リスキーな戦略、6次産業化。その助っ人は直売所だ!【直売所プロフェッショナル#36】

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リスキーな戦略、6次産業化。その助っ人は直売所だ!【直売所プロフェッショナル#36】

リスキーな戦略、6次産業化。その助っ人は直売所だ!【直売所プロフェッショナル#36】
最終更新日:2021年01月28日

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。農業の6次産業化は大きな課題だが、日々消費者と触れている直売所はその強力な助っ人となるだろう。
(上写真撮影:山本大介)

6次産業化の強力サポーターになる!

6次産業化の必要性は農業界で言われて久しく、マイナビ農業でも再三触れられています。その背景には、農業の収益性を高める必要性や地域の雇用を増やす効果への期待もありますが、もうひとつ、横並びの画一的な経営ではなくもっと独自性を出していきたいという一部の農家さんの切なる希望もあると思います。

ここで6次産業化とは何かということを冷静に見てみると、ほかの産業で言うところの「多角化」です。ジャムや漬物といった加工品を作ったり、農産物を生かしたレストランを経営したりするなら、ちょっと難しい経営用語では「垂直的統合による多角化」ということに当たります。たとえばアパレル小売店を運営するユニクロを傘下に持つファーストリテイリングなどが実施している、衣服の企画から製造、販売までを自ら一貫して行うビジネスモデルが「垂直(的)統合」です。

経営学では「多角化」はリスキーな戦略だとされています。多くの一流企業も多角化を目指して失敗しています(ファーストリテイリングはかつて野菜販売に乗り出してすぐに撤退しました)。もちろん成功例もありますが。
多角化はそこから得られる果実は大きいのですが、ハイリターンにはハイリスクがもれなく付いてくるのがビジネスの法則です。6次産業化はリスクが大きいことをふまえたうえで進めていきたいものです。
なお、6次産業化の課題について理解を深めるには、以下の記事もオススメです。

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多角化がリスキーなのは、異なる業種・業態には、まったく違うノウハウが必要であり、場合によっては販路もまったく異なり、それらを獲得するのは並大抵のことではないからです。もしそれらが簡単に獲得できるのであれば、その分野にはかなりの数の競合がいる(いわゆるレッドオーシャン)のがビジネスの常で、それはそれでリスキーになるわけです。

たとえば、ホウレンソウを栽培することとそれを加工することは、まったくノウハウが異なります。また、青果としてのホウレンソウの販売先と、加工品の販売先は異なることも多いので、その営業や広告のノウハウもまた違います。

サブレ

撮影:岩田野花

とはいえ、6次産業化をせずに今までどおりでよいかといえば、そうではないケースもあるでしょう。そうしたときに、地元の直売所が最強のサポーターとなって、農家さんが6次産業化で成功するために積極的な支援をしていきたいものです。
つまり、農家と直売所がタッグを組むことで、本来リスキーな多角化でも失敗を減らすことができるのです。
以下、直売所が6次産業化のためのすばらしい助っ人になりうるワケを3つあげたいと思います。

その1 直売所は販路であり広報拠点!

一番大きな理由は、直売所自身が販路になったり広報拠点になったりするということです。

ここで農家さんが加工品を開発したとします。ふつうは、加工品が完成してから直売所に持ち込みますが、そうすると、単に販売棚の隅のほうに置かれるだけかもしれません。
しかし、計画段階から直売所のスタッフが参画すれば、月間いくつくらいお店で販売できるかを想定することができます。そして、想定を提示したからには、直売所としても一生懸命販売しよう、ということになります。たとえば、発売時に試食イベントを開催したりもできます。
加工品を作るには初期投資も必要になりますので、あらかじめある程度の販売量が見えていることは(それが大量ではなくても)、農家さんにとって大きな安心材料になるでしょう。

さらに大事なことは、発売したあとのフィードバックが得られるということ。どんな新規事業であれ、最初から100%うまくいくということはありません。少しずつ改善していくことが大事ですが、実際に販売してみてのフィードバックがあるとないとでは改善スピードが異なります。直売所のスタッフは、売り場のプロフェッショナルとして、改善につながるフィードバックを積極的にしていくべきでしょう。

また、6次産業化には、観光農園化・体験農園化なども含まれますが、農園でイベントがあるときに直売所と共催のような形にすれば、直売所が広報拠点となって集客を見込むこともできます。直売所の側からしても、顧客が畑を訪れれば地元農産物へのロイヤルティーは間違いなくアップしますからメリットがあります。
なお、筆者の経営する直売所では、畑を訪れる催しを毎月開催し、地元の畑や農家さんを身近なものにする活動を行っています。
(参考:親子向け収穫体験事業「農いく!」

農いく!

当社が開催している「農いく!」の様子(撮影:山本大介)

その2 「マーケットイン」で発想する

どうしても6次産業化がリスキーになる理由には、お客様、つまり一般消費者の感覚を農家さんがつかみにくいという点もあります。
農業はもともと一般消費者と会って話をすることの少ない産業です。なので、マーケットの感覚をつかむのが難しいのはやむを得ません。しかし、このマーケットの感覚(センスと言ってもいいです)は、たいへん重要です。

その点、直売所は毎日消費者を相手にしている商売ですし、調味料やお菓子といった加工品を仕入れるバイヤーとして、ちまたの食品メーカーとも日ごろからコミュニケーションがあります。「マーケット慣れ」しているわけです。
農家さんは自分の農産物や農業技術に自信がありますから、それを打ち出した商品やサービスを作りがちです。それは一概には悪いことではないのですが、いわゆる「プロダクトアウト」(作り手にとっていいものを作る)の発想に偏ってしまうと、ヒット率は下がってしまいます。

大事なのは「マーケットイン」の発想です。
マーケットインとは、一般消費者がどのようなニーズを持っているのかを具体的にイメージしながら商品開発することです。これにより売れる確率が格段にアップします。
とくにパッケージのデザインやキャッチコピーといった面では、消費者のニーズをつかむセンスがものを言いますので、日ごろ消費者と接している直売所のスタッフがアドバイスできることがあるはずです。農家さんの側から直売所にアドバイスを頼むのもよいと思います。

エダマメ

ちなみに、そのようなアドバイスができるようになるために、直売所は「バイヤー気質」をいつも持ちたいところです。どんな商品が売れて、どんな商品は売れないのか。普段からそのことに関心があれば、おのずと消費者のニーズに敏感になって農家さんへのアドバイスも的確なものになるでしょう。
(参考:次世代の直売所に大事なバイヤー気質。仕入れは小売業のキホンのキ。【直売所プロフェッショナル#06】

その3 地域全体としてノウハウや販路を蓄積するセンターへ

前述のように、6次産業化には野菜や果物を栽培するのとは異なるノウハウが必要です。加工品開発であれば、保健衛生の知識やパッケージ・デザインの知識も欠かせません。
そこで、もし直売所が複数の6次産業化のプロジェクトに参加していたらどうでしょうか。そうすれば直売所にノウハウや販路の蓄積ができてきます。ビジネスにおいて蓄積していくことは大事です。
ノウハウや販路の蓄積を、地域の農業のために積極的に活用していく「6次産業化センター」のような役割を直売所が果たすことができれば、その地域にとって大きな武器になるでしょう。
むしろ直売所側から積極的に商品開発を持ちかけるくらいでちょうどいいのではないでしょうか。直売所が売れ残りのリスクをある程度負う気概があってもいいと思います。消費者がどのようなニーズを持っているのかの肌感は、農家さんよりも直売所スタッフの方が持っているのですから。

このように、直売所が6次産業化に積極的に関与すべき理由を見てきました。直売所と農家さんがタッグを組むことで、本来はかなりリスキーである6次産業化の成功確率を上げることができるでしょう。
これからの直売所は単に品物を並べておくだけではなく、マーケットと農業の橋渡し役となることが求められているのではないでしょうか。

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