「職業選択の一つ」として農業は確立。異業種の経験を生かし、稼ぐための就農の始め方

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「職業選択の一つ」として農業は確立。異業種の経験を生かし、稼ぐための就農の始め方

「職業選択の一つ」として農業は確立。異業種の経験を生かし、稼ぐための就農の始め方
最終更新日:2021年03月18日

福島県中通りの中東部に位置し、田村市、三春町、小野町からなる田村地域。標高250〜600m程の中山間地域特有の昼夜の寒暖差を生かし、トマト、ピーマン、ブロッコリーなどの園芸作物の生産が特に盛んです。夏は涼しく、作物を美味しく実らせることに加え、冬の連続降雪が少ない地域特性のため農産物を長期間出荷することが可能なエリアです。近年、田村地域では20代から30代の若者が続々と新規就農を果たし、地域を盛り上げています。UIターン就農や異業種からの就農を支える『たむらの新・農業人サポート協議会(田村地域就農支援プロジェクト)』の細やかなサポート体制と、首都圏からUターン就農したミニトマト農家の現在にスポットを当てます。

世田谷から田村市へUターン就農した白岩洋さん

大学卒業から14年間、映像の編集や配信を行うポストプロダクションに勤務した白岩洋(しらいわ・ひろし)さん。会社にも、仕事にも、東京での暮らしにも不満はありませんでしたが、常に「実家をどうしようか」ということが頭にありました。いずれ戻るなら、両親が元気なうちに生活の基盤を作りたいと、Uターンを決意します。

Uターン後の仕事を考えていた当初、「農業は全く選択肢になかったです」と、農業についてとても楽しそうに話す白岩さんからは信じられない言葉が。

農業をなぜ次の仕事に選んだのか話をうかがうと、「稼ぐための就農の始め方」が垣間見えましたので紹介します。

福島県田村市で『狼ノ神農園(おいのかみのうえん)』を経営する白岩洋さん

福島県田村市で『狼ノ神農園(おいのかみのうえん)』を経営する白岩洋さん

白岩さんが転職先の候補としていたのはウィスキー蒸溜所や地域おこし協力隊でした。しかし、雇用される酒造メーカーの社員という立場で果たしてどこまで製造に関われるのか、地域おこし協力隊は、その先につながる何かを探す単なる通過点ではないかと模索する中、何気なく参加した就農イベントが、その後の白岩さんの考えを変える大きなきっかけとなります。

田村地域には農業のみで生計を立てている先輩や、20〜30代の若手農家が思っていた以上に多く、そして新規就農者の育成や助成金などの手厚いサポートがあることを知ります。

出荷前の「サンチェリーピュアプラス」

出荷前の「サンチェリーピュアプラス」

サポートや助成が充実している今のうちに農業を始めることに「アドバンテージがある」と感じ、「農業も職業の選択肢の一つとして確立している」と、候補としていた転職先から一気に就農へ方向転換。祖父が葉たばこの専業農家で、実家には土地があり、使える農業機械が残っていたこともあり、「転職」としての就農に向けて大きな一歩を踏み出すことになりました。

無理なく続けられる、自分にとって「最適な農業」を

2020年4月、白岩さんは新規就農を果たします。研修中は、ミニトマトではなく通常サイズのトマトやさまざまな野菜を栽培したいと考えていましたが、消費動向や将来性を考え、経営的視点からミニトマトを選択。就農初年度は、研修先のJAから借りた8aのハウスで、ミニトマト「サンチェリーピュアプラス」を生産し、就農2年目となる2021年春からは、新設した8棟24aのハウスで主軸のミニトマトに加えフキノトウ、ブロッコリーの生産を始めます。

先輩就農者や同年代の就農者と積極的にコミュニケーションを取ることで栽培技術や知識も得られます

先輩就農者や同年代の就農者と積極的にコミュニケーションを取ることで栽培技術や知識も得られます

作付面積が一気に3倍となることから、生産体制についての話をお聞きすると、「両親が手伝ってくれることになり人員も3倍になります。現時点での無理ない最適な規模拡大だと考えています」と、白岩さんは話します。さらに白岩さんは「雇用」についても最適化を実現。収穫期には、親戚やお手伝いの方の空いている時間を組み合わせ、朝の3時間だけ、夕方1時間だけというように、お互いに無理なく効率的に作業ができる工夫をしています。

「点と点をつなぐことで線になり、線と線をつないで面にすることで、結果的に人件費の削減もでき、収益アップにもつながっています」。

生産時期も、暖房コストがかからない春から秋に限定するなど、無理なく続けられる方法で、白岩さんにとっての「最適な農業」の実現を目指しています。

白岩さんの就農を支えた田村地域独自の支援体制

田村市、三春町、小野町、 JA福島さくらたむら地区本部、田村地方農業士協議会、田村「農」ネットワーク、福島県県中農林事務所田村農業普及所などで構成する『たむらの新・農業人サポート協議会(田村地域就農支援プロジェクト※1)』は、就農希望者の相談から研修、就農へとワンストップで支援する組織です。

「就農希望者一人ひとりに支援チームを組織し、連携・情報共有することで各分野の専門家が着実な就農へと導きます」と、『福島県県中農林事務所田村農業普及所 経営支援課』の加藤磨璃子(かとう・まりこ)さんはプロジェクトの特徴について教えてくれました。

※1:田村地域就農支援プロジェクトは、各種事業を活用し、就農相談会への出展や研修会開催等の取り組みを行う同協議会と構成員を同じくする団体です。

きめ細やかなプロジェクトのサポート

各分野の専門知識等を有する市町、JA、県がネットワークを通じて連携することにより、作付品目の選定、研修先の斡旋、作付品目や規模に合った農地や住まいの紹介のほか、ハウスや農業機械のレンタルなど、就農をきめ細やかにサポートします。また、田村地域で研修できない作物を希望する相談者には、福島県内の他エリアを紹介するなど、無理のない就農へと導く総合的な支援を行っています。

2018年秋頃からプロジェクトメンバーとして白岩さんを担当している加藤磨璃子さん

2018年秋頃からプロジェクトメンバーとして白岩さんを担当している加藤磨璃子さん

白岩さんはまず、2019年4月から『福島県農業総合センター農業短期大学校』、『株式会社JAアグリサポートたむら』での研修を開始しました。異業種かつ未経験から就農することへの不安について尋ねると、「仕事の根本は一緒だと思います。いつまでに、何を、どのようにやるかということに変わりはありません。ただ、「映像」が「作物」に変わっただけです」と白岩さんは話します。スケジュールを管理し、日々改善するという面はどんな仕事にも共通し、前職での経験は農業にも十分に生かされています。

農業には、作物を育てるスキルに加え経営センスも必要です。「どういう農業を目指すか、自分なりのビジョンをしっかりと持つことで、スケジュール管理、シフト管理、経理、マネジメントなど、異業種でのさまざまな経験が生かせるフィールドです」と白岩さんは続けて話します。

2021年に新設した自動開閉式のハウス。無理のない規模で経営拡大をしています

2021年に新設した自動開閉式のハウス。無理のない規模で経営拡大をしています

就農直前の2020年2月には、アメリカ研修にも参加しました。農業が職業として確立され、利益を上げているアメリカの農業スタイルは、「日本とは経営規模も農業に対する考え方も大きく違い、とても刺激になりました」と当時を振り返ります。それまで、農業は一人で全部やらなければいけないと思い込んでいたという白岩さん。

地主、ほ場管理者、オペレーターというように専門性を持って役割分担するアメリカ式農業に触れ、できないことがあってもいいし、できるようにするために専門性のある人と関わりながら経営していけばいいと肩の力が抜け、専業でも兼業でも、自分に合った「長く続けられるような始め方をすればいい」と考えられるようになりました。

現在は、「農業で前職の収入を超える」ことを目標に、主軸のミニトマトで収益を確保することに専念しています。将来的には、規模拡大や6次化も具体的に考えていきたいとのこと。さらに、「東京には田舎がない人が多いので、前職の仲間や友人が、ここでキャンプや雪遊び、農業体験が楽しめる、みんなの田舎になればいいなと思っています」と、「白岩パーク」構想についても活き活きと話してくれました。生業として選んだ農業から、サラリーマン時代とは違う楽しさや夢が生まれています。

ビジョンが明確だからこそできた的確なサポート

取材中にたくさんの笑顔をみせてくれた白岩さんと加藤さんからは信頼関係がうかがえます

取材中にたくさんの笑顔をみせてくれた白岩さんと加藤さんからは信頼関係がうかがえます

白岩さんは、職業選択として農業を選び、農業で稼ぐというビジョンが明確でした。例えば、就農までの計画作成も、アドバイスをそのまま受け入れるのではなく、常に自分の意見を持って何度も修正し、自分のやりたい農業を具現化していきました。具体的なビジョンを示してくれたことが、協議会の的確なサポート提供につながった、と加藤さんはいいます。

「自分が具体的に動くことで、協議会からは具体的な答えを提示いただきました。自分一人のために、市、普及所、JAなど何人もの専門家が動き、支えてくれたことはとても大きかったです」と、白岩さんは当時を振り返ります。

「僕は専業を選びましたが、兼業でもいいし、好きなものだけ作るでもいいし、誰かと比べる必要はなく、オンリーワンを目指したらいいと思います」と白岩さんは続けます。自分のビジョンを明確にし、それを続けられるような始め方をすれば、自分が思い描いた農業へとつながっていくと話してくれました。

就農を考えている方、「お腹も心も懐も満たされる」就農を全力でサポートする『たむらの新・農業人サポート協議会(田村地域就農支援プロジェクト)』と一緒に、本気で農業を考えてみませんか。

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よくある就農相談Q&A

Q1/初期投資はいくら必要ですか?

A/作付け品目や規模によりますが、種苗、肥料・農薬、支柱、動力噴霧器・軽トラックなどの購入を想定して、露地栽培で約300万円、ハウス栽培で約1,000万円が一般的な目安です。

白岩さんの場合/
自動開閉式ハウス7棟、育苗ハウス1棟、ミニトマト選別機一式、防除用動力噴霧器、灌水システム、遮光カーテンを導入し、トータルで2,700万円支出。
そのうち3/4に当たる2,025万円は、国の事業を利用し、自己負担額は675万円でした。

Q2/何から始めればいいですか?

A/就農場所、規模、品目、年収目標など、ご自身が目指す農業のビジョンをできるだけ明確にすることをお勧めしています。

白岩さんの場合/
東京で開催された就農イベントに参加し、田村地域のブースで就農相談。「プロジェクト」で白岩さんの支援チームを結成し、相談から研修、就農までを支援。

Q3/作った作物はどのように販売するのですか?

A/経営スタイルによりますが、JAの他、地元直売所や田村地域内外のマルシェ、郡山市の市場などに自分で搬送し出荷する農家さんもいます。

白岩さんの場合/
経営が安定するまでは収入の柱として全量をJAに出荷しています。販路の心配をすることなく作物の生産にも集中ができます。

■お問い合わせ■

福島県県中農林事務所田村農業普及所
住所:福島県田村郡三春町大字熊耳字下荒井176-5
電話:0247-62-3113

県中農林事務所 田村農業普及所ホームページ

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