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農業がファッションに進出! セレクトショップのマルシェで感じるサステナブルなライフスタイル

農業がファッションに進出! セレクトショップのマルシェで感じるサステナブルなライフスタイル

おしゃれな人々が集う街として知られる表参道のセレクトショップの店頭で農家が野菜を売る――。よくあるマルシェの風景かと思いきや、少し様子が違うようだ。流行のライフスタイルをリードするセレクトショップがマルシェを開催する意味とは? 人々の消費行動に変化が生まれる中、農業とファッションがコラボする様子を取材した。

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表参道の街中にマルシェ出現!

服とともに食器などの生活雑貨を並べて販売している店をよく目にするようになった。おしゃれなパッケージの食品がショップの棚に自然に飾られ、ブランドの世界観を表現するのに一役買っている。店に入ると「こんな生活をしてみたい」という欲求を掻き立てられ、思わずスーパーでは買わないような高い缶詰を買ってしまったことがある、という人もいるのでは?

近年、全国展開する生活雑貨ブランドが生鮮食品の販売を開始するなど、ファッションと食、ひいては農業との距離が近くなっている。ファッションは身に着けるものを超えて、何を着るか、何を使うか、何を食べるかといった、その人を取り囲むライフスタイルすべてを包括するものになりつつあるようだ。

そんな中、人気のファッションアイテムを取りそろえるセレクトショップがマルシェを行うと聞いて、東京都港区の青山を訪れた。高級ブランドのショップが並ぶ表参道から裏通りに入ると、さらに人気ショップが軒を連ねている。有名レストランも点在し、食通も多く通う地域だ。一方で民家も多く、そこに古くから住む人もいる。その一角に株式会社ユナイテッドアローズが運営するセレクトショップ「H BEAUTY&YOUTH(エイチビューティーアンドユース)」がある。

その店頭で毎月第2・第4土曜日に「あめつちマルシェ」が開催されることになった。赤坂の完全予約制レストラン「あめつち」とのコラボレーションで、出店者の選定などを行うキュレーターは、高級レストランから信頼の厚い農家として知られるタケイファームの武井敏信(たけい・としのぶ)さんだ。

初回の2021年5月29日は、タケイファームのアーティチョーク、千葉県の森田農園と清水農園の野菜、和歌山県のみかんのみっちゃん農園の柑橘、京都府和束町のお茶などが並んだ。開店準備中の10時前から近所の人が足を止めて出店者たちと会話を交わし、昼からは表参道を訪れる若い人々などが野菜を手に取る様子が見られた。

ファッションブランドが“野菜”とコラボ

会場となるH BEAUTY&YOUTHは「ハイエンドカジュアル」がコンセプトのセレクトショップ。ラグジュアリーとは一線を画し、カジュアルだが高品質なファッションを求める人をターゲットとしている。クリエイティブディレクターの松本真哉(まつもと・しんや)さんは、その顧客について「本質を知っていて、ファッションだけでなくライフスタイルに関しても、リアルに感度の高い人」と表現する。そういう人々に対して長くファッションを提案してきた松本さんだが、今最もクリエイティビティを感じるのが「食」だという。

武井さん(左)と松本さん(右)

「商品の買い付けなどで海外に行くことが多いのですが、パリのマルシェはとても美しい。野菜の色や形をバランスよく、まるでアートを描くように並べています。その経験から、ファッションと同様に美しい野菜を並べたマルシェをやりたいという思いがありました」と、松本さんが野菜を見る目は「食べる」という目的を超えている。「野菜って僕らのような外の世界の人間の目には美しいものに見えるよ、と生産者の皆さんに伝えたい」と、ファッションの感覚で野菜をとらえている。

アーティチョーク,あめつちマルシェ

今回のマルシェのために用意した什器。野菜が美しく見えるようにこだわったという

キャンプブームも後押し

コロナの影響で人気が高まったアクティビティといえば、キャンプだろう。H BEAUTY&YOUTHでは、この春から地下階にキャンプ用のファッションやグッズを取りそろえたショップ「koti(コティ)」を展開。これまでの顧客層に加え、キャンプ熱の高い人々も取り込んでいる。

koti

kotiの店内。キャンプなどのアウトドアのアクティビティで使うグッズや服が並ぶ(画像提供:H BEAUTY&YOUTH)

kotiのディレクターである中島小太郎(なかじま・こたろう)さんは、「アウトドアが好きな人の中でライトに農業に触れることを楽しむ傾向が強まっている」と語る。農園で収穫体験をし、その野菜でキャンプ料理ができるような施設が人気であったり、素材を楽しむための調味料にこだわったりするなど、充実した暮らしを志向する人がkotiを目指してやってくるという。

そうした客層に向けて、各地の農家が作ったこだわりの加工品なども店頭に置いている。
これらの商品は中島さんがそのおいしさにほれ込んで買い付けたもの。こうした商品もキャンプに持参して料理に利用するなど需要が高く、売上も好調という。こうした6次化商品の打ち出しの手法は、農家も着目すべきだろう。

koti店内で販売されている加工品。マルシェ開催日以外でも購入可

人々の消費行動は、よりサステナビリティを重視したものに

従来のマルシェ出店の目的として、客とコミュニケーションをとって顔の見える農家になる、とか、直接客と話すことでニーズをつかむなど、メリットは多くある。東京で最も住民の平均年収が高い港区で、付加価値の高い農産物の販売をどうすべきか、富裕層が何を求めているかということを学ぶ意味でも、あめつちマルシェへの出店は農家にとって価値があるだろう。

しかし、あめつちマルシェがほかのマルシェと違うのは、セレクトショップがそのブランディングの一環としてマルシェを開催したということだ。
人々の消費傾向の変化に対応を迫られるファッション業界にとって「サステナブルな活動」としての農業とのコラボは魅力的なコンテンツだろう。特に感度の高い人々のファッションのトレンドとして、「有機的なものを求める傾向が強まっている」と松本さんは語る。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、人々の消費行動の傾向もよりサステナビリティを意識した社会的なものにシフトしている。

松本さんに「これからどんな農家と一緒にマルシェをやっていきたいか」と尋ねたところ、美しくおいしい野菜を作る人に加えて「サステナブルな活動が一緒にできる人」という答えが返ってきた。具体的にはプラスティック包材を使用しないなど、ブランドが志向する環境意識をともにできる人、またそういう啓蒙ができる人、といったイメージだという。ブランドの顧客層もそうしたサステナビリティを重視する傾向があるそうだ。

森田農園はエダマメを包装なしで販売

「人は食べたものでできている」というのはよく聞く言葉だが、物理的な体や健康に関する意味だけでなく、その考え方やライフスタイルにも影響を与えるという意味も含んでいるのではないだろうか。
H BEAUTY&YOUTHを訪れる人々が「本質を知る人」であるならば、きっと農業との親和性は高いだろう。なぜなら農業は、人が食べるものを作る活動だから。
あめつちマルシェが提案するライフスタイルは、農家の存在もサステナブルにしてくれるはずだ。

【あめつちマルシェ】
開催日時:毎月第2・4土曜 10:00~15:00
開催場所:H BEAUTY&YOUTH(東京都港区南青山3丁目14‐17)
今後の開催情報はH BEAUTY&YOUTHインスタグラムよりご確認ください。
@h_beautyandyouth

出店に関する問い合わせ先
あめつち info@ametsuchi-official.com

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