政府が進める規制改革のテーマはどう変わってきたのか
野菜くらぶを中心とする農業関連の企業グループの売上高は、2020年の見通しで44億円。沢浦さんが社長を務め、キャベツやダイコン、コンニャクなどさまざまな品目を栽培するグリンリーフ(群馬県利根郡昭和村)のほか、各地の80人以上の農家から野菜を仕入れ、販売している。
農業分野の規制改革に関する沢浦さんの意見を紹介する前に、まず政府が進める規制改革の意味について触れておこう。
もともと政府の規制の見直しは、もっぱら規制の「緩和」を意味していた。いまと違い、かつては政府の決めた細かいルールが企業の活動をがんじがらめに縛り、その成長を妨げていたからだ。そうしたルールを緩めることで企業活動を自由にし、創意工夫や競争を促すことを目的にしていた。
流れが変わったのが、1990年代後半。インターネットなどさまざまな新しい技術が登場したことで、規制を緩めることだけではなく、新たなルールを設けることも目的になった。議論を担う組織の名称が99年に規制緩和委員会から規制改革委員会に変わったのはその象徴だ。
最近ではさらにルールの変更だけではなく、民間の企業や組織がとるべき行動についても話し合うようになった。2016年には全国農業協同組合連合会(全農)の農産物の販売方法などを議論したが、これは制度改正ではなく、全農に業務の見直しを求めるという形で決着した。
ここで規制改革が何を意味するのかについて触れたのは、それが一般にイメージされている以上に幅広いテーマを対象にしているのを示すためだ。それでは、農業分野の改革に関する沢浦さんの主張に移ろう。
規制改革に望むこと。カリスマ農家の意見とは
「規制緩和はもうほとんど終わったのではないか」。規制改革推進会議で何を訴えたいのかをたずねると、沢浦さんは開口一番にこう答えた。一般企業の農業参入などがすでにほぼ自由になったのを踏まえた言葉だ。
ではいまどんな改革が必要なのか。