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日曜定休にして良かったこと悪かったこと。農家夫婦の本音トーーーク!!

久保田 夕夏

ライター:

日曜定休にして良かったこと悪かったこと。農家夫婦の本音トーーーク!!

「農業=休みなし」。世間のこのようなイメージにたがわず、果樹農家である筆者の夫も就農から18年間を“ノー定休日”で過ごしてきました。しかし子育てをきっかけに我が家も働き方改革を導入。年間で最も忙しい3カ月間を除いて日曜日を定休日と決めました。週休を手に入れた夫は、家族は、そして農園は。いったいどのような変化が訪れたのでしょうか。

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プロフィール

久保田勝揮(くぼた・よしき、夫)
福岡県のかんきつ農家に長男として生まれ、今年で就農20年目。30種類以上を育てているかんきつマニア。作業は丁寧でこだわって栽培するタイプ。子供の保育園送迎を担当している。

筆者(妻)
夫とは別の農業法人で社員として働き今年で10年目。水耕栽培のレタスや露地野菜を育てている。会社はスタッフ全員日曜定休。農業は大好きだが遊ぶことや旅行はもっと好き。

日曜定休にしたきっかけ

もともとは定休日がなくて毎日仕事していたよね。この日は用事があるから休んでね、と頼まない限りは、盆正月以外は必ず同じ時刻に家を出ていた。日曜日を定休にしてもらうのは私が言い出したんだよね。
そうそう、ちょうど2年前。二人目を妊娠中のときに、つわりがひどくて日曜日に息子(当時1歳半)を一人で見るのが大変だっていうから休みにしたんだ。ちょうど農繁期が終わったタイミングだったから割とスムーズに休みをつくれたんだよね。

ワンオペ育児(一人で育児を行うこと)で一日を過ごすと、日曜日は仕事の疲労回復どころかさらに疲労が蓄積してしまって、会社の仕事に支障が出たんだよね。仕事より幼児を一人で世話するほうが数倍きつい! 休んでもらって本当に助かったよ。
農作業が特に忙しい3カ月間は今でも休みなしだけど、それ以外の9カ月は日曜定休で定着したね。

日曜定休のメリット

日曜定休にしてから2年経ったけど、なにかいいことはあった?
ん~休みの日に時間を気にせずゆっくり寝られることかな。朝バタバタ出かけなくていいのって素晴らしいよね。

18年間、ほぼ毎日仕事をしていた人の言葉は重みが違うわね。
あとは曜日感覚がついたかな。家と畑の往復しかしてないと、わからなくなるからね。

確かに付き合い始めた頃は曜日感覚がかなりおかしくて、この人は大丈夫かしらと心配になったよ。けっこう「農家あるある」なのかな。
作業能率が上がったとかはないの? だって7日かけてやっていた仕事を6日でしなきゃいけなくなったんだから、かなり効率化したんじゃない?
いや~別にないかな。特に1年前からは、兼業農家で会社員をしていた父が定年退職して農業一本になったから、人手は増えたしね。

効率化ではなく人数でカバーしていたのか。でもノートに段取りをメモしている姿を見るようになったから、以前に比べると計画性は出たかもしれないね。

仕事と子供

あとは、子供との時間が増えたこともメリットじゃない?
日頃から僕が保育園の送迎をしているし、夕方からはずっと一緒だから、もともと子供との時間は足りてたかな。

確かに時間はあったね。でもその時間帯だとどこかに出かけるのは難しいよね。家族で休日に外出できるようになったのは私はとてもうれしかったよ。

日曜定休のデメリット

なにか悪かったことはあった? 仕事が終わらなくなったとか。
そうだね~終わらないってことはなかったよ。でも日曜日に準備できないから月曜日の配達ができなくなったね。

月曜日の注文は郵送するか、ほかの日に調整することになったよね。出荷日が減って取引先とトラブルになったことはないから、調整はうまくいっているということかな。たまに日曜日に家族みんなで配達に行ったことはあるね。これは子供たちに親が外で働いているところを見せる機会になったからいいと思ったよ。

販売の様子

家で働いてるところはよく見ているけど、出荷先を見せると親の仕事をもっと理解できるよね。

両親からの反応はどうだった?休みの間も両親は働いているから、気まずくないのかなって。私はちょっと申し訳なく思っていたんだけど……
その点は「親は親、子は子」でわけて考えてくれているから大丈夫だよ。でも、もし同居していたら気まずさはあっただろうね。

同居の場合は休日導入のハードルがぐっと上がりそうだね。休日の天気が良くて作業日和だったりするとさらに……。
困るのは、日曜にどんな作業をしたか連絡がないんだよね。だから月曜に畑に行って初めて、あれ、この作業はすでに終わっている、と段取りが狂うっていうのはけっこう起きているかな。

そこは情報共有したいところだね。ホワイトボードに書くのはどう?
ホワイトボードは置いたんだけど、まぁ書かないよね~。いつの間にか片付けられていたよ……。

つ、つらい。親世代に新しい習慣を身につけてもらうのはなかなか難しいよね。自分から作業前に聞いてみるとか、こちらから働きかけたほうがよさそうだね

日曜定休、これからどうしていきたい?

定休日のメリットデメリットを見てきたけど、これからはどうしたい? 定休日はやめたい?
やめたいとはおもわないよ。もう定着してきているから。本当は就農してすぐは定休日が欲しかったんだよ。でもじいさんが「雨の日が休みタイ(休みだ)!」っていうんだよね。しかも父も休日ゼロで働いていたし。祖父も父も働いているときに自分だけ休んでごちゃごちゃ言われるのはいやだったから、その時はあきらめたんだ。それで平日の昼休みを延ばすとか、疲労がたまらないように作業を調整したんだよ。そのうちにそれに慣れて、休みも欲しいとは思わなくなったんだよね。

へぇ~その話は初めて聞いたや。生まれつき休みがいらないタイプなんだと思っていた。休みが欲しい時期もあったんだね。
本当に休みがいらないっていう農家もいると思うよ。休みをつくるのがめんどくさいと思う人もいるだろうし。

本人はそれで納得していても、家族がどう考えているかは聞いてみないとわからないよね。私は小さいときから土日は休みという考えが染みついていたから、結婚後は休みの日にいつも一人で寂しかったなぁ。それに子供が生まれてからは、一人で育児するのが心身ともにきつくてストレスがたまるばかりだった。会社は休みなのに全力で働いている感覚だったよ。
それは言われるまで全然わからなかった。むしろ休日は一人のほうが楽って言う人もいるし、本当に人それぞれだから話してみないとわからないよね。

農業って忙しいんだろうなぁと思って、結局結婚してから3年も言い出せなかったんだよね。私は会社で農業をやっているから休めるけれど、自営だとそうもいかないのかなと思って、気を使っていたのよ。でも仕事の話を聞いているうちに、これなら休めるのでは?という気もしてきたんだよね。
果樹栽培は農繁期と農閑期がはっきり分かれているからね。ほかの作物でも年間を通して全く休めないということはないんじゃないかな。

むしろ全く休めないという状態は経営にとって危険かも。誰かがケガをしたり、冠婚葬祭が入ったりすれば予定が全て狂ってしまうよね。農業は休みがないから継がないって子供たちから言われるのも嫌だな。この理由で継がなかったという人はけっこう聞いたことがあるよ。

子供は遊びに行きたい

そうだね。青年部や消防団ですごく忙しい時期があったけど、その時間はひねり出せていたしね。家族の時間も同じようにとらえればいいのかもしれない。

仕事や地域の付き合いももちろん大事だけど、一番替えが利かないのは家族の一員としての自分だということは忘れないでほしいな。
ただ、上の世代には、「休み=サボってる、遊んでる、不必要な時間」って思われちゃうんだよね。特にじいさんばあさん世代は畑に行くことが生活の一部になっている場合が多いかも。

勤勉なのは素晴らしいよね。だけど毎日働けば「食べていける農業」はできるだろうけど、将来的に生き残る農業を目指すなら、広い視野を持ち続ける必要があるよね。畑と家の往復になってしまうと世間からどんどん遠ざかっていく気がするんだよなぁ。
確かに目の前の仕事をこなすだけ、という状態には陥りやすいかもしれないね。日頃から仕事の一環として外出を積極的に取り入れているとか、情報収集の時間を確保している場合は大丈夫じゃない?

そうだね。日々の作業以外の時間を持てていればいいよね。現状維持から一段グレードアップするための余地というか。定休日をつくると強制的に余白がつくられるよね。トレンドやニーズが見えやすくなると、売り上げアップにもつながりそう。これまでだって農産物の種類や生産量は時代の流れに沿って大きく変わってきたからね。

家族で視察

これからどうしたいかって言われたら、もう少し目的をもって日曜日を過ごしたいかな。なんとなくだらだらしがちだから。というか休みがあるのに慣れてないから何をすればいいのかわからないんだよね。

そうだね。なにしろ18年ぶりの休みなんだから。遊びに関しては私が得意だからいくらでも頼って!(笑) たまにはひたすらのんびりするっていうのもありだと思うけどね。

休みの取り方はそれぞれの農家の数だけ適した形があるはずです。家族で一緒に休むだけでなく、日をずらして休むほうが都合が良い場合もあるでしょう。大切なのは働き方や休日の価値観を共有し、みんなが納得できることではないでしょうか。今更と思わず、夫婦で、家族で改めて話し合ってみませんか。

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