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事業承継とは。農家の後継者不足を第三者継承で解決? 行政の支援策なども紹介

事業承継とは。農家の後継者不足を第三者継承で解決? 行政の支援策なども紹介

後継者不在は経営者にとって頭の痛い課題です。帝国データバンクの2020年の調査によれば、全国で後継者のいない会社は65.1%にのぼります。農業ではさらに深刻で「2020年農林業センサス」では5年以内の後継者を確保していない経営体は71.1%。こうした後継者問題について、どのような解決策があるのか。身内に引き継ぐ場合、そして第三者に引き継ぐ場合などの事業承継の課題や、そこにある選択肢のメリット・デメリットなどを解説します。

事業承継とは

事業承継とは事業を引き継ぐ行為

事業承継とは、経営者が事業を後継者に引き継ぐ行為です。
「事業継承」という似た言葉もありますが、それぞれニュアンスが異なります。
辞書では同じように説明されている「継承」と「承継」ですが、事業で考えるときの「継承」は、身分や財産、権利などを引き継ぐという意味です。対して「承継」は、これらに加えて精神的なものまで引き継ぐこととされています。
事業を引き継ぐことは、経営理念や伝統なども引き継ぐことであり、一般的にも中小企業庁でも、事業承継と呼ばれることが多くなっています。

事業承継で引き継がれるもの

事業承継により、具体的には下表のようなものが引き継がれます。

有形経営資産 農地、施設、農業機械、資金(運転資金・借入金など)、株式……など
無形経営資産 経営理念、権限、許認可、取引先との人脈、生産技術、ノウハウ……など

当然ながら、それぞれ「事業承継をします!」と言って、いっぺんに引き継がれるようなものではありません。
どれも一朝一夕に引き継ぎは終わらず、後継者の育成まで考えれば、5年から10年をかけるべきだとも言われます。

事業承継がされなければ

事業承継がされなければ、現在、経営している代で事業は終了してしまいます(廃業)。
廃業してはいけないということは、もちろんありません。長年、赤字が続く事業などは、誰にも継がせず廃業することも選択肢の一つでしょう。
ただ、もしも「子供が継がないから……」など、後継者不在を理由に、廃業を検討するようなら、もったいないかもしれません。
蓄積されたノウハウや人脈、築き上げた資産などの、有形・無形の経営資産がゼロになってしまうことに歯がゆい思いのある経営者は少なくないはずです。

事業承継の3つのパターン

後継者候補は家族だけではありません。以下、3つのパターンについて紹介します。

①親族への承継
まず、子供や親族へ、事業を引き継ぐ方法です。一般的な方法だと言えるでしょう。

メリット ①関係者から心情的に受け入れられやすい。
②早いうちに後継者を決められる。
③相続などで財産や株式を移転できる。
デメリット ①経営の資質と意欲を持つ後継者候補がいるとは限らない。
②複数人いると決めづらく、経営権の集中が難しい。

②従業員への承継
次に、すでにともに働いている役員や従業員への引き継ぎが考えられます。

メリット ①能力により後継者を選べる。
②従業員が仕事に励むモチベーションにつながる。
デメリット ①後継者候補に株式取得などの資金力がない場合が多い。
②個人債務保証の引き継ぎなどに問題が多い。

③社外への引き継ぎ(M&Aなど)
そして3つ目に、後継者がいなければ、他の会社や個人などの第三者に引き継ぐ方法があります。

メリット ①後継者が身近にいなくても、後継者候補を探せる。
②現経営者が会社売却の利益を獲得できる。
デメリット ①希望の条件を満たす買い手が見つかるとは限らない。
②経営の一体性を保ちづらい。

事業承継の流れ

事業承継は、下図のような5つのステップを踏んで実行されます。

農業での事業承継の現状と課題

農業の事業承継の現状

では、農業での事業承継について、現状と課題を見ていきます。
農業は家族経営の比率が非常に高く、97%を占めます(「2020年農林業センサス」農林水産省)。すると、後継者も家族であることが多く、後継者を確保できている経営体のうち、実に95.4%が親族です。しかし、全体で見れば、7割が後継者を確保できていない現状があります。

家族の事業承継の課題

後継者候補である家族がいても、課題がないわけではありません。
経営者自身が、その立場に固執したり、子供たちの能力を信頼していないために、なかなか経営権を手放そうとしない場合です。
一方、子供が一緒に働いてくれているから、それだけで安心しているという例もあります。
事業承継は、次世代も経営がスムーズに行われるよう引き継ぐ取り組みですから、計画的に行う必要があります。

親子の事業承継の対策

親と子だからこそ、話しづらいということもあるでしょう。その場合は、JA全農とNPO法人農家のこせがれネットワークの作成による「事業承継ブック~親子間の話し合いのきっかけに~」を活用するのも一つです。
また、節税などの面から生前贈与などを利用して、資産を順次移行していくことも考えられます。農業では「農地に関する税制特例」などもあります。相続税や贈与税などの税金の計算は複雑ですので、総合的に判断したい場合は、税理士などへの相談をお勧めします。

農業での事業承継(第三者継承)

注目される第三者継承

近年、注目されるのが第三者継承です。第三者承継と呼ぶ場合もありますが、農業では第三者継承のほうが用語として一般的です。マッチングのための、公共サービスも民間サービスもあります。
後継者不足から、第三者への引き継ぎを検討する人もいるでしょう。第三者の立場は、農業に新規参入する会社や、新規就農者など、さまざまです。

法人だと資産継承が容易

事業を譲り渡したい現経営者が個人事業者の場合、第三者継承では特に、法人設立を検討するのもよいでしょう。
個人経営の場合、農地の利用権を再設定する必要が生じたり、金融機関との関係が継続されないなどのデメリットがあるからです。
法人の場合、資産は法人のものになっているため、譲り渡す資産は株式が主となります。
つまり、資産継承が容易になり、現経営者と事業を引き継ぐ第三者の、それぞれの手間を減らすことができます。

法人化による第三者継承の進め方の例

法人化による第三者継承の進め方の例を挙げます。

法人設立による第三者継承の流れ

現経営者と、引き継ぎたい第三者とがマッチングを行い(ステップ1)、研修を経て、具体的に第三者継承を進めることを決めます(ステップ2)。そして、共同出資して法人を設立します(ステップ3)。
そこからは、現経営者が役員報酬を受けながら、引き継ぎたい第三者へ営農指導を行い(ステップ4)、一定期間をかけて徐々に株式を売却することで事業を譲り渡します(ステップ5)。その後も、相談があればサポートをしながら、事業の成長を見守っていきます(ステップ6)。

ゆるやかに譲り渡すことで、継承希望者の金銭的な負担も軽減できますし、現経営者が持つ農業技術や人脈などを無理なく伝えることも可能です。
なお、譲渡額や条件を口頭だけで決めると、後にトラブルにもつながりかねません。書面化して契約を結んだり、仲介機関のコーディネートを頼るなどの対策もトラブル回避には有効でしょう。

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事業承継で活用できる補助金の例

補助金の活用も視野に

さらに、事業承継の各場面で活用できる補助金などもあります。
経営発展のために、活用を検討するのもいいでしょう。
以下、2つの例を挙げます。

経営継承・発展等支援事業
先代事業者(中心経営体など)から経営の主宰権を譲り受けた後継者が、経営発展計画を立てて取り組む際の必要経費のうち、最大100万円が補助されるものです。
先代の事業者は個人事業者でも法人の代表者でも構わず、後継者は親族でも第三者でも構いません。
なお2021年8月16日より二次募集が開始されました。詳細は下記ページで確認できます。
令和3年度「経営継承・発展等支援事業」

事業承継・引継ぎ補助金
事業承継をきっかけに新しい取り組みなどを行う中小企業や、経営資源の引き継ぎを行う中小企業などを支援する制度です。取り組みにかかる経費や、経営資源の引き継ぎにかかる経費の一部が補助されるものです。
「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」(Ⅰ~Ⅲ型)と「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」(Ⅰ~Ⅱ型)があり、類型ごとに補助上限額などが異なります。
一例として、「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」の、事業を第三者に承継したい人を支援する「Ⅱ型 売り手支援型」は、外注費、委託費、廃業費用などの補助対象経費の2/3以内(補助上限400万円以内。廃業費用を活用する場合は600万円以内)が補助されます。

一次公募は受付終了、二次公募は2021年8月13日までです。詳細は公募要領を確認してください。
令和2年度 第3次補正予算「事業承継・引継ぎ補助金」

まとめ 農業の後継者不足の解消へ

事業承継は、次世代へ貴重な資産を引き継ぎ、さらなる成長と発展を見込む取り組みです。
早めに準備をすることで選択肢も増えていくことでしょう。
経営者が育て上げた農業が、次世代へとスムーズにバトンタッチされていくことを願っています。

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