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農家に近いのが直売所の武器! 野菜の背景情報を発信する【直売所プロフェッショナル#37】

農家に近いのが直売所の武器! 野菜の背景情報を発信する【直売所プロフェッショナル#37】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。第37回は、直売所の武器になり得る、農家や野菜の情報発信について。

直売所の特徴は、農家との距離

圧倒的に農家との距離が近い、直売所

この連載で散々書いてきていることですが、直売所の大きな特徴は農家が直接野菜を持ち込み、陳列することです。農家と販売店のこの距離感は、通常の市場経由はもちろん産地との契約栽培であってもなかなか実現できないこと。日々会う機会があるので、野菜の栽培情報を得やすいのはもちろん、改めて圃場(ほじょう)を見学したり取材をしたりする場合にも、出荷農家は近隣にいるはずなので低コストで実現できます。距離が近いということは、情報を得るコストが著しく低いということなのです。

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差別化のための武器としての情報発信

市場流通の進歩はもちろんのこと、ネットでの直販も普及し、消費者はますます容易にさまざまな野菜にアクセスできるようになっています。一方で、多くの野菜は見た目の差があまりなく、食味の差も食べてみないとわからない、差別化が難しい商材です。実際、スーパーに行って並んでいる野菜を選ぶときに、値段以外の要素で選べない、という人も多いでしょう。このように、野菜というのは価格競争が激しく、差別化しにくい商材になっています。その点、それぞれの野菜の持つ背景情報を発信することは、直売所にとってスーパーなどと差別化する一つの要因になります。今回は、直売所にとって差別化の武器になる背景情報の発信について考えていきます。

キウイ

情報発信をどうやって行うか

情報発信のプロセス

では、どうやって背景情報を発信していくのか。
まず、情報発信のプロセスを整理してみると、以下のようになります。

・伝えるための媒体を選ぶ
・野菜や農家の情報を取得する
・お客様に伝わるように情報を編集する

それぞれについて考えてみましょう。

まず、誰にどうやって伝えたいかを考えて、媒体を選びます。店頭に設置するPOPを制作してもよいですし、配布物を作るのもよいかもしれません。SNSを使った発信、LINEアカウントやメールマガジンも検討してもよいでしょう。野菜の背景を伝える媒体はいろいろと考えられるので、お客様と自分たちが利用しやすい手段を鑑みて決めていけばよいと思います。自分たちが使える手段や能力に合っているものを選ばないと続けるのが難しくなるかもしれないので、そこは見極めが大事です。

次に、媒体に合わせて情報を集めます。野菜の背景情報は、大きく分けて2つの方向性で把握できると思います。1つは野菜自体の情報。品種による特徴や栄養価といったことです。これは、種苗メーカーのカタログやホームページなどで調べることができます。そして、もう1つが農家から聞くことで得られる栽培上の工夫やこだわりです。こちらは、栽培農家と直接話すことでしか得ることができず、より直売所のオリジナリティーが出しやすいことです。なるべく農家を取材して情報を取得する機会を増やし、コンテンツ化できれば、他ではまねができない情報発信ができると思います。

情報が集まれば、何を発信するか、編集作業が必要です。取材をしてみると、野菜の背景情報はとても膨大です。話をすると熱い思いを持つ農家も多いですし、野菜の品種などもきちんと調べるとさまざまな情報が出てきます。その情報をどうやって編集していくかが、骨が折れる作業であると同時に、その直売所らしさを形作っていきます。

このように考えると、一つ一つはそれほど難しくなさそうですが、きちんと続けるのは簡単ではありません。なぜかというと、成果がすぐに見えないからではないかと思います。これは、私たちがずっと苦労してきて実感していることでもあります。

情報発信をしたことで一気に売り上げが増えるということは滅多にありません。ですので、そのための予算を確保することは短期的にはメリットが見えにくいのです。その結果、なんとなく始めてみるけれどなんとなく尻すぼみしていくというのがよくあるパターンだと思います。かく言う、私たちもそのようなことを繰り返してきました。それを防ぐためにどうすればよいのか、最近になって私たちが取り組んでいることをご紹介します。

計画を立てて、担当者を決め、予算をつける

本当に当たり前過ぎて書くのもはばかられるくらいですが、私たちも含めてなかなかできていないのではないかと考え、あえて書きます。情報発信において重要なことは、経営者が「情報発信は大事なことだ」と宣言し、予算をつけることです。

情報発信は中長期的には必ず差別化やリピーター獲得につながると思います。お店へのロイヤルティー(信頼や愛着)も高まるでしょう。ただ、短期的な利益は見えにくいです。だから、なんとなくやりましょう、では散発的な実施で終わってしまいます。

発信媒体を設定し、定期的に発信する計画をたて、それを実施する担当者を決めてそのための予算をきちんとつける。あとは、その計画がきちんと実行されるように、きちんと進捗(しんちょく)を管理していきます。そこまでやって、初めて定期的な情報発信が可能になると思います。

私たちのケース

では、これらを具体的にどうやって実施するのか。私たちのケースを例として見てみます。創業以来の試行錯誤の結果、現在私たちの店では以下の方法で野菜の背景情報を発信しています。

・店頭POP
・店舗ごとの毎月の機関紙
・「農いく!」の実施報告紙「Newsletter(ニュースレター)」
・各種SNS、ブログ

まず、店頭POPには野菜自体の紹介POPや食べ方のPOP、農家紹介POPなどがありますが、事前に年間の制作計画を立てます。例年の入荷状況から、必要な時期に必要なPOPが並ぶように計画しておきます。

佐藤園

農家さんについて説明するPOP

また、各店では毎月機関紙を作成しています。例えば西国分寺駅の店舗では、お得情報などとともに農家を1人取材して、簡単な記事にしています。

nishikoku_times

楽しみにしているという声も多い「THE NISHIKOKU TIMES(ザ・にしこくタイムズ)」

さらに、親子向け収穫体験事業「農いく!」の広報活動の一環として実施レポートを紹介する「Newsletter」を作成しており、空いている裏面を使って、こちらでも農家インタビューを載せています。こちらは、年間の取材スケジュールを事前に立てて、担当者以外も有志で同行者を募集しながら、取材を実施しています。

newsletter

毎月自社で作成している「Newsletter」

さらに、アルバイトスタッフやインターン生の協力も得て、日々の様子や取材時の記事にならなかった情報などを、各種SNSやブログにて発信しています。
農いく!Diary

このように見ると、大変な作業量に見えるかもしれませんが、きちんと計画を立てておけばそこまで手間がかかるわけではありません。また、事前にフォーマットさえデザイナーに作成してもらえば、社内で作成してもそれなりのクオリティーになります。しかも、最近はネット印刷業者が増えており、料金も大幅に下がっているので、コストもそれほどかかりません。ここにしっかり取り組むことで、一般的な小売店との明確な違いを打ち出すことができるはずです。

野菜の背景情報を発信する意義

では、本当にこれらのことをやる意味があるのでしょうか。正直、数値として明確に把握することは困難ですが、肌感としてはかなり効果があると感じています。具体的には、主に3つの効果があります。

1. お客様のロイヤルティーアップ
2. 農家のモチベーションアップ
3. スタッフのモチベーションアップ

1. お客様のロイヤルティーアップ

野菜の情報について興味を持つお客様は一定数います。お店にPOPがあると買い物が楽しくなるのはもちろん、定期的に機関紙などがあると楽しみにしてくれる人もたくさん出てきます。また、野菜の背景情報を積極的に発信するという雰囲気自体が、「野菜の専門店」としての直売所の説得力や魅力につながります。

2. 農家のモチベーションアップ

自分の仕事を人に伝える機会がない農家さんが多いということもあり、取材されること自体が農家のモチベーションアップにつながります。もちろん、その情報がお客様に届くことは、農家にとってもうれしいことですし、品質アップへの励みになります。さらに、人に話すことで考えが整理されるので、農家自身が自分の栽培技術や農業経営を振り返るきっかけにもなります。

3. スタッフのモチベーションアップ

これが実は一番意味があるのかもしれないと思うのですが、農家を取材して情報を発信することで、スタッフのモチベーションがあがります。農家さんの「熱」を受けとることで、日々の仕事の意味もはっきりと感じられますし、接客にも自信とやりがいを持てるようになります。

このように、直売所が農家との距離が近いことを最大限生かして野菜の背景情報をしっかり発信することは、「特別な店」になるための大きな武器になります。そしてそれは、対お客様だけにとどまらず、働くスタッフや出荷農家に対しても良い影響を与えるきっかけにもなるのです。

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