田舎の実家を相続する場合のデメリット・問題点四つ
田舎の実家を相続する場合、以下のようなデメリットや問題が生じる可能性があります。
- 固定資産税の負担
- 管理の必要性
- 放置家屋は犯罪の温床になりかねない
- 近隣住民とのトラブル
固定資産税の負担
田舎の実家を相続した場合、所有しているだけで固定資産税が毎年発生します。
特に、相続した実家に売却や活用の予定がない場合には注意が必要です。2015年に施行された空家等対策の推進に関する特別措置法により、管理されていない空き家が行政によって「特定空家」に指定された場合、土地の固定資産税が最大で6倍になります。
特定空家に指定される要件の例として、以下のようなものがあります。
- 「倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態」
- 「著しく衛生上有害となるおそれのある状態」
相続した実家に住む予定がなく放置する場合は、指定を受ける可能性が高いため十分に注意しましょう。
管理の必要性
実家を相続しても住む人がいない場合は、定期的に清掃や修繕を行なっていく必要があります。
特に夏場は雑草の成長が早く、1~2カ月放置するとすぐに生い茂ってしまうでしょう。相続した田舎の実家と現住所が離れている場合、管理のために実家を訪れるのは大変な手間がかかります。
空き家管理サービスを活用することもできますが、当然ながら費用が発生します。具体的な費用は利用するサービスによって異なりますが、作業員1人あたり2000~3000円程度。2人×3時間依頼した場合は1万2000円が1~2カ月程度に一度必要になってくる計算となります。
放置家屋は犯罪の温床になりかねない
昭和38年には52万戸だった空き家は、平成5年には448万戸、平成30年には846万戸と右肩上がりで増えており、犯罪の温床になりかねないことが問題になっています。
例えば、空き家で他人が大麻を栽培していた、詐欺グループの基地になっていたなどの事件が発生したことも過去には起きています。空き家となった実家が犯罪の温床になると、管理責任を問われかねません。
こうした観点からも、定期的な実家の管理や視察は必須といえるでしょう。
近隣住民とのトラブル
空き家が管理されていないと、雑草が生い茂ることによる景観の悪化や、ゴミが捨てられることによる悪臭、さらには建物が倒壊して通行人に被害が及ぶといった問題が起こる可能性があります。
これらが原因で、近隣住民との間でトラブルが起こる可能性があるため注意が必要です。
自然災害により建物が倒壊して近隣住民や通行人に損害を与えた場合も、その原因が建物の管理不足によるものであれば、損害賠償を請求されることもあります。
田舎の実家を相続する前に確認しておくべきポイント
田舎の実家を相続するかどうかを判断するポイントは以下の三つです。
- 売却価値があるかどうかを確認する
- 将来的な需要見込みも確認しておく
- 財産全体のバランスを確認する
順番に見ていきましょう。
売却価値があるかどうかを確認する
田舎の実家の立地条件や家・設備の状態が良く、家として正常に機能していて価値があると判断できる場合には、まずは売却を考えましょう。売却が成功することによって、素早く売却益を得られるようになります。
ただし、田舎の空き家は都心部と比べると需要が低い傾向にあり、条件によっては買い手が付かないケースも珍しくありません。
その他にも田舎の実家を売却する際には複数のポイントがあるため注意が必要です。(※次章「田舎の実家は古家付き土地や古民家として売却しよう」で詳しく解説)
将来的な需要見込みを確認する
現時点で需要が無くとも、土地の立地条件や周辺地域の状況が変わることによって、将来的に田舎の実家の価値が上がる可能性があります。
例えば実家周辺の土地に開発の予定がある場合は、相続の時点では価値が低くても将来価値が高くなることもあります。
ただし、開発の予定は数年~数十年単位で延期になったり、白紙に戻ったりすることがあるため、こうした長い年月にかかる維持費なども想定した上での判断が必要となります。
財産全体のバランスを確認する
最後に、相続する財産全体のバランスを確認しておくことも大切です。
例えば田舎の実家という不動産だけでなく、預貯金や株式などの金融資産も含めて、相続する資産全体を見るという考え方です。
この考え方であれば、活用・売却ができないような田舎の実家でも、他の財産によって、維持費などをカバーできる可能性もあります。
なお、相続には全てを相続する「単純相続」と、全てを放棄する「相続放棄」のほかに、「限定相続(限定承認)」という方法があります。限定相続とは、相続によって得たプラスの財産の範囲で被相続人の債務を返済することです。「マイナスの財産が多いが、どうしても相続したい財産がある」といった場合は、限定相続の利用を検討すると良いでしょう。
田舎の実家は古家付き土地や古民家として売却しよう
上記でも説明してきた通り、田舎の実家を相続した場合、まずは売却できないかどうかを考えるのが得策です。
しかし田舎の実家を売る場合、建物を解体せず、古家付き土地や古民家として売却するほうが、さまざまなメリットがあることをご存知でしょうか?
ここでは、田舎の実家を古家付き土地や古民家として売却することの具体的な三つのメリットをお伝えします。
- 固定資産税や都市計画税を節税できる
- 買い主が物件購入時に住宅ローンを利用できる
- 「古民家」需要で購入者が見つかる場合がある
固定資産税や都市計画税を節税できる
建物を先に解体すると、固定資産税や都市計画税が高くなってしまいます。
これは、そもそも土地の上に建物が建っているときには、固定資産税が最大で6分の1になる特例が適用されているからです。
また、都市計画税も、特例の適用を受けると固定資産税が最大で3分の2になります。
そのため、先に建物を解体した状態で土地を所持していると特例が適用されず、固定資産税が最大で6倍(都市計画税は最大3倍)になってしまうのです。
買い主が物件購入時に住宅ローンを利用できる
家が建っていれば、買い主は住宅ローンを組むことができます。
住宅ローンはその他の個人向けローンと比べても非常に低い金利で借りられますが、土地だけであれば住宅ローン以外の方法を検討しなければなりません。
したがって、古家付き土地や古民家として売却するほうが、買い主にとってメリットがあります。
「古民家」需要で購入者が見つかる場合がある
状態の良い古家であれば、セカンドハウスや民泊経営、カフェ・ギャラリー経営など、古民家を求める人に売却できる可能性があります。
こうした、田舎の土地ならではの古民家需要に対応できることも、実家を解体せずに売却する大きなメリットです。
なお、古民家付き土地や古民家として売却できるかは、相続した実家の状態により異なります。
相続した田舎の実家を売却する際のその他の注意点
ここまで、田舎の実家を売る場合、建物を解体せず、古家付き土地や古民家として売却するほうが、さまざまなメリットがあることをお伝えしてきましたが、それ以外での空き家を売る際の注意点を二つお伝えします。
- 早期売却のためには取り壊し費用を見込んだ値引きが必要
- 思わぬところで瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)に問われる場合がある
早期売却のためには取り壊し費用を見込んだ値引きが必要
買い手の中には、そのまま住むのではなく建て替えることを検討している方もいます。
そのようなケースでは、建物の取り壊し費用を見込んだ値引きを検討すると良いでしょう。
解体費用は、木造住宅の相場であれば、3~4万円/坪です。例えば、実家の延床面積が40坪程度であれば、120万~150万円程度の取り壊し費用がかかります。
大きな値引きとなってしまうものの、田舎の場合、家や不動産は買い手がつきにくいのも事実です。せっかくのチャンスを逃さないためにも、値引き等を考慮しておきましょう。
思わぬところで瑕疵担保責任に問われる場合がある
古家を売却する際は、瑕疵担保責任に気を付けなければなりません。
瑕疵担保責任とは、例えば売却後に雨漏りやシロアリ被害が発生した場合、売却時にそのことが買い主に知らされていなければ、一定期間は売り主が買い主に対して責任を負わなければならないというものです。
2020年4月の民法改正によって、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」となりました。契約不適合責任とは、契約の目的物と売買契約書の内容が合っていない場合に、売り主が買い主に対して責任を負うというものです。
基本的な内容は瑕疵担保責任と同じですが、これまで以上に契約書に記載する内容が重要になるため、古家を売却する際は地中埋設物などを含めて、知っている不具合については全て売買契約書に記載しておくことが大切です。
相続した田舎の実家の活用アイデア
ここまで、売却という視点で解説してきましたが、売却ができなかったとしても、自分自身で田舎の実家を“活用する”という方法で、利益を得られることもあります。
この章では、相続した田舎の実家を「活用」したい方に向けて、具体的な空き家の活用アイデアを紹介します。
- リフォームして貸し出す
- 駐車場や太陽光発電、老人ホームなどの経営
リフォームして貸し出す
田舎の実家は設備が古くなったり、現在の耐震基準を満たしていなかったりする場合があるため、そのままでは賃貸にするのは困難ですが、リフォームをすれば賃貸に出せる可能性があります。
ただし、リフォームをしても必ず借り手がつくわけではないことを理解しておきましょう。借り手がつかず、自分が住むわけでもない場合は、リフォーム費用の分だけ損をしてしまうため注意が必要です。
また、実家が日本古来の技術を用いて建てられたものである場合は、古民家として賃貸や民泊施設の需要が期待できるため、リフォームをするとかえって家の価値が下がるおそれがあります。
駐車場や太陽光発電、老人ホームなどの経営
相続した田舎の実家を活用するその他の方法として、駐車場や太陽光発電、老人ホーム経営などの方法も挙げられます。
特に太陽光発電や駐車場経営の場合、他の土地活用と比べてメンテナンスなどの手間も少ないためおすすめです。
ただし、当然のことながら土地を活用する場合には初期費用や初期投資などが大幅にかかることもあります。また太陽光発電の場合は自然災害によるリスクも考えられます。
そのため、実家の土地の特徴をつかみ、デメリットなども照らし合わせつつ土地の活用を考えましょう。
田舎の実家は相続前に、相続放棄も検討しよう
売却、活用アイディアを実行するのが難しい場合、相続する前に「相続放棄」を考えるのも選択肢の一つです。
相続放棄をすることによって、固定資産税や都市計画税などの税負担や、相続後の管理の手間もなくなります。しかし、以下の2点については特に注意が必要です。
- 相続放棄は他の財産もすべて放棄する必要がある
- 放棄後にも相続財産管理人の選任は必要
相続放棄は他の財産もすべて放棄する必要がある
相続放棄では、特定の財産だけを選んで放棄することはできず、その他の財産もすべて放棄しなければなりません。
そのため、現金や株式などのプラスの財産がある場合や、活用できそうな不動産がある場合はおすすめできません。
放棄後にも相続財産管理人の選任は必要
相続放棄をすることによって、相続問題が全て無くなるというわけではありません。相続放棄をすると、あなた以外の誰かが相続人となる必要があります。
たとえば被相続人(亡くなった方)に配偶者と子がいる場合、子が相続放棄をすると配偶者が相続人となり、配偶者も相続放棄をすると次の順位である(被相続人の)兄弟姉妹が相続人となります。
全ての法定相続人が相続放棄をすると、相続人がいない不動産が取り残されることになり、その場合は相続財産管理人を選任しなければなりません。
仮に、相続財産管理人が選任される前に家が倒壊して他人に損害を負わせた場合、損害賠償などの問題に発展する可能性があるため注意が必要です。
相続した田舎の実家を処分する方法
既に田舎の実家を相続していて、かつ売却も活用も難しい場合には、維持費や時間的なコストもかかってしまいます。そのため、早めに処分するのがおすすめです。下記では相続した田舎の実家をすぐに処分する下記の二つの方法について紹介します。
- 寄付
- 有償引き取り
寄付
相続した田舎の実家を賃貸や施設化などの方法で活用することが難しい場合は、寄付して固定資産税や管理などのコストを削減することを検討しましょう。
とはいえ、寄付を受け付けてもらうには寄付先がその建物や土地を活用できることが前提条件であり、実際は寄付を受け付けてもらえないケースがほとんどです。
自治体にとって固定資産税は収入源であり、寄付を受け付けることで収入が減ってしまうことも理由の一つです。
このように引き取り自体はかなり難しいため、下記の有償引き取りを検討するのがおすすめです。
有償引き取り
有償引き取りとは、いらない空き家や土地などを、費用を支払って業者などに引き取ってもらう処分方法です。
価値のない空き家や土地は、所有しているだけで毎年数万〜数十万円の固定資産税や維持コスト、管理や近隣トラブルなどの労力や精神的負担がかかります。
このような不動産を放置してしまうと、家計をむしばむ金食い虫となるだけでなく、子・孫世代まで続く重荷となってしまうため、お金を払ってでも早めに手放したほうが賢明です。
田舎の実家の相続はプロに相談しながら考えよう
本記事では、田舎の実家を相続する際のデメリットや相続放棄・処分方法、売却や活用のポイントなどを解説しました。
田舎の空き家は、都心部の不動産と比べて需要が低く、状況によっては売却や活用が困難なケースも珍しくありません。そのため基本的には、相続が発生した段階で相続放棄することをおすすめします。
すでに相続している場合は、売却や有償引き取りが選択肢になりますが、まずは売却できないかプロに相談してみると良いでしょう。
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