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農家の跡継ぎになるには。農家の後継者不足の現状や事業承継のステップについて解説

農家の跡継ぎになるには。農家の後継者不足の現状や事業承継のステップについて解説

農業従事者の減少に伴い、後継者不足が深刻化している日本の農業。新たに農業を始めようと考える人も増えつつありますが、農地の取得に時間がかかったり、せっかく就農しても十分な所得を得られずにリタイアしてしまうケースも少なくありません。そこで、農業を始める際の選択肢になるのが「農家の跡継ぎになる」ということ。これまでは「親から子」への世襲によるものがほとんどでしたが、近年はさまざまな跡継ぎの形があります。それぞれのメリットや注意点について解説していきます。

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農家の跡継ぎ問題とその実態

農業は家族経営の比率が非常に高く、農家全体のうち、実に97%を占めます(「2020年農林業センサス」農林水産省)。当然、後継者も家族であることが多く、後継者を確保できている経営体のうち、実に95.4%が親族です。しかし、全体で見れば、約7割が後継者を確保できていない現状があります。

農家の跡継ぎになる方法

農家の親族でなければ農業を継げないというわけではありません。近年は後継者不足で悩む農家と新規就農者をつなげる取り組みもなされており、 。
新規就農者が農業経営を引き継ぐ際のパターンや、注意点について解説します。

親族から引き継ぐ

農業を営む親や親戚等から事業を引き継ぐことが、最も一般的な跡継ぎの方法でしょう。
栽培技術や農業経営について親族の下で実践的に学ぶことができ、農地や機械のほか、代々培ってきた顧客や周囲の信用をそのまま引き継げることも大きなメリットといえます。

親族と言えど、事業について話し合うことに気が引けるという方も少なくないでしょう。そうした場合は、JA全農とNPO法人農家のこせがれネットワークが作成による「事業承継ブック~親子間の話し合いのきっかけに~」を活用するのも一つです。

また、節税などの面から生前贈与などを利用して、資産を順次移行していくことも考えられます。農業では「農地に関する税制特例」などもあります。相続税や贈与税などの税金の計算は複雑ですので、総合的に判断したい場合は、税理士などへの相談をお勧めします。

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既存の事業を継ぐ

既存の事業を継ぐ方法として、親族以外の役員・従業員に事業を承継する「従業員承継」というパターンもあります。
事業のバトン渡したい経営者にとっては 。
後継者にとっても、既存の事業を引き継ぐことで、早期に専業の農業経営者として自立することができます。

農家の跡継ぎとして知っておきたい事業承継

事業承継とは、経営者が事業を後継者に引き継ぐ行為です。「事業継承」という似た言葉もありますが、それぞれニュアンスが異なります。
農業の事業承継では、農地や施設、農業機械などの事業用資産のほか、栽培技術や飼養管理といったノウハウや経験を引き継ぐこととされており、これには相応の年数がかかるため、計画的な実行が必要です。

事業承継で引き継がれるもの

事業承継により、具体的には下表のようなものが引き継がれます。

有形経営資産 農地、施設、農業機械、資金(運転資金・借入金など)、株式……など
無形経営資産 経営理念、権限、許認可、取引先との人脈、生産技術、ノウハウ……など

当然ながら、それぞれ「事業承継をします!」と言って、いっぺんに引き継がれるようなものではありません。
事業継承では、目に見える「有形経営資産」と目に見えない「無形経営資産」の2つを引き継ぐことになり、それぞれ抜け漏れがないよう整理することが大切。また、どれも一朝一夕に引き継ぎが終わるものではないため、事業承継まで5年から10年をかける例もあります。

事業承継の一つ「第三者承継とは」

経営者の身近に後継者として適任な人物がいない場合でも、広く候補者を外部に募ることができるのが「第三者承継」。就農を目指す人にとっては農地や施設などを一括して取得できるため、新規参入が難しいとされてきた稲作や果樹、酪農などでも専業経営として必要な規模で経営を開始することができます。

事業承継とは事業を引き継ぐ行為

事業承継とは、経営者が事業を後継者に引き継ぐ行為です。
「事業継承」という似た言葉もありますが、それぞれニュアンスが異なります。
辞書では同じように説明されている「継承」と「承継」ですが、事業で考えるときの「継承」は、身分や財産、権利などを引き継ぐという意味です。対して「承継」は、これらに加えて精神的なものまで引き継ぐこととされています。
事業を引き継ぐことは、経営理念や伝統なども引き継ぐことであり、一般的にも中小企業庁でも、事業承継と呼ばれることが多くなっています。

第三者承継の流れ

近年、農業分野でも注目されている第三者承継。両者をマッチングする公共サービスや民間サービスも増えています。
第三者承継による農業参入のメリットとしては前述の通り、経営に必要な農地や施設などをまとめて取得できるため、引き継いだ初年度から作物を収穫し、収入を確保できることが大きいと言えます。
ただし、引き継ぐ経営規模によっては独立就農よりも最初の費用が掛かってしまう場合があります。また、規模が大きいと、当然高い栽培技術や経営管理能力が求められます。

農家の跡継ぎとして知っておきたい補助金や支援

・経営継承・発展等支援事業
・事業承継・引継ぎ補助金
・自治体による支援

農業後継者が活用できる補助金や支援制度があります。うまく活用することで、初期費用や設備投資を抑えることにもつながるため、しっかりチェックしておくべきでしょう。

経営継承・発展等支援事業
2021年度予算から新たに措置された事業。
先代事業者(地域の中心経営体など)から経営の主宰権を譲り受けた後継者が、経営継承後の経営発展に関する計画(販路の開拓、新品種の導入、営農の省力化等)を策定し、この計画に基づく取り組みを行う場合に必要となる経費を市町村と一体となって支援(100万円上限(国、市町村がそれぞれ1/2を負担))するものです。
令和4年度「経営継承・発展等支援事業」

事業承継・引継ぎ補助金
事業承継をきっかけに新しい取り組みなどを行う中小企業や、経営資源の引き継ぎを行う中小企業などを支援する制度です。取り組みにかかる経費や、経営資源の引き継ぎにかかる経費の一部が補助されるものです。
「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」(Ⅰ~Ⅲ型)と「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」(Ⅰ~Ⅱ型)があり、類型ごとに補助上限額などが異なります。

一例として、「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」の、事業を第三者に承継したい人を支援する「Ⅱ型 売り手支援型」は、外注費、委託費、廃業費用などの補助対象経費の2/3以内(補助上限400万円以内。廃業費用を活用する場合は600万円以内)が補助されます。
2022年度の交付決定事業者はこちら

自治体による支援
地方自治体が農業承継する方に対して補助金を支給している場合もあります。
例えば、石川県羽咋市では、市内で事業承継した方が新たに取り組む事業にかかる経費などの一部を補助する「事業承継支援補助金」を設けており、2022年度からは上限200万円(補助率:経費の1/2)を補助しています。
出典:羽咋市HP「【リニューアル!】事業承継する人を支援します!」

手厚いサポートを駆使し、農業の後継者へ

事業承継は、次世代へ貴重な資産を引き継ぎ、さらなる成長と発展を見込む取り組みです。農業を継ぐ人にとっても、非常に手厚いサポートを受けられるため、新規就農を視野に入れている方は検討してみてもいいかもしれません。
経営者が育て上げた農業が、次世代へとスムーズにバトンタッチされていくことを願っています。

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