くは、フレッシュ以外に、乾燥させドライで販売したり、ハーブを使ったイベントを開催することで売り上げにつなげていると思いますが、タケイファームのお客さんは飲食店がメインということもあり、やめて正解だったと思っています。

おまけの虎の巻

小規模農家は反収だけでなく「時給」も重要

私のように小規模農家の人は1日の稼働時間が限られています。農作業が大好きで、土に触れていることで心が満たされるという人はよいのですが、農業で収益をあげるためには、時間、労働力、コストの効率化は必要です。私の場合、反収というよりも時給という考えが強いので、時間当たりの売り上げが労働力に見合わない野菜は必然とやめていくことになります。
また、西洋野菜の場合、一般的な野菜と違い、どんな野菜かどんな味かも想像もできないため、はじめて栽培し、予想していたよりもおいしくないものであればやめてしまいますし、露地栽培ということもあり、天候に左右されやすいものもやめてしまう傾向にあります。
ただし、これらは、やめてしまってもカバーする野菜があるからできることです。少量多品目栽培をしている人たちは野菜を増やしてみて、その中から引き算していくことをおすすめします。

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