肥料の種類
まずはどんな肥料があるか整理してみます。

豊かな土はおいしい作物の土台
有機肥料
有機肥料は植物性や動物性の有機物を原料にした肥料です。例えば油かすや魚粉、米ぬか、動物のふんなどがそれにあたります。
即効性は低いですが、持続性があるため、利用することで土壌が改善されていくと言われています。

牛ふん堆肥(たいひ)
しかし自然のものを発酵、熟成させるため、使えるようになるまで1年ほどの時間を要するものもあり、それをストックし管理する作業も必要になってきます。そのため有機肥料散布を業者に依頼して行ってもらう農家も増えてきました。
また近年は有機肥料を粒状にしたものも販売されており、より手軽に有機肥料が取り入れられるようになっています。この形状だと余ったら翌年に回すことができ、保管のために労力を使うこともありません。
その代わり通常の有機肥料より費用は高くなります。
化学肥料
窒素や鉱物などの無機物を原料とした肥料です。
施肥してすぐに吸収され、即効性は高いですが、持続性が低いため、有機肥料のように土壌改善効果は期待できません。
与えすぎると逆に作物を傷めてしまうこともあるため、扱い方には注意が必要です。
しかし工場での大量生産が可能な化学肥料は、いつでも安定した品質のものを購入できるというメリットがあります。
有機肥料と違って、発酵させるなどの手間もかからず、購入してすぐに使えるのもいいですね。
形状
さらに肥料は形状によっても分類されます。
・固形肥料
丸い粒状のもの、粉状のもの、筒状になっているペレットなどがあります。
・液体肥料
原液を薄めるタイプと、そのまま使えるタイプがあります。
では肥料の種類を理解した上で、肥料を散布する農機について見ていきましょう。
施肥作業ができる農機
肥料散布は広大な農地になればなるほど、人の手で行うのは大変です。また均一にまけていないと、農作物の成長に影響を及ぼすこともあります。そのため散布機を導入し、機械化を図る農家さんが多いのです。
散布機は肥料によって使えるもの、使えないものがあります。
肥料に合わせて対応する機械をきちんと選びましょう。
背負い式散布機
こちらはリュック型になっており、本体を背負って肥料を散布していくタイプです。
このタイプは肥料散布機の中でも最も手軽に始められるため、多くの農家で使われています。
背負い式だけに一度にまける肥料は多くはありませんが、目で見たところに確実に散布できるメリットがあります。
価格帯は他に比べてリーズナブル。機械による散布を試してみたいという人は、まずはこちらからスタートするのもいいですね。
実際、多くの農家さんの間で使われており、根強い人気があります。
手動式、エンジン式があり、時間を短縮したい、広い範囲にまきたい人にはエンジン式がおすすめです。
粒状、粉状、液状などが使えますが、各メーカーによって異なるため、購入の際には事前に確認しましょう。
ブロードキャスター
ブロードキャスターは粒状の肥料を散布できる機械です。有機肥料でも粒状のものであればまくことができます。
粉状肥料は使用できないので注意しましょう。
ブロードキャスターの中にもタイプがいくつかあり、予算や農地の広さによって選ぶことができます。
・手押し(人力)型
手押し車のように手で押しながら進んでいくタイプです。
家庭菜園のような小規模な畑で使う分には申し分ないでしょう。
肥料を入れる容器の下に吐き出し口があり、前進することで中の散布羽根が回転し、そこから肥料がまかれていきます。
・自走型
手押し型と同様、手で押しながら進むのですが、散布はエンジンの力で行うため手押し型より楽に散布できます。
また手作業よりもまんべんなく散布することが可能です。
・トラクターけん引型
トラクターでけん引して使用します。手押し型、自走型は使用する際に機械と共について歩かなければいけませんが、トラクターなら乗用するため、その手間は省けます。
また、一度に大量の肥料を散布できるため、大規模な農地にはピッタリです。
大きなトラクターに小さな作業機をつけても問題ありません。
遠心力を使って上に飛ばして散布していくので、木々のある果樹園でも使用できます。
けん引型はトラクターの作業機なので、購入前には、手持ちのトラクターとの適合性を確かめましょう。
ライムソワー
ライムソワーもトラクターの作業機ですが、こちらはブロードキャスターのように飛ばしながら散布するタイプではなく、下に落として散布するタイプです。
そのため、粒状だけでなく粉状の肥料もまくことができます。
平らな地面で、障害物がない圃場(ほじょう)で使用できます。
マニュアスプレッダー
主に有機肥料を散布するときに使われるのがマニュアスプレッダーです。
肥料を細かくほぐしながら全面散布することができます。
マニュアスプレッダーには3つのタイプがあります。
・トラクターけん引型
トラクターでけん引して使用します。一気に散布できるので、より広大な農地に使用する場合にはピッタリです。

トラクターけん引型のマニュアスプレッダーの一例
・自走型
前進しながら前に肥料を飛ばしていきます。
ブロードキャスターの自走型と同様に歩行しながら使用するタイプと、乗用型があります。
トラクターが乗り入れできない狭いところなどでも使えるのがメリットです。
・トラック搭載型
トラックの荷台や運搬車に乗せて散布します。手持ちのトラックに搭載するだけで自走マニュアスプレッダーと同じような働きをしてくれます。
肥料置き場と圃場が離れている場合は、肥料の運搬ができるため使い勝手がいいとされています。
こちらは土壌が軟らかい田んぼなどではなく、畑で使用されます。その際は、施肥の前には圃場をほぐさずに硬くした状態にしておくことでトラックをスムーズに走らせることができます。
自分でできるメンテナンス
使用後は必ずきれいに水洗いをしましょう。肥料が付着したまま機械を放置してしまうと機械がサビてしまいます。
なぜサビを招いてしまうかというと、肥料には強い酸が含まれているから。
例えば新品で購入したものでも一度使用して放置していると、来年使用する際にはもうサビてしまっています。
そのため、機械を長く使用するためにも使ったらしっかり洗って保管するようにしましょう。
さらに数年に一度は専門店でのメンテナンスをしてもらうと、より長く使用することができます。
施肥が必要な土壌かどうかを知る
施肥はおいしい作物を育てる上で大事な作業ですが、その土壌がどんな肥料を必要としているかを把握しなければなりません。
単純に言えば、もし栄養がたっぷりの状態の土なら、これ以上肥料をまく必要はないのです。
現在の土には何が足りなくて、何が足りているのか、それを知ることで、適切な施肥ができるようになります。
肥料をまいていれば土壌がよくなっておいしい作物が育つのではなく、適切な肥料で足りないものを補充することで土壌が整い、おいしい作物が育ちます。
そのために必要なことは、現在の土の状態を知る土壌検査です。
JAはもちろん、インターネットでも検査キットが販売されています。
新規就農者はまず土壌検査を行い、現在の土の状態を知りましょう。
そして毎年施肥作業の前に必ず土壌検査を行い、今年はどんな肥料が必要かを検討していきましょう。

土壌分析機
まとめ
施肥は豊かな土壌を作るために欠かせない作業ですが、その土地にあった肥料をまくことでその力を発揮します。さらに、肥料によって使える機械も異なるため、それを知らずに肥料と機械をバラバラに購入して無駄にしてしまうことも、実は少なくありません。
新規就農者の皆さんは、まず土壌検査をした上で、適切な肥料を選び、機械を購入するという手順がオススメです。
施肥に限ったことではありませんが、適切な農機具の導入こそ、労力の軽減、作業効率のアップにつながります。
正しい農機具を選んで、バランスの取れた農業を目指しましょう。