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年商1億超、脱サラ農家が自然栽培のネットワークを作った理由

山口 亮子

ライター:

年商1億超、脱サラ農家が自然栽培のネットワークを作った理由

自然栽培でコメや野菜を育て、通販を運営する株式会社そらが愛知県田原市にある。同社を創業し、2020年まで社長を務めた二村純(ふたむら・じゅん)さんは2000年に脱サラし、名古屋市から田原市に移り住んだ。就農当初から自然栽培を選び、07年からは自社の農産物だけでなく、同じ栽培基準の全国の農産物を通信販売で扱う。なぜ就農し自然栽培を選んだのか、なぜ全国の生産者の農産物を取り扱うのかを聞いた。

ハウスメーカーの営業職から農家に

「前職は農業とは無関係。田原市にも地縁はなかった」
こう話す二村さんは、名古屋市でハウスメーカーの営業職に就いていた。住宅展示場で待機し、来場者に声をかけ、脈がありそうな客に後日、訪問営業をする。
「拘束時間が長い割に、仕事をしている時間は短い。住宅はそこそこ売れたけれども、40歳を過ぎて、このままじゃいけないな、思い切って独立したいなと考えるようになった」
当時をこう振り返る。農業との接点は皆無だったけれど「食べることには興味があった」。コメと野菜を作りたいと思い、一般社団法人愛知県農業会議に相談しに行った。農業会議は、新規参入者や参入希望者の相談に乗ってくれるからだ。まずは自分に農業が合うか試したいと、土日だけ手伝いとして受け入れてくれる農家を紹介してもらった。
平日は仕事、土日に農作業という生活を3カ月続ける。その後、会社を退職し、農業法人で1年間研修を受けた。新規就農先を探す中で、温暖な気候で露地栽培での周年出荷が可能で、都市部にも近い渥美半島の旧赤羽根町(現・田原市)に農地が見つかった。

野菜セットの一例2

野菜セットの一例

有機農法から自然栽培にかじを切る

自然栽培を選んだのは、田原市ですでに15年間自然栽培を実践している先達に出会ったからだ。二村さんは、もともと有機農法を考えていたけれども、この農家から「これからは自然栽培の時代が来るから、有機よりもこっちでやった方がいい」と勧められた。自然栽培は農薬や化学肥料だけでなく、有機肥料も使わず、草や枯れ葉、樹木などのすき込みを行う。

自然栽培が「有機農業の先を行っている」と感じた二村さんは、有機ではなく自然栽培をすると決める。もう1軒の農家と3人でグループを作り、自然栽培で育てた野菜セットの販売を共同で始めた。まずは知り合いに声をかけ、販路を徐々に広げていった。
「この頃は、自分たちの野菜だけ販売していた。ただ、売り上げが頭打ちになり、これで食べていくのは難しいなと感じた」(二村さん)

自然栽培には、土地に合った野菜しか作れないという特徴がある。自分の農場で作れる野菜は、気候や土壌の制限があり、どうしても限られてしまう。二村さんは、同じ生産基準の他地域の生産者の農産物も、組み合わせて販売したいと考えるようになった。

ほかのメンバー2人に同意してもらえなかったため、07年にグループを解消し「そらの野菜」を個人事業として立ち上げる。二村さんと従業員1人、研修生1人の計3人での新たな船出だった。当初はそれまでの固定客が一旦失われたため、苦労した。けれども、「だんだん認められるようになって」販路が開けていく。11年、農業生産法人・株式会社そらを設立した。今は年商1億4000万円ほどの規模に成長している。

発送する野菜

全国の顧客に発送される野菜

客単価を2000円から7000円に

顧客の柱は、野菜セットの定期購入客だ。毎週、隔週、毎月といっためいめいの頻度で野菜セットを届ける。コメの定期購入客もいる。こうした固定客が7割近く、残り3割強が必要に応じて買い物をする客だ。売り上げの65%がリピーターによるものだ。

そらで生産した野菜とコメ、ミカンに加え、全国の農産物や調味料、地場の豚肉、魚などを幅広く扱う。これは、購入額に占める運賃の割合を引き下げたいからだと二村さんは説明する。
「自分たちの野菜セットだけでなく、コメや調味料などを組み合わせて、運賃の割合を低くしたい。そのために、手に入れたいものが一通りある品揃えを目指してきた。注文1件当たりの客単価は当初は2000円だったが、今は7000円くらいになっている」

通販サイトには、実にさまざまな商品が並ぶ。保美豚(ほうびとん)という田原市で抗生物質と遺伝子組み換え飼料を与えずに育てられた豚肉や、釜揚げしらすをはじめとする地元の魚まで扱う。魚はコロナ禍をきっかけに扱い始めた。

「網元から魚が売れないと相談され、取り扱いを始めた。渥美の漁港でいい魚を見繕っている。水揚げされたその日のうちに発送し、新鮮なものを届けることができる。安全なもので、顧客に喜ばれるものは、何でもやろうと思っている」(二村さん)

従業員たち

従業員たち。切り干し大根を作っているところ

新規参入は並大抵じゃない

そらは田んぼ1ヘクタール、畑1ヘクタールで生産する。従業員10人を擁し、30代の若手が多い。これまで20人ほどを研修生として受け入れ、うち10人が農業関係の仕事に進んだ。63歳になった二村さんは20年の末で社長を退き、新たな社長には娘婿の伊藤嘉規(いとう・よしのり)さんが就いた。21年以降のそらには、自分の代でできなかった新たな挑戦を続けていってほしいと期待している。

二村さんは、非農家からの新規就農を経験し、後に就農希望者を受け入れたり、相談に乗ったりした経験から、就農の難しさも痛感している。
「結婚して数年して、会社に疲れて辞めて、農家でもやろうかって30代くらいで農業を始める子が多い。非農家から就農して、楽しそうにやっている子を何人も知っている。ただ、楽しいのは、最初の5年くらいじゃないかな。最初のうちは楽しいかもしれないけど、いざ飯が食えるかというと難しいところもあるので、だんだんアルバイトを始めたり、違う道に進んだりするようになる」
農業をなりわいにするには時間がかかる。相当な覚悟を持って就農しないと、継続は難しいというのだ。
「今は農家が農産物が売れない、食べていけないと辞めていっている。そんな中、土地なし、経験なし、機械もなしでゼロから始めて、新たに飯を食えるようになるのは、並大抵のことじゃないと僕は思う」
ただ、最後にこう付け加えて笑顔を見せた。
「だけど、面白いけどね」

株式会社そら

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