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「みかんのみっちゃん」が広告塔! 販売も人手確保もSNSで行う面白いミカン農家とは

「みかんのみっちゃん」が広告塔! 販売も人手確保もSNSで行う面白いミカン農家とは

全国の農家さんを訪ねるフリーランス農家のコバマツです。今回はミカンの名産地である和歌山県有田郡有田川町に来ています。そこで出会ったミカン農家の「みかんのみっちゃん」。自分自身を広告塔にミカンの魅力を発信しまくっている、ミカン愛に満ちあふれた農家さんです。みっちゃんが実践するSNSを活用した、お客さんとダイレクトにつながる販売方法や、援農者が集まる情報発信のお話は、これから生産者自身が農業の魅力や可能性を発信するためのヒントとなるものでした。

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自分自身を「ミカンのゆるキャラ」に認定! ミカン愛の背景とは

今回コバマツが訪れたのは和歌山県有田川町。「有田みかん」でおなじみのミカンの名産地。

青空とミカン

だいだい色の美しいミカン達。青空に映えます。

ここ、有田川町に自分自身が広告塔となり、イベントやSNSでミカンの魅力や可能性を発信しまくる農家さんがいると聞き、やって参りました。

その農園の名前は「みかんのみっちゃん農園」。
自分自身をミカンの非公認ゆるキャラに認定してミカンの魅力を発信しているとか。

それほどミカン愛があふれているみっちゃんって一体どんな人なのか? SNSで農園のファンや応援者を作る情報発信の方法とは? みっちゃんならではのこれからの農業の可能性や情報発信について聞いてみたいと思います。

それではみかんのみっちゃんにご登場いただきたいと思います!

みかんのみっちゃん登場

みかんのみっちゃんです!

■みかんのみっちゃん農園 小澤光範(おざわ・みつのり)さんプロフィール

みかんのみっちゃんプロフィール
和歌山県有田川町出身。1989年生まれ。大学卒業後、民間企業に就職した後、2015年に有田川町の実家にて江戸末期から続くミカン農家の6代目として就農する。農場では有田みかん・はっさく・レモン等60品種の柑橘(かんきつ)の生産を行っている。その一方、ミカンの魅力を全力で発信する非公認ゆるキャラ「みかんのみっちゃん」としての活動も行う。テレビ、ラジオ、ネット番組等、メディア出演やイベント出店はもちろん、SNSでもミカンの魅力発信を行い、Instagramのフォロワーは1万7000人を突破し、多くのお客さんやファン作りを行う。ミカンを通した「イッツ・ア・スモールワールド」「ワンピースのようなみかんのみっちゃん船団」を作るために奮闘中。

農家は継ぎたくなかった!

全身からミカン愛が伝わってくるみっちゃん。
見るからにただ者ではなさそうです。

農家である両親の背中を見て、「農業が好き! ミカンが好き!」という思いがあって、現在に至るのかと思いきや、当初は「農業が嫌い! 地元が嫌い!」という思いがあったそうです。

コバマツ

全身からミカン愛があふれているのがとっても伝わってきます! が、元々は農業を継ぐことは考えていなかったそうですね。どのようなことがきっかけで継ぐことになったのでしょうか?
大学卒業後、食品卸の会社に勤めて全国の生産地を回る仕事をしていたんです。その時出会った農家さんに「これからはSNSが普及し、お客さんと直接つながる農業ができるようになる。農家がスターになれる時代がすぐそこまで来ている。君は実家が農家なら絶対に継いだ方がいい」という言葉をいただいて、それが就農を考えるきっかけになりました。

みっちゃん

元は「農家なんて絶対に継ぐもんか!」とまで思っていたみっちゃん。
仕事を通して出会った農家さんの言葉がきっかけで、就農することを考え始めたそうです。

そして、まだInstagramやLINEが現在ほどは普及していない頃、2015年に6代目として就農しました。

自腹で規格外のミカンを配りまくる! 「みかんのみっちゃん」誕生!

コバマツ

実際に農業の現場に入り、異業種を経験したからこそ湧き出てきたアイデアなどはありますか?
規格外で販売できないミカンが多く出る現実を知り、悲しい気持ちになりました。規格に乗らないだけで、味は正規品と同じなのになと。何か活用することができないかと考えて、規格外のミカンを配って皆にミカンのおいしさを知ってもらおうと思い、土日や仕事が終わった後に大阪のイベントに足を運ぶことを始めました。

みっちゃん

就農してから目を付けたのが、悲しくも破棄されてしまう規格外のミカン達。
なんと、交通費も参加費も自腹でとにかく人が集まるイベントに足を運び、規格外ミカンを配ることを続けたそうです。多い日にはなんと、一日8つのイベントを掛け持ちで参加したとか。時には、東京まで車で出向いたそうです。行動力がハンパないです。

大阪でミカン配る話 イベント会場

Facebookで見つけたイベントに参加し、ミカンを配るみっちゃん(左下)

大阪でミカンを配った話 説明するみっちゃん

自ら皆にミカンを振る舞いながら、作物や農場について紹介もします

コバマツ

農作業後に、大阪まで車で往復するとは……(車で片道1時間30分)。すごい行動力ですね! 実際に配布してみて、皆さんの反応はどうでしたか?
予想以上に大反響でした。「ミカンってこんなにおいしかったっけ!?」「お店のと全然違う!」という声をいただきました。イベントに足を運んだことをきっかけに、直接ミカンを買いたいという方が増えていきましたね。イベントに足を運び始めて1年でFacebookの友達が5000人以上増えました。

みっちゃん

コバマツ

1年で5000人! それだけミカンを通して人に出会い続けたということですね。「みかんのみっちゃん」のキャラクターはどのようにして生まれたのでしょうか?
みかんのみっちゃんのキャラクターも、イベントで出会った仲間やSNSのフォロワーの皆さんが作り上げてくれたものなんです。ミカン農家だと一目で分かるように、「オレンジ色を身に着けたらどうか」「ミカンの被りものをしたらどうか」と、皆の意見を取り入れていくうちに、みかんのみっちゃんができあがっていました。

みっちゃん

大阪でミカンを配る話 みかんを販売するみっちゃん

ミカンをPRするみかんのみっちゃん

大阪でミカン配る話 畑にいるみっちゃん

生産者の顔のみっちゃん

コバマツ

自分自身のアイデアというよりは、周りの人の意見を取り入れて行動していった結果生まれたのが今のスタイルなんですね。

畑にいるときは生産者のみっちゃん、
イベントのときはミカンを宣伝するみかんのみっちゃんに変身する。
二つの顔を持ち合わせているんですね。

SNSが人の輪を広げ、ファンとつながるきっかけに

コバマツ

まずはリアルで出会った人達とのご縁を積み上げていき、フォロワーが増えていったんですね。現在はSNS上でどれくらいのフォロワーがいるのでしょうか?
イベントでミカンを配り始めて2年でFacebookの友人が5000人の上限に達してしまい、それからInstagramを始めて1万7000人の方にフォローしていただいています。

みっちゃん

インスタページ

みっちゃんのInstagramページ(2020年12月時点)

コバマツ

2015年に就農して、その2年後から……ということはInstagramは3年で1万7000人ということですね! 人とのつながりが増えていく中で、何か変化はありましたか?
SNSを通してミカンを購入してくださる方が増えましたね。それだけではなく、商品開発のお話や、メディア出演の依頼や、最近ではみっちゃん農園オリジナルのデザインもデザイナーの方に考えていただき、皆さんにお届けできるようになりました。

みっちゃん

SNSで輪が広がっていく話みっちゃんの加工品その1

みっちゃん農園の柑橘類を用いた加工品達

SNSで輪が広がっていく話ミカンケーキ

大阪の「LOAF Bakery(ローフベーカリー)」で作られた、みっちゃん農園の八朔(はっさく)と金柑(きんかん)ショートケーキ

SNSで輪が広がっていく話 ネットメディア出演

テレビ出演はもちろん、オンライン番組にも出演

SNSで輪が広がっていく話 みかんのみっちゃん 箱

みっちゃん農園オリジナルミカン箱。ミカン購入者にはこの箱で届きます!

コバマツ

イベントで出会ったリアルなつながりをSNSで深めたり、更なるつながりを呼び寄せる。そんなことの積み重ねが、ミカンの新たな購入者や、商品開発、オリジナルデザインにつながっていく。なんだか皆でみっちゃん農園を作り上げていっている感じがしますね!

ご縁で生まれた企画やアイデアをSNSで発信することで、更に「みっちゃん農園面白そう!」と興味をそそられ、人が集まってくるのではないかと感じました。

SNSで人手も確保! 集まる援農者

ミカンのご縁でさまざまなチャンスを引き寄せて、よりいっそう魅力的な発信や商品を作り上げていくみっちゃん。
その引力は援農者も引き寄せ、生産者ならば誰もが悩む、人手不足も解消してしまうようです。

コバマツ

これだけSNSでもリアルでも多くの人とつながりがあったら、畑に行ってみたい!お手伝いしてみたい!という人も多くいると思うのですが、どのような人に援農に来てもらっているのでしょうか?
最初はイベントで出会った人達がミカンにどんどん興味を持ってくれて、農園にも多くの人がお手伝いに来てくれるようになりました。
今年はSNSで援農者を募集したところ、100件近い問い合わせをいただきました。

みっちゃん

SNSで援農者が来る話人手募集の投稿

Facebookで援農者を募った投稿。シェア数63件。すさまじい発信力

SNSで援農者が来る話 SNS投稿コメント

投稿に対して早速コメントが入る。直接の知り合いではなくても、シェアの投稿を見た友人の友人から問い合わせが入る

コバマツ

人を集めようと必死な生産現場が多い中、100件の問い合わせはすごいですね。そんなに多くの問い合わせの中から、どのように声かけをしているのでしょうか?
僕としては、やはり「農業を学びたい」「農業の分野で今後活動していきたい」という意欲的な人だったり、今後も一緒に活動できそうな人に来てもらえたらうれしいと思っています。どのようなモチベーションで援農に来たいか?ということをヒアリングして来ていただいて、なるべくミスマッチがないようにしています。

みっちゃん

SNSで援農者が来る話  今年の援農者

今年集った援農者達

今回コバマツも援農で1カ月程畑に入ったのですが、毎日と言っていいほど、さまざまな人が収穫のお手伝いに来ていました。

みっちゃん農園に援農に来た理由を実際に聞いてみた

実際に今年来た援農者に、「どうしてみっちゃん農園に援農に来ようと思ったか?」をインタビューしてみました。

援農者1

大学2年生です。
オンラインイベントに参加したことがきっかけでみっちゃん農園さんの存在を初めて知りました。その後学生団体の取材で農園に直接足を運ぶ機会があり、取材を通してみっちゃん農園面白い!もっと関わってみたいと興味を持って。援農に来たいですという話をしました。
私は兵庫県から来ました。私はFacebookの援農者募集の投稿を友人がシェアしているのを見つけて、みっちゃんさんに直接連絡して来ることが決まりました。以前からミカンの収穫をしてみたくて。友人の知り合いの農家さんだったら安心して来られるなと思いました。

援農者2

援農者3

私は北海道から来ました。今年の春に、オンラインイベントでみっちゃん農園さんの存在を知り、SNSの投稿を見て活発に活動していて面白そうな農園だなと思い、援農に行かせてください!と連絡しました。

SNSの投稿がきっかけで援農者が集まるみっちゃん農園。日々の取り組みや農園の様子を地道に発信していくことで「この農園、なんだか面白そう!」と周囲の人達が感じ、更に人が集まっていくのではないかと感じました。

ちなみに今年は新型コロナウイルスの感染拡大予防のために、援農者には事前にPCR検査を受けてもらい、和歌山県に来ていただいていました。お互いに安心安全だと、理解したうえで働きたかったので。もちろん全員陰性です。ちなみに検査費は全て農園持ちです。

みっちゃん

これからSNSを活用したい農家さんにアドバイス

コバマツ

どこの農家さんもSNSを活用して「自分の農園のファンを増やしたい!」「繁忙期には援農に来てくれる人を募集したい!」と考えていると思うのですが、応援し続けられる情報発信のヒケツなどありますか?
地道なことですが、
SNSで投稿を「続ける」こと
コミュニケーションを「続ける」こと
これに尽きると思います。
メッセンジャーで問い合わせが来たら、なるべくすぐに返信するとか。
コメントも全部返すとか。

みっちゃん

コバマツ

当たり前に聞こえるかもしれませんが。難しいことですよね。私も知り合いの農家さんから「SNSで情報発信したいけど、農繁期になると現場が忙しくて発信が止まってしまう」という声を多く聞きます。
僕は全然大変と思っていなくて、楽しくてやっているんです!何より、お客さんや、応援してくれる仲間達とのやりとりをSNSを通して行うことで、より良いミカンを届けよう!と励みになります。

みっちゃん

現在は年間5000件以上のお客さんに直販を行っているそうです。ホームページ等の注文ページは無く、全てみっちゃんの個人FacebookかInstagramのメッセンジャーで一つ一つやり取りをしているとのこと。
時には発注作業をしながらお客さんからの注文を受けることもあるそうです。
それでも「お客さんとの他愛もない話が楽しいんです」と笑顔で話すみっちゃんの表情が印象的でした。

今年来た援農者の話笑顔のみっちゃん

「ミカンのご縁でつながる人と農園を作っていきたい。イッツ・ア・スモールワールドを作っていきたい」と話すみっちゃん

みっちゃんは、漫画のワンピースのように、ミカンを通して出会った人達が「みかんのみっちゃん船団」の仲間になっていく未来を思い描いています。場所は離れていても、ミカンのご縁で繋がった仲間達と協力し合いながら、今後更に挑戦をしていきたいそうです。

就農当初は自腹で幾つものイベントに参加しまくり、ミカンの魅力を直接伝え歩いていたみっちゃん。そんなリアルなつながりがSNS上でも応援者となり、更にみっちゃん農園の情報が拡散され、更に農園のファンを増やしていく。
リアルのつながりが強いからこそ、オンラインの発信力や巻き込み力が生まれてくる。

誰もができるSNSの発信だからこそ、誰もやらないくらいに、リアルで人と会う、お客さんや応援者とコミュニケーションを取るということが、必要なのだと感じました。

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