コロナ禍で売り上げが20%増になった観光農園 「体験」を売るSNSの使い方

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コロナ禍で売り上げが20%増になった観光農園 「体験」を売るSNSの使い方

窪田 新之助

ライター:

コロナ禍で売り上げが20%増になった観光農園 「体験」を売るSNSの使い方
最終更新日:2021年03月23日

大分県宇佐市・安心院(あじむ)で観光農園を経営する株式会社ドリームファーマーズJAPAN。2020年はコロナ禍ながら、収穫時期の売り上げを対前年比で20%増やすことに成功した。主な来園者だったツアー客の数が皆無に等しい状態にまで落ち込んだものの、新たに個人客を引き込んだ。挽回に貢献したSNSの活用法を紹介する。

2020年はツアー客がほぼ皆無に

ドリームファーマーズJAPAN(以下、ドリームファーマーズ)の共同代表は社長の宮田宗武(みやた・むねたけ)さんと副社長の安部元昭(あべ・もとあき)さん。2人はそれぞれ自分たちのブドウ園を営む一方、同社が安心院で運営する園地でブドウを生産。収穫物はドライフルーツやコンポートに加工もして直売している。

ドリームファーマーズの敷地内には園地や加工所、直売所、喫茶店を併設。2019年までは収穫時期ともなれば、大型バスで400台を超えるツアーの観光客が来ていた。毎回の勝負どころは短い滞在時間で観光客にどれだけの数のブドウや加工品を売るかにあった。宮田さんは「僕らはずっとモノ売りをしてきたんです」と振り返る。

「じゃらん」の「遊び・体験予約」で「全国一の伸び率」

喫茶店の外壁に描かれたブドウの絵(画像提供:ドリームファーマーズJAPAN)

ところが2020年に事態が変わる。新型コロナウイルスの影響でツアーの観光客がほぼゼロになったのだ。ただ、ときにピンチはチャンスに生まれ変わる。宮田さんは「コロナ禍でモノ売りからコト売り、つまり体験を売ることに切り替えたんです」と語る。

ドリームファーマーズが代わって商品として大きく打ち出したのが個人客向けのブドウ狩り。その中身は、客に園地で1房をもいでもらうほか、土産用に1房とタオル、飲料、パンフレットなどを付ける。参加費は1800円(税別)。
園地ではブドウ狩り以外にも楽しんでもらえる工夫を凝らした。たとえば入り口には、海などに浮かべる丸い浮標(ブイ)を材料にブドウを模した造形物を飾ったり、園地の目の前にあるワイナリーのブドウ園を眺められる場所に椅子を置いたりした。喫茶店の外壁には県内の画家にブドウの絵を描いてもらった。観光客はそこで写真を撮ったり、たたずんだりして楽しむという。

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集客に使ったのは、主に株式会社リクルートライフスタイルが運営する旅行予約サイト「じゃらんnet」。宮田さんは「『じゃらん』の担当者によると、『遊び・体験予約』部門での伸び率が全国一になったそうです」と話す。ツアー客と比べて個人客のほうが滞在時間が長いこともあって喫茶店や直売所を利用する人が多く、客単価は増加。収穫時期の売り上げは対前年比20%増となった。

個人客を呼び込んだSNS

YouTube用の動画を撮影する宮田さん

では、なぜ個人客が大勢やって来たのか。宮田さんによると答えは二つある。一つは多くの個人客がSNSでブドウ狩りの様子を発信したことで、別の客を呼び込んだということ。

もう一つは2020年2月12日にYouTubeでチャンネル開設して以来、毎日1回以上は新しい動画を上げている「ドリームファーマーズちゃんねる」。YouTubeは動画やコメントなどを介してコミュニケーションを生む動画系SNSとして、情報共有の場にもなっている。「『動画を見てやって来ました』という人がむちゃくちゃ多かったです」と振り返る安部さんは、配信を始めた当初、チャンネル登録者数の目標を1000人に設定していた。ところが1年が経った2021年2月には7000人を突破していた。

YouTubeで生まれた親近感

YouTubeで来園者との距離が縮まったと話す安部さん

「農家のチカラで農村イノベーション。ドリームファーマーズJAPANの宮田です」「もっちーです」。動画の多くは2人のこんな語り出しから始まる。動画の内容はブドウづくりや会社のイベントやその準備、獣害対策などドリームファーマーズの日常がほとんど。ちなみに「もっちー」とはYouTube配信を仕掛けた安部さんのあだ名である。

「初めて来園したお客さんからいきなり『もっちーさん』って声をかけられるようになったので、最初は戸惑いました。向こうは動画で僕らのことを見ているので、初めてという感じがしていないんですね。僕らがしゃべってる、動いているということが親近感を生んで、多くの人に農園に行ってみたいと思ってもらえたんだと思います」

宮田さんは「コロナ対策の動画を流したことも来園を後押しした」と見ている。椅子やテーブルの間隔を空けたり、ブドウ狩りに使うはさみやかごの消毒などをしたりする動画を上げていった。「安心して農園を訪ねられると思ってもらえたはず」と宮田さん。

SNSをどう使い分けるのか

ドリームファーマーズが活用しているSNSは、ほかにFacebookとInstagram。それぞれどう使い分けているのか。安部さんは次のように説明する。
「YouTubeはファンづくり。僕らがしゃべったり動いたりしているから、親近感を持ってもらえます。ほかのSNSと比べて年配の方々も使いやすいから、幅広い層に訴えかけられるのもいい。Instagramは画像の美しさが特徴なので、商品の販売につなげる為に使っています。Facebookは企業情報を詳細に載せられるので、会社紹介ですね」

ファン獲得のためオンラインのセミナーや飲食会

「ドリームファーマーズちゃんねる」の登録者数が7000人まで達したいま、「密度も深度も高いファンをつくっていきたい」と安部さん。具体的にはオンラインのセミナーや飲食会を開催していく。初回は3月中に予定しているオンライン飲食会。募集人数は10人程度。ドリームファーマーズがつくったシャインマスカットのワインやドライフルーツを事前に発送し、当日はそれらを飲食しながら画面越しに雑談する。

オンラインセミナーについては、まずはブドウづくりを教える講座を検討している。安部さんは「たとえばブドウの剪定(せんてい)の仕方を動画で載せると、結構反響があって、直接教えてほしいとやって来る人もいるんです。その中には僕らの商品のお客さんじゃない人も少なくない。課金制にして始めるつもりです」
コロナ禍を機にSNSで攻勢をかけるドリームファーマーズ。ファンを獲得する取り組みの詳細についてはいずれあらためて紹介したい。

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