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防除機とは? 動噴・噴霧器・トラクター・ドローンなど、害虫駆除や除草に使える農機具を解説

防除機とは? 動噴・噴霧器・トラクター・ドローンなど、害虫駆除や除草に使える農機具を解説

おいしい作物を育てていく過程にはいろんな作業が待っています。農薬散布もその一つ。昔から害虫や雑草から農作物を守るために、人々はさまざまな工夫を凝らしてきました。シートやわらを敷くことで雑草の成長を抑制したり、太陽熱で土壌を消毒したりすることも方法の一つですが、多くの労力が必要です。
農薬散布は少ない人手、労力で一定の効果が見込めるため、多くの農家が取り入れています。とはいえ畑の規模が大きくなればなるほど一つ一つの作物に対するケアはとっても大変。そこで登場するのが防除機です。
今日は消毒や除草に欠かせない防除機について分かりやすく解説します。

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防除機の種類

そもそも防除機とは一体なに?と思う人もいるでしょう。新規就農者にとってはもしかしたら耳慣れない言葉かもしれません。農業で防除といえば、病害虫や雑草などを防いだり、取り除いたりすることです。防除機は液体を霧状にして散布する機械で、防除のために消毒液を機械に入れて消毒作業をしたり、また除草剤を入れて除草に使ったりもします。
防除機の中にもいろんなタイプがありますが、防除機を導入する前に、どんな目的で使用するか、またどのくらいの量の農薬を使うのかを再確認しましょう。加えて農作物の背の高さや農地の規模も併せて検討しなければ、逆に作業効率ダウンになってしまうこともあります。使用目的に沿った防除機を選びましょう。

人力防除機

ハンドルを手動でポンピングし、ためた圧力で噴霧するタイプです。燃料も電源もいらないため、とても手軽に使えます。エンジンがないので安価で軽いため女性でも安心。霧吹き型、背負い型やショルダー型があります。
しかし手への負担があるため長時間使用すると疲れてしまい、広範囲の散布には不向きです。

人力防除機で消毒をする様子

背負い動力噴霧機(背負い動噴)

タンクを背負って使うタイプで、人力防除機とは違ってエンジンが搭載されています。
ただし背の高い木などを消毒する際に、下から上に向けての散布ができるほどの噴霧パワーはありません。対象物の上から散布できる程度の背の低い作物にはちょうどいいです。
タンクの大きさは20リットル前後なので、10アールあたり100リットル程度の少ない量の消毒をする人にはオススメのタイプです。

背負い動噴の一例

セット式動力噴霧機(セット動噴)

高圧ポンプがエンジンとセットになったタイプです。背負い動噴に比べて給水量も圧力も高く、広範囲に散布するときにはこちらがオススメです。液体が入ったタンクをセットし、噴霧ホースをノズルに取り付けて使用します。小規模〜中規模の農地でよく使われています。
タンクの大きさも幅広く、大きなものでは500リットルのタンクもあり、面積に対して散布量が多い場合はより大きなタンクを選ぶと液体の入れ替えなどの手間が省けます。
トラックの荷台に乗せてタンクと共に運び、長いホースを使って散布するやり方が一般的です。

セット動噴の一例/span>

自走式ラジコン動噴

セット動噴の一種で、台車の上にセット動噴が乗っています。リモコンがついていて、エンジンやポンプの始動や停止だけでなく、ホースの巻き取りを離れた場所から操作できます。ラジコン動噴とはいえ、自走しながら噴霧することはできませんが、運搬用のトラックまで重いセット動噴を持ち運ばずに済みます。

自走式ラジコン動噴の一例

スピードスプレーヤー

車タイプの防除機です。運転席の後ろ側がタンクになっており、機種やランクによって500〜1000リットル程度の液体が搭載できるようになっています。車体後部にファンがありそこから噴霧されます。平地であることと、車が入る広さであることが求められるため、広い果樹園で消毒のために使用されることが多いです。
とても便利ですが高価なため初期費用はかかります。しかし、一人で広大な農地の消毒作業ができ、人件費削減にもつながるため導入する農家が増えているようです。

ブームスプレーヤー

ブームスプレーヤーはトラクターの作業機の一つで、広範囲の消毒や除草に使われます。左右に長い竿(さお)のようなものがついており、その下部には噴射口があります。細かい霧状のものを広範囲に噴霧できるため、大幅な作業効率アップが見込めます。キャベツやレタス、麦などの広大な畑などでよく使われています。

乗用管理機

乗用管理機は水田の防除作業や畑の農薬散布を行う機械です。
稲作での防除や追肥は、稲が大きくなってから行うため、作物をまたぎながらの作業が必要です。夏の暑い日に人の手でそれをやるには負担が大きく、骨が折れる作業。そこで少しでも農作業の労力を減らすために生まれたのが乗用管理機です。乗用管理機は、機械でありながら稲をまたいでの防除作業が可能で、人間が水田の中を歩きながら消毒をしていく必要がなくなり、大幅な労力軽減が実現しました。
畑では、トラクター搭載型のブームスプレーヤーの代替機としても重宝されています。今まではトラクターが走行するスペースを確保する必要がありましたが、乗用管理機で作物をまたぐ事ができるようになり、作付け面積を増やす事が可能になりました。

農業用ドローン

農業用ドローンの利用も増えています。ドローンを使った農薬散布は、平地だけでなく中山間地や狭く小さな場所での利用もできるとあって、導入する農家が多いようです。同様に空中散布ができる無人ヘリコプターもありますが、ドローンはそれよりは安価で、機体が軽いため取り扱いは2人ほどでOKといったメリットがあります。加えて一定のエリアに短期間で防除を行うことができるため、コスト削減、労力軽減が期待できます。

農業用ドローンを使って農薬散布をする様子

洗浄機としても大活躍

防除機は薬剤をまくためだけに使えるわけではなく、その機能を生かして洗浄に使うこともできます。手動式なら電源もいらないので、持ち運びやすく手軽。場所を選ばず使うことができます。ただし水圧はそこまで強くないため、頑固な汚れやこびりついた泥などを落とす際には物足りないかもしれません。
一方で動噴は高い水圧で噴霧できるので、高い洗浄力が期待できます。農機具などの洗浄に向いています。

知っておきたいメンテナンス方法

機械をより長くいい状態で使うためには、使ったあとの適切な掃除の仕方や、正しい保管方法を知っておくと安心です。自分でできるメンテナンス方法をいくつかピックアップしてみました。ぜひ参考にしてください。

洗浄し、水抜きをする

薬剤が残ったまま放置すると、薬剤の影響でタンク、パッキンなどの劣化が早まり破損につながったり、金属が腐敗してしまったりする恐れがあります。使用した後は必ずきれいな水でしっかり洗い流しましょう。そして洗った後は水抜きを忘れずに。薬剤を洗い落としても、水が残っていることで故障の原因になることがあります。

冬場の凍結に注意

冬場は気温の低下でポンプ内の水が凍結し、機械が破損する危険性があります。コックを開けてしっかり水を抜いて排水しましょう。水だけでなく薬剤も凍ってしまうことがあるため、薬剤も同様に排水します。さらに長期間使用しない場合は、エンジンのラジエーターの排水も行いましょう。

空でエンジンを動かさない

久しぶりに使うときや、使用中に薬剤がなくなったときなどは、タンクが空のままエンジンを動かさないように注意しましょう。空運転はポンプの故障につながります。

安心・安全に薬剤を使用するために

使用する薬剤の用法、用量、使用上の注意を守り、薬剤を扱わなければなりません。取り扱いを間違ってしまうと事故につながり、体に影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

対象物以外にドリフト(農薬飛散)しないこと

農林水産省は、農薬散布時に農薬飛散を低減する対策を徹底することが重要であるとしています。散布対象物以外に農薬が飛散してしまうことをドリフトと呼び、それによって起こるリスクを低減させることがこの取り組みです。
近隣の住宅や人への影響ももちろんですが、隣の田畑などの農作物に農薬が飛散し、気づかないうちに基準値よりも高い農薬が残留しているということも。特に、ある作物に使用しようとする農薬が、周辺の農作物用の農薬として登録されていない場合は注意が必要です。

ドリフト低減のためには、以下のようなことに注意しましょう。

・風の強い時の散布は避ける
・作物に近い位置から作物だけにかかるように散布する
・細かすぎる粒子のノズルは使わず、ドリフト低減ノズルを使う
・近隣の農家や住民に農薬散布日を知らせるなど、普段から連携を取る
・リスクの低い農薬を使う
・通学や通勤時間を避ける

これらを守り、近隣農家の人たちとしっかりとコミュニケーションを取り連携していくことで、安全においしい農作物を育てていきましょう。

各種防護具を用意

防除機を使用し薬剤を散布する際には、必ず下記の防護具を身につけましょう。

防護具リスト
・保護衣(水を通さない素材。布製はNG)
・保護めがね
・保護マスク
・耳栓
・保護手袋
・作業靴

保護衣は使ったら洗濯して、表面についた薬剤を落としましょう。その際は、他の衣類に薬剤がうつらないよう、単体で洗うのがベスト。
翌日も使う際は、着用の際に薬剤が体に付着する恐れがあるため、別の保護衣を用意するなどして、薬剤がついたままの保護衣を着回さないように気をつけましょう。

まとめ

農作物の防除を人の手で一つ一つやろうとすると、大変な労力を伴います。作業効率アップのためには防除機は必要不可欠。使用する農地の広さや作物の種類などをきちんと調べ、どのくらいの農薬が必要なのかを知りましょう。
そうすればどのタイプが自分に適切かがわかります。

また防除作業に使用する農薬は薬剤であるため、使用方法を誤ると使用者の健康だけでなく、近隣住民や農作物にも多大な被害を及ぼす可能性があります。必ず使用方法を守り、消費者の元へ安心・安全な農作物を届けることができるよう、常日頃から心がけていきましょう。


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