病気対策の最適解は“予防”にあり
延べ栽培面積約600ha、年間生産量は約6万t。名実ともにキュウリの一大産地として全国にその名を轟かせる宮崎県では、生産者の作付け時期や栽培期間も多種多様。9月の定植から6月の半ばまで1毛作をする生産者が主ですが、早期水稲やナスなどとの多品目栽培で、繁忙期の重複を避けながら数回に分けて作付けをする生産者もいます。
「キュウリのみ栽培している生産者さんが多いことからもわかるように、宮崎県のキュウリは生産量のみならず、品質も優れています。生産者の方々のたゆまぬ努力と情熱によって、“キュウリ日本一”の称号は守られています」。
そう話すのは、宮崎県西諸県農林振興局農業経営課長(前県総合農業試験場生物環境部副部長)の黒木修一さんです。普及員として営農指導にあたっていた2004年、農作物の病気と向き合う中で、治療剤を主体とした防除に疑問を感じるようになったと当時を振り返ります。
「人間に置き換えるとわかりやすいのですが、人は病気になったらお医者さんに診断してもらい、薬(治療薬)を処方してもらいますよね。一方、農薬は比較的購入が容易で、自由に使用できます。 しかし、経験や知識がなければ病気の診断は難しく、適切な薬剤を選べなかったり、同じ薬剤の連用で耐性菌が発生する度に、違う薬剤へ切り替える必要も出てきます。これでは安定した生産を続けるのは難しいでしょう」。
そこで黒木さんが提唱したのが「毎月1日は銅剤の日、15日はダコニールの日」というキャッチフレーズ。使用回数に制限がない銅剤と登録病害数が多い『ダコニール1000』によって病気を未然に防ぐことを目標としたこのフレーズは、その単純明快さと親しみやすさから、瞬く間にキュウリ生産者の間で浸透していきました。
「毎月1日は銅剤、15日はダコニール」が宮崎スタイル
「ほ場では気温や湿度などの影響でさまざまな病気が同時に発生します。その度に治療剤を使用するのは、コストの面でも大きな負担になっていました。複数の病気を防ぐためには登録病害数が多い予防剤が有効です。特に『ダコニール1000』は一度で多くの病気を同時に予防できるため、定期的に使用することで病気の発生を未然に防ぐことができます」と話すのは、黒木さんの後を受け、県総合農業試験場生物環境部副部長(前県農政水産部農業経営支援課専門技術担当主査)として活躍している後藤弘さんです。「『ダコニール1000』と銅剤で定期的な予防を行い、それでも発生してしまった病害だけ治療剤による早期防除を行えば、コストを抑えるとともに散布労力の低減にもつながります」。
登録病害数が多いこと以外にも、『ダコニール1000』はキュウリでの使用回数が多い点や薬剤耐性菌発生のリスクが極めて低いことも魅力と、黒木さんは評価します。「宮崎県のキュウリ生産者は営農スタイルや規模によって作付け期間が異なります。定植から収穫終了まで8回散布できる『ダコニール1000』は、長期栽培でも月1回の使用が出来ます。毎月決まった日の使用を促すフレーズが定着したことで、予防の意識が高まっていきました」。
『ダコニール1000』は発売から30年以上が経過していますが薬剤耐性菌が問題となった報告はありません。定期散布を習慣化することで、生産者は安心して栽培に向き合えることも大きなメリットと言えるでしょう。
『ダコニール1000』の使い方や注意点を問うと、黒木さんが次のように説明してくれました。
「葉裏にもしっかり薬剤を付着させることがポイントです。最初に、上から下に向かってたっぷりと散布することで葉表についている胞子が飛び散るのを防ぎつつ、その後は下から丁寧に散布して葉裏にも薬液がしっかりかかるように散布することがコツです」。
銅剤も薬剤耐性菌の発生リスクが極めて低い予防剤ですが、主成分が銅のため、使用回数が増えるとキュウリの果実が汚れる恐れがあります。品質を高めるためにも、銅剤とダコニールの併用が理想とのことです。
「繰り返しになりますが、定植から収穫終了まで『毎月1日は銅剤、15日はダコニール』を繰り返すことで防除を単純化し、防除に割く時間や労力を軽減することができます。生産者からも、『散布日が決まっているので作業スケジュールが立てやすい』という声が多く寄せられています」(黒木さん)。
防除の意識を全国に広げ、市場価格の安定を目指す
宮崎県では県ブランドの1つとして、「ワンタッチきゅうり」 を推進しています。「ワンタッチきゅうり」はハウスで栽培したキュウリを収穫しながら箱に詰めて出荷をします。そのため、キュウリに触れるのは収穫時の1回のみ。これによって表面のトゲトゲが守られ、キュウリの命とも言える鮮度やシャキシャキ感をキープしています。
生産者、関係機関がひたむきな努力と情熱を注いだ結果、不動の地位を確立した宮崎県のキュウリ。その一端に『ダコニール1000』の存在があることが今回の取材でわかりました。病気を未然に防ぐことで、これまで防除に費やしていた時間を収穫作業に回すことができ、作業時間の短縮につながっていることも大きな収穫と言えるでしょう。
「高齢化や担い手不足が加速する宮崎県のキュウリ生産者は、面積あたりの収量を上げることで出荷売上げと市場価格の安定を図ることに尽力しています。全国的に見てもキュウリの生産者は減少傾向にあるため、ぜひ、正しい防除法を全国に広げ、キュウリを盛り上げていきたいですね」と黒木さん。
宮崎県の事例を参考に、体系防除の中で「月1回はダコニール」の方法を実践してみませんか?『ダコニール1000』が、憎き病気から大切な作物を守ります。
【取材協力】
宮崎県総合農業試験場
〒880-0212
宮崎県宮崎市佐土原町下那珂5805
TEL:0985-73-2121
【問い合わせ】
ダコニール普及会
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