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高校生が本気で考えた、農業関係人口を増やす方法とは?

高校生が本気で考えた、農業関係人口を増やす方法とは?

若い世代に農業に関心を向けてもらうには、どうすればいい? 高校生自身がこのテーマを真剣に考え、企画力や問題解決力を養うユニークな授業が、単位制・通信制課程のN高等学校(学校法人角川ドワンゴ学園)で行われました。“やわらか頭”から生まれた農業界を救う秘策とは――?

「若い世代に、農業に興味を持ってもらう」。
大人はそう簡単に言いがちだけど、果たしてその施策で当事者の心を動かせるのか? しがらみのない当事者が考えたら、どんなアイディアが出てくるのだろう――?

好奇心旺盛な10代たちが、現状の課題を解決しながら1次産業を盛り上げることを目指し、「農業遺産を後世に継承する6次産業化アイディア」「10~30代の男女に関心を抱いてもらうための、農業をおもしろくする新しいアイディア」について3カ月間考え抜きました。プロジェクトの集大成として行われたオンライン発表会から、個性あふれる企画を紹介します!

「鉄分多めの循環型農業」で、妊婦向け野菜を生産

代々木キャンパスチーム
「農業遺産を後世に伝える6次産業化アイディア」をテーマにした発表会では、全国のN高キャンパスに通う生徒61組が農業遺産選出地域を任意で選び、その土地の農業を盛り上げる施策をプレゼンテーションしました。

代々木キャンパスEチームが選んだ島根県の奥出雲地域では、SDGsという言葉が生まれるはるか昔、500年以上前に始まった循環型農業が綿々と続いています。
映画「もののけ姫」にも登場した「たたら製鉄」が唯一現存しており、製鉄のために切り崩された土地を活用した農業や畜産業も盛んです。

たたらの灯

たたらの灯(あかり)(島根県奥出雲町)

奥出雲の循環型農業は日本農業遺産に選出されていますが、全国区での知名度はさして高くありません。次世代の農業従事者の減少という課題も存在します。奥出雲の循環型農業を周知することで、①商品価値が上昇する②次世代への継承が容易になる③人を呼び込む原動力を作ることができる と考えました。
そこで生み出したのは、たたら製鉄の副産物の鉄滓(てっさい)を含んだ餌を牛に与え、そのふんを肥料に活用して野菜を栽培すること。育った野菜は、鉄分を多く含む「鉄滓野菜」ブランドとして売り出すというアイディアです。

鉄滓野菜のプレゼン

奥出雲では、刀鍛冶をするときに出る鉄滓は安産祈願のお守りとされている(代々木キャンパスEチーム作成)

ターゲットは、鉄分不足による貧血に悩まされがちな妊婦です。鉄滓野菜を「okuizumo(おくいずも)」の名前でブランド化し、レシピサイトや流通業者と連携することで「妊婦の食材といえばokuizumo」を目指して周知。地域で加工品の生産まで行うことで地域農家の所得を向上させ、若い世代のUターン就農を呼び込むことを狙いとしました。

なお、2020年11月下旬に開催した「エコプロ Online 2020」(主催:日本経済新聞社など)のプログラムにおいて、代々木キャンパスEチームによる発表は見事1位に輝きました。

評価者コメント

  • 「実際に地域の人が生かせるような既存のシステムをうまく当てはめている、着眼点が非常に良い」(農林水産省・原孝文さん)
  • 「地域内循環の農業の例はあるが、妊婦が健康になることで将来の少子化解消にもつながるという、循環型農業の魅力を感じさせる」(6次産業化エグゼクティブプランナー・仲野真人さん)。

日本茶を香水に! 茶(サ)ウナで知名度向上⁈

急須でお茶を飲む文化が薄れゆき、消費が減少傾向にある「茶葉」の意外な活用を通した企画も印象的でした。

久野協のお茶畑

久野脇のお茶畑(静岡県川根本町)

静岡県川根本町は、世界農業遺産に認定された茶園周辺に生えた草を刈って茶の木の根元に敷く「茶草場(ちゃぐさば)農法」が盛んな地域です。他の産地と同様に名産の「川根茶」の茶価が需要の低下とともに低迷。耕作放棄地の増加、地域の高齢化といった課題にあえいでいます。

この地域を題材に選んだ千葉キャンパスDチームは、まずは川根茶の認知度向上を目指し「香りが強い」という特性を生かした香水ブランドを発表。香水を軸にしながら、流行中のサウナやグランピングと川根茶を掛け合わせた施設を作ることも提案しました。

千葉キャンパスDチーム作成のプレゼン

日本の四季をイメージした香りや、名産物の特徴を持つ香りを、お茶に掛け合わせた香水のイメージだ。(千葉キャンパスDチーム作成)

香水は細いボトルに入れ、洗練されたイメージを演出。
町内に作るグランピング施設では、茶葉を使ったリラックス効果の高いサウナや、自分だけの香りが作れる調香体験が楽しめます。多くの人に川根本町へ足を運んで興味を持ってもらうことで移住促進につなげ、最終的には人口増やブランド力向上による茶価の上昇を目標にしています。

グランピング施設

評価者コメント

  • 「お茶はコロナ禍の影響も顕著に受けている。種類ごとに香りの特徴があるので、香水に生かせるだろう。関係人口の増加につながる良いアプローチだと思う」(原さん)
  • 「一番茶を急須で飲む文化がなくなって茶農家が困っているなか、単価が上がる香水として利用するのは、付加価値を高める良い発想」(仲野さん)

「ゲーム」は最強のきっかけメーカー

12月には別プロジェクトとして「農業をおもしろくする新しいアイディア」をテーマにした発表が行われました。そこで目立ったのは「ゲーム」に関する発表でした。

福岡キャンパスの生徒さんが発表したのは、「ゲームで産業従事者に転生しませんか?」がコンセプトのゲームに関する企画案。ゲーム好きの大学生を対象に想定しています。

ゲームは、冒頭で1次産業の職種(農業、漁業、林業)からやってみたいものを選択し、その職業のリアルな一日を過ごしていくことで進んでいきます。

エンディングjpg

最終的に得た純利益によって、訪れるエンディングは変わる想定。301万円を超えないと……(福岡キャンパスの生徒作成)

最終的に手元に残った資産と純利益の額で、エンディングが決まります。ときにはバッタの大量発生や洪水といった自然災害も発生し、適切な対応で切り抜けられたかで収益が変動する仕組みです。

ターゲットイメージの変化

1次産業に対してステレオタイプなイメージしか持っていなかったプレーヤーも、よりよいエンディングに導きたいがために産業についてたくさん調べるようになり、自然と興味や理解が促進されることが期待できます。ゲストの農研機構・波積大樹さんも「すぐにでも開発してほしい」と太鼓判を押していました。

廃団地が一日遊べる観光農園に

同じく多かったのが観光農園や農業体験に関するアイディアでしたが、そちらもオリジナリティーと夢があるものばかり。

江坂キャンパスのチームは、廃団地を改装して作る、大学生がふらりと友達同士で寄っても楽しい観光農園を考案しました。全国に増えつつある空き家を解消し、SDGsの構成要素「住み続けられる街づくり」も同時に実現することを意識したといいます。

ハーベストルーム

廃団地を活用した観光農園「Harvest Room(ハーベスト・ルーム)」のイメージ図(江坂キャンパスチーム作成)

5階建ての廃団地4棟を想定し、LED水耕栽培施設や、メロンやイチゴ狩りのコーナー、収穫した野菜を調理してもらえるレストランや利用者自身が使えるキッチン、直売野菜や家庭菜園キットを買えるショップやイベントスペースなどを設け、一日遊べるスポットを構想しました。
心理的にも物理的にもより身近な施設で、農に触れて就農に関心を持ってもらうことを狙いとしています。

ほかにも北海道の産地に、スマート農業ロボットだらけのホテル「ロボラルリゾート」を建設し、機械を使った農業の可能性を知ってもらうという企画も飛び出しました。
「かっこいい農業で若者に興味を持ってもらおう」。よく耳にするフレーズですが、受け手側の感性に関心を向けることが、まず求められていると感じました。
自由な発想から産声を上げた妙案の数々に、いつの日か現実世界で出会えるかもしれません。

N高等学校・S高等学校

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