少量多品目農家の悩み、野菜は洗うべきか洗わざるべきか~武井が野菜を洗わない理由~

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少量多品目農家の悩み、野菜は洗うべきか洗わざるべきか~武井が野菜を洗わない理由~

連載企画:営業しない農家の売上アップ術

少量多品目農家の悩み、野菜は洗うべきか洗わざるべきか~武井が野菜を洗わない理由~
最終更新日:2021年01月28日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。このシリーズでは売り上げを伸ばすためのちょっとした工夫をお伝えします。

出荷する野菜は洗うべきか、洗わざるべきか。少量多品目農家であれば、一度は悩んだことがあるテーマではないでしょうか。私は結論に達するまで17年かかりました。現在、タケイファームでは基本野菜を洗いません。ただし、洗わないことが正解なのではなく、洗うことにも正当な理由がありますので、今回は改めてこのテーマについて考えてみたいと思います。

野菜は洗うべきか、洗わざるべきか

「出荷する野菜を洗いますか? 洗いませんか?」
今まで何人の農家に聞いたことでしょうか。この中には、私の尊敬する、売り上げを確保し世の中に名前が知られている農家も2人いますが、こちらも洗う派と洗わない派に分かれました。結果、答えは農家それぞれ、どちらが正解という結論に達することはありませんでした。
この素朴な疑問がわいてから約17年間、悩みながらも洗い続けてきたのですが、現在タケイファームでは基本野菜を洗っていません。今考えると、「洗うことに対して疑問を持ち続けていた」ということです。

里芋

土付きのサトイモ

洗うと野菜が傷む?

何もわからず、何も知らずに始めた農業でしたが、スーパーで野菜のチェックをしたり、野菜の販売サイトを検索したりして、何の疑問を持つこともなく始めたのが、この「野菜を洗う」という作業でした。
しかし、野菜を知るにつれて洗うことのデメリットも見えてきたのです。

野菜を洗うと見た目はきれいになりますが、野菜が傷むこともあります。収穫後の野菜はまだ生きています。野菜自身が傷んだ部分を修復しようとしてストレスを感じ、味も落ちます。
このようなストレスを野菜に感じさせないために、収穫してから梱包するまで、私はできるだけ野菜に触れないようにしています。

野菜を洗うという作業は、生産者が野菜を商品と考え、消費者に購入してもらうための手段の一つです。種を選ぶ段階から、おいしい野菜作りを目指しているのに、最後の最後で自らが味を落としているのではないかという考えが長年抱えていた私の疑問だったのです。

そして、洗わなくても受け入れられる販売チャンネルとして、タケイファームが選んだのはレストランでした。

タケイファームが野菜を洗わない理由

17年間悩んだ末、タケイファームの主な販売先がレストランになったことで、「野菜を洗わない」という結論に達しました。なぜレストランに販売する際には野菜を洗わないほうが良いのでしょうか。

レストランのシェフには意外と土付きが喜ばれる

畑にはシェフの皆さんが見学にやってきます。中には、土付きのままのニンジンをかじったり、鼻に近づけて香りを嗅いだりします。畑をイメージするのでしょうか、意外にもレストランは土付きを喜びます。取引先には、ホテルの中のレストランもあり、衛生上、土をホテルの中に持ち込むことを禁止しているところもあります。私は土付きのまま送るという考えがありますので、その場合は、野菜がホテルに到着してすぐの購買課で洗う対処がされています。

野菜の香りを伝えたい

野菜を届けることで、生産者は、味だけでなく季節感や野菜のビジュアルも伝えることができます。そして、実はあまり他の生産者が注目しないところが「香り」です。シェフは料理するうえで香りを大切にしています。野菜を洗わずに収穫したままの状態をキープすることで、その香りも落ちにくくなります。

土付きニンジン

ニンジンの香りを伝えたい

直送なのですぐに使ってもらえる

収穫した野菜は中間業者を通さずレストランに直送しますので、届いた野菜はすぐにプロの手によって処理されます。土付きの場合、時間がたって乾いてしまうと土が落ちにくいのですが、時間の経過も通常の流通よりは短いのでこの点はあまり気になりません。

洗わないことによるメリット~タケイファームの場合~

作業効率のアップ

野菜セット、マルシェでの出店、百貨店への販売。これらは、タケイファームがかつてレストランへの出荷とともに行っていた販売チャンネルでした。この3つの販売チャンネルの共通点は「野菜を洗って出荷する」ということ。一般消費者向けなので、洗うということが当たり前の作業になっているのです。就農当時、長ネギとダイコンを市場へ出荷していた両親の手伝いをしていました。うちにはダイコン洗い機というものがあり、市場へ出荷するために収穫したダイコンを洗っていました。今改めて思うと、出荷する野菜の種類に応じて洗うための便利な機械が存在しているのです。一般的に野菜は洗うというのが普通なのでしょう。
少量多品目の場合、出荷する野菜はたくさんありますので、野菜ごとに洗う機械を買いそろえることは現実的ではありません。したがって、基本は手洗いとなります。
土付きの野菜が受け入れられるレストランへの販売は、この作業をしなくてもよいので、時間の節約、労働力の軽減になり、結果、作業効率がアップしました。
ほんの数年前まで、野菜を洗うべきか洗わざるべきかと悩んでいたのは、大量に出荷が必要となる百貨店への販売で、ニンジンを何百本も手洗いで行いモヤモヤしていた頃です。スタッフが何人もいればそんな疑問も浮かばなかったかもしれません。限られた人数と時間の中で私の農業から野菜を洗うという選択はなくなりました。

洗う前のニンジン

手洗いする前のニンジン

他との差別化に

野菜を洗わないことにより、作業効率のアップ以外の副産物も発生しました。レストランが野菜を購入するのは市場や八百屋が多いので、そこへ出荷する生産者は大抵洗っています。多分、これは昔からのルールなのだと思います。タケイファームから届く洗われていない野菜は、結果、他との差別化につながったのです。

洗う派の人々、その理由

一般消費者向けの野菜は洗った方が好まれる

店頭では、ほとんどの野菜が洗われて販売されています。この販売スタイルは消費者にとっては至って普通のことで、気にする人はいないでしょう。私が百貨店に出荷していた頃、同じコーナーに洗われていない土付きのダイコンがFG袋に入って陳列されているのを見かけました。収穫した時点で既に濡れていたのか、野菜から水分が出て結露したのかわかりませんが、袋の中はドロドロになっていて、見た目に汚らしいダイコンとなっていました。
また、野菜セットのお客さんから直接聞いた話ですが、「土をシンクの中に持ち込みたくない」という意見もありました。
一般消費者にとっては、味や香りよりも、見た目や毎日の調理の手間を優先している人が多いという事です。中には土付きの方が新鮮というイメージがあるのか、受け入れる人もいますが、圧倒的な確率で洗った野菜の方が好まれます。

洗ったカブ

洗ったカブ

鮮やかな色の野菜は洗うべき

最近では、カラフルな色の野菜が多く栽培されるようになりました。その野菜を販売するために色をPRする必要がある場合は、きれいに洗ってある方がお客さんに伝わります。

ミラノダイコン

紫色のミラノダイコン

タケイファームも葉物を洗ってレストランへ出荷することがある

タケイファームがサラダ用の葉物野菜をレストランへ出荷していた時期がありました。その野菜を見たシェフからは、「武井さんの野菜はピンとしていて鮮度が明らかに他と違い日持ち期間も長い」と言われていました。「特殊な薬でも使っているのですか?」と冗談で言われたこともあります。
私は、極力畑で生きている状態の野菜を届けたいという思いが強いのですが、葉物野菜は収穫後あっという間にしなびてしまい、元気がなくなります。暑い時期ですと収穫して10分も経たずにしなびてしまう時もあるのですが、それらの野菜を葉先がピンと復活するまで水に浸してから出荷するのです。それによって、レストランでは状態の良いまま使うことができます。
仕込みなどで忙しいレストランの厨房で、先までピンとした葉物に戻す時間は意外となく、残念なことに、レストランで黄色くなりかけている野菜やしなびてしまった野菜が飾られてお皿に出てくることがあります。
野菜を洗うというよりも、畑で生きている状態まで復活させるということがタケイファームの出荷スタイルとなっています。

レストランのサラダ

葉先までピンとした野菜を使ったレストランのサラダは見た目にも美しい

シェフいわく、海外のレストランでは

あるフレンチのシェフが「フランスでは野菜は洗っていないのが普通。洗った野菜を直接お店に届けたらビックリしますよ」と言っていました。確かに私がフランスのマルシェで見た野菜は洗っていないものが多かったような気がします。海外で修業をしていたシェフにとっては、野菜は土付きのままが普通。この話を聞けば、タケイファームの野菜がシェフに受け入れられるのも納得です。

フランスのマルシェ

フランスのマルシェ

販売先のニーズを考える

洗うべきか洗わざるべきか、どちらにも正当な理由があります。決してどちらかが正解というのではなく、販売先や自分の労働効率によってベストなものを考えて決めるべきなのです。決めるのは農家自身です。選ぶ基準を明確にして選択を間違えないことが大切です。

おまけの虎の巻

葉菜類や果菜類、根菜類にイモ類。それぞれの野菜に適した販売の方法があります。一般消費者、レストランと関係なく、私自身は、根菜類やイモ類は洗わない方が良いと思っています。いずれにしても、自分の考え方をお客さんに伝えることができ、販売につながれば、それが正解となるのです。

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