家で野菜を育てよう! 窓際菜園とはなんだったのか
2020年7月に伊豆から東京へ引っ越してきた僕は
「東京でも農や植物に触れることで癒やし効果とオシャレを追求し、生活の幸福度を上げたい」
という思いから、家で植物を育てることにしました。
狭すぎるベランダが究極の選択肢「窓際菜園」を生んだ
しかし、東京の部屋のベランダが狭い。極狭。
そこで白羽の矢が立ったのが「窓際」でした。
「野菜が育つには光合成が必要。光合成には光が必要。窓際なら光が差し込むからOK!」
「オシャレ雑誌とか、木漏れ日で植物育ててる写真あるしいけるでしょ!」
と非常に軽く考えていたのです。
また、折しも新型コロナウイルスが猛威を振るっていたタイミングです。
物流が機能しなくなったら、都市部に住む人は食料を確保できなくなるのでは?という漠然とした不安が社会にあるように感じ、
「この窓際菜園がうまくいけば、都市部に住む人が自分で食料生産を始めるキッカケにもなるのではないか」と思ったのです。
こんな経緯から、僕の窓際菜園プロジェクトは始まりました。
「ヤシガラ」にこだわったワケ
窓際菜園では土を使わず、その代わりに「ヤシガラ」を使いました。
かいつまんで言えば、
- 都会では土が捨てられない
- 衛生面
の2点を理由に、ヤシガラ栽培に決めたのです。
「窓際の光」で、「ヤシガラ」を使えば清潔にかつオシャレに室内で野菜を育てられるのではないか!
とウキウキしていたのです。
しかし、この2つが結果として窓際菜園に影を落とすことになるとはこの時考えもしませんでした。
「苗」からの栽培は比較的順調だった
2020年の8月下旬、ハーブの「苗」を購入し窓際菜園を開始しました。
苗の土を落とし、ヤシガラの入った鉢に植え替え、お水をあげる。
ハーブはあまり肥料を必要としないものも多く、ヤシガラの水はけの良さも手伝って問題なく栽培することができました。
その時、僕は思ったのです。
これは、イケる!と。
5歳のムスメも、野菜栽培にどんどん興味を持ち「タネをまいて育ててみたい」と言ってくれるようになりました。
当初のもくろみに加えて、栽培の全てのプロセスが子どもの学びになるというメリットまで!
コロナ禍で外出がままならない今、自宅での野菜栽培は学びとエンターテインメントを融合させた新しいアクティビティーではありませんか!
まるで世紀の大発見をしたかのように興奮した僕は、いよいよ「タネ」をまくことにしました。
失敗の「タネ」をまいてしまった
2020年10月の初め、ムスメが選んだレンゲ草のタネをまきました。
数日後に発芽。
しかし、その発芽率が非常に悪いのです。
さらに、写真を見てわかる通りナナメに伸びようとしています。
ナナメに伸びることについての有力な仮説、それは「光不足」です。
もしかしたら窓際菜園は光が不足しているのでは?と思い、苗から育てていたミントを確認してみたところ、しっかり徒長気味ではありませんか。
徒長の原因はいくつかありますが、窓際菜園の栽培環境だともっとも可能性が高いのは「光不足」です。
「窓際なら光が差し込むからOK!」
という僕の甘い仮説は、にわかに疑惑の香りがしてきました。
窓際の光量は栽培には足りないという事実が発覚!
ここで「初めて」客観的な数値を確認しよう!ということで照度計を購入し、測定してみると……。
植物にもよりますが、植物が成長するために最低限必要な光の強さである光補償点をようやく超えるくらい。
一方、外に出るとこの数値。
数値に大きな違いがあります。
窓際菜園の光では植物は育たないのかな?
初めて疑問に思ったので植物について調べてみると、植物には成長するのに光をたくさん必要とする「陽生植物」、そこまで光を必要としない「陰生植物」とがあることを知ったのです。
※ 「半陰生植物」という陽生植物と陰生植物の間に位置する植物もあります。
光量不足対策のLEDライトを購入! ヤシガラと栽培土で比較実験!
窓際菜園で初めてまいたタネは、光不足により失敗。
そこでインターネットで3000円ほどのLEDライトを購入し、改めて栽培実験を試みました。
また、前回は発芽率が非常に低かったので栽培土とヤシガラの発芽率も比較してみることに。
植えたのは「ビーツ」と「ルッコラ」です。
窓際菜園にセットし、LEDライトを1日12時間照射しました。
そして40日後の姿がこちらです。
まず、ルッコラ
左の培養土にタネをまいたものと比較すると、右側のヤシガラにまいたものとの発芽率の大きな違いがわかります。
しかし、早ければ40日ほどで収穫が可能なルッコラとしては、成長が遅すぎます。
成長できるギリギリの光量しか得られていないのでしょう。
続いて、ビーツ
こちらも発芽率の違いが顕著です。ヤシガラの発芽率は培養土にまいたもののおおよそ半分から1/3程度でしょうか。
また、特にビーツはLEDを使っているのにもかかわらず、レンゲ草の時と同様に光を求めて窓側に向かってナナメに伸びているのがわかります。
しかも40日でこの程度の成長しかしないなんて……。
ということで、光については「窓際」で「LEDを使った」にもかかわらずギリギリ成長できるほどの光量しか得られないという結果になりました。
ヤシガラが失敗の原因となったワケ
ヤシガラの特徴として「排水性、保水性の両方に優れる」ということがあげられます。
ハーブ苗への水やりも数日に一度、鉢を持ち上げた時に軽く感じたらあげる、というようにしていました。
それでハーブは順調に育っていたのでヤシガラの保水力はあるのだろうと思われます。
しかし、種から育てるのにヤシガラは向いていませんでした。
発芽に必要なのは「タネが発芽までに適切な水分を得られ続けること」です。
ヤシガラは土と違って粒が大きく粒同士が密着しません。
そのためタネの周りに隙間(すきま)ができて、発芽に必要な水分が得られなかったのではと推測しています。
ヤシガラにタネをまくときには面倒だけど、ひと手間かけるのがおススメ
ヤシガラにタネをまく場合には種まき後に
- ティッシュなどをかぶせてそれを常時濡らしておく
- こまめに霧吹きなどで表面に水分を与える
といった工夫が必要かもしれません。
しかしこれは、ズボラで忙しいアラフォー主夫の僕や栽培初心者には難しいですよね。
部屋で野菜を育てるために必要なもの・こと
というわけで、今までと同じやり方ではタネから野菜を育てるのは不可能である
と結論づけた僕。
今回の窓際菜園での経験をもとに、部屋(室内)で野菜を育てる時に必要なもの・ことをまとめてみます。
- 育てたい野菜の特徴を把握する
- 育てたい場所の光量を知る
- 必要に応じて適切なLEDを選ぶ
育てたい野菜の特徴を把握する
部屋で野菜を育てたいと思ったら、少し踏み込んで「どんな野菜を育てたいか」を考えましょう。
そしてその野菜が「陽生植物」なのか「陰生植物」なのか、部屋の環境で育てられるかを調べてみましょう。
以前、ガーデニングショップのオーナーさんに取材した時、このようなことを言っていました。
「植物は生き物だ」と。
生き物である以上、生きていくのに適切な条件や環境というのが存在します。
スーパーで一年中いろんな野菜が手に入る今だからこそ
「トウモロコシは暑いところで光をガンガンに浴びないと育たないんだ」
「シソってちょっと日陰でも育つんだね」
ということを知ることは、室内で野菜を育てるためだけでなく、今では縁遠くなってしまった食料生産そのものを知る意味でも大事なのかもしれません。
育てたい場所の光量を知る
窓際菜園を始めた当初、僕は「窓際だから光は十分だろう」と勝手に思い込んでいました。
しかし、現実は違ったというのはこれまで書いてきた通りです。
これから窓際など室内で野菜を育てようと思った人は、ぜひその場所の光量を測ってみてください。
可能なら日の出から日の入りまで1時間ごとに測るのがおススメです。
照度計は数千円で購入できますし、スマートフォンには無料のアプリもあるようです。(2020年12月時点)
野菜栽培で重要なのは「トータルの日照時間」。1時間だけ強い光が当たっても、それ以外は光が当たらなければ生育は悪くなります。
僕の部屋は西向きで、13時から15時ごろまでは強い西日なのに午前中は全く日光が入らないため、日照時間も足りませんでした。
ぜひ僕の二の舞いにはならないようにしてください。
必要に応じて適切なLEDを選ぶ
光が不足していると、植物は育たないので、光の量を何かで補う必要があります。
よく使われるのはLEDライト。
しかし、LEDライトも適切なものを選択しないとやはり(僕のように)うまく育ちません。
前回の記事で「LEDの申し子」(と僕が勝手に思っている人)にインタビューをし、LEDライトの選び方をレクチャーしてもらいました。
僕のように適当に選んだりせず、LEDを探すのも一つの楽しみと割り切って、ぜひ納得のいくものを選んでください。
そして室内野菜工場へ。
室内で植物を育てるにはかなり厳しい条件があることを、今回の窓際菜園で学びました。
でも僕は、家で野菜を栽培することを諦めてはいません。
次の狙い目は、ズバリ「壁際」です。
壁に棚を作り、適切なLEDライトを照射して野菜を栽培します。
え?
野菜工場じゃないかって??
そうなんです。
ですが、「緑を見ることによる癒やし効果」も感じたい僕としては、野菜工場のメカメカしい雰囲気はその対極にあります。
どうにかメカメカを抑えつつ、タネから野菜を栽培しその風景を日常に調和させてQOLを上げていく、これが当面の目標になりそうです。
今までアラフォー主夫の窓際菜園をお読みいただき、本当にありがとうございました!