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太陽熱土壌消毒で雑草防除! 除草剤なしで幼苗までのニンジンを守れ

太陽熱土壌消毒で雑草防除! 除草剤なしで幼苗までのニンジンを守れ

「順調に発芽すれば栽培の半分は成功」ともいわれるニンジン。夏まき栽培の場合、発芽条件となる気温の心配はほぼないのですが、本葉が10枚くらいになるまでの幼苗期は力強い夏の雑草に負けてしまう心配があります。そこで今回は、除草剤など農薬を使用せず、太陽熱を活用した雑草対策を紹介します。農家2人の実践方法からその効果まで、じっくり取材してきました!

ニンジン幼苗期の雑草対策はひと仕事

ニンジンの芽

小さなニンジンの芽

多品目を育てる野菜農家にとって、秋から冬まで収穫できるニンジンは欠かせない野菜のひとつ。品種にもよりますが、国内で一般的に売られている五寸ニンジンは播種(はしゅ)から110〜130日で収穫可能となり、ある程度成長したニンジンは寒さに強いので数カ月間収穫できます。

ニンジンの発芽に最適な気温は15〜25℃で、幼苗は暑さに強いので、温暖な土地では7月下旬から9月上旬にかけての夏まき栽培が一般的です。

除草剤などの農薬を使わない農家にとっては、播種後に乾燥対策を行い発芽するまでと、発芽してから本葉が10枚ほどになるまでに行う雑草対策もひと仕事。夏の雑草は成長が早く、ニンジンの芽や幼苗まわりの雑草を抜くときにニンジンも一緒に抜けてしまったり、雑草に埋もれてしまったりするからです。

「太陽熱土壌消毒」とは

実は、そんなひと仕事を解決してくれる作戦があります。それは、「太陽熱土壌消毒」。「太陽熱利用土壌消毒」「日光による土壌消毒」など、他にもいくつかの呼び方があります。播種の数週間前から畑の土を太陽の熱で消毒することにより雑草や病害虫を防ぐというもので、昭和の終わりごろに確立した農業技術です。ニンジン栽培では幼苗期の雑草防除に有効ですが、他の作物の病害予防などにも効果があるとされています。

太陽熱土壌消毒の効果とは

夏の雑草

成長の早い夏の雑草

太陽熱土壌消毒は、太陽熱エネルギーにより地温が上昇することで、雑草の種子や病原菌などを死滅させる防除技術です。この方法は土壌の有用な微生物を殺すことなく消毒でき、土壌に含まれている窒素やリン酸を作物が利用しやすい形態に変化させる「可給化」の働きも持ちます。

太陽熱土壌消毒の適期

太陽熱土壌消毒に適した時期は、一年で最も暑い梅雨明け(7月中~下旬)から9月上旬くらいまでとなります。また温暖な地域では5月上旬から可能です。消毒は3週間ほど行うのが一般的ですが、地中の温度を55~60℃に保てれば2週間ほどで効果がでます。

その年の気候にもよるのですが、五寸ニンジンの場合は7月の1〜3週目に太陽熱土壌消毒を行い、4週目に播種、8月上旬に発芽して順調に育てば、11月下旬から3月上旬あたりまで収穫できるという流れです。

参考記事
酷暑を逆手に!農研機構に聞く「太陽熱土壌消毒」の効果的な利用方法とは
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安藤農園と月野原農園の太陽熱土壌消毒

ここでは、埼玉県所沢市で太陽熱土壌消毒を利用してニンジンを栽培している「安藤農園」の安藤(あんどう)さんと「月野原農園」の樽谷(たるや)さんの様子をみていきましょう。農薬を使用しない2人は、太陽熱土壌消毒によってニンジンの幼苗期の仕事を軽減させることができました。

畑を耕したあとにマルチ張り

マルチ張り

今年(2021年)、安藤農園の安藤さんはニンジン用の畑を太陽熱土壌消毒するために、6月下旬にマルチ(※)を張りました。ニンジンの根部が肥大してきたときの水はけも考慮して畝を高めに立て、その上から土壌消毒用のマルチを張ります。

※ 畑の畝をビニールシートやポリエチレンフィルム、紙やワラなどで覆うこと。英語の「mulching(マルチング)」を略した農業用語。

使用するマルチは透明で薄めのものを使用する農家が多いそうで、土壌消毒用として商品化されているものもあり、安藤さんは厚さ0.015ミリ、幅135センチ、長さ500メートルの「消毒用フィルム」を使用しています。

マルチを張った畑

マルチを張ったニンジン栽培用の畑。数日経過しているので、マルチを張っていない部分には雑草が生え始めています

マルチをはがして播種

マルチはがし

月野原農園の樽谷さんは、太陽熱土壌消毒のために2カ月ほど張っていたマルチを7月下旬にはがしました。樽谷さんは梅雨前にマルチを張りたかったので消毒期間が長めです。またマルチを張っていない所にも雑草対策として稲わらを敷いています。

そして、マルチをはがしたあとは、すぐに人力用のロール式播種機でニンジン(陽州五寸)の種をまきました。播種機を使うとまっすぐ等間隔に種がまけるので便利です。またニンジンの種はとても小さいので、コーティング成形されたペレット種子と呼ばれる種を利用。ニンジンのペレット種子のサイズは2.5~3.5ミリで扱いやすくなります。

ニンジンの播種

ニンジンの播種。太陽熱土壌消毒を行っていない麦わらで覆われた部分は、その下から雑草が生えています

夏まきのニンジンは10日前後で発芽

発芽したニンジン畑

ニンジンの芽は1~2センチなので写真では分かりにくいのですが、太陽熱土壌消毒をしていない部分の雑草はボウボウです

安藤農園・月野原農園ともに、10日前後で無事にニンジンの芽が出てきました。また太陽熱土壌消毒のおかげで、しばらく芽や幼苗のまわりに雑草が生えないので安藤さんも樽谷さんもひと安心です。あとは本葉が2~3枚になったころに1度間引きして苗の間隔を2~3センチに、さらに本葉が5~6枚になったころ2度目の間引きをして間隔を6~10センチにします。

播種から2カ月ほど経過すると本葉は10枚ほどになり、地中では根部が肥大化してニンジンらしくなってきます。そこまでいけばさほど雑草の心配はなくなり、あとは土寄せや、農家によっては追肥なども行いながらニンジンの世話をして、収穫を待つ状態となります。

まとめ:除草剤がなくてもニンジン栽培は大丈夫!

安藤さん・樽谷さん

埼玉県所沢市で農業を営む安藤さん(左)と樽谷さん(右)

除草剤など農薬を使用しない農家の夏の雑草対策として、五寸ニンジンの播種から幼苗まで効果を発揮する太陽熱土壌消毒の方法を、農家の安藤さん・樽谷さんに教えてもらいました。

2人とも多品種の野菜を栽培しており、梅雨明けは夏野菜の世話が忙しいので、早めに土壌消毒用マルチを張っていますが、一般的な流れは次のようになります。

  • 7月の1〜3週目に太陽熱土壌消毒を行う
  • 7月の4週目に土壌消毒用マルチをはがして播種
  • 8月上旬(播種後10日前後)に発芽
  • 播種後約2カ月は芽や幼苗まわりに雑草がほぼ生えない

※ 温暖地である埼玉県西部の事例です。畑のある地域によって時期は異なります。

注意点としては、その年の天候を予測して太陽熱土壌消毒用のマルチ張り・マルチはがし・ニンジンの播種のタイミングを決めること、土壌消毒に適したマルチをきちんと張ること、などが挙げられます。

これまでニンジン栽培で夏の雑草対策に困っていた人、今後農薬を使用せずニンジンを栽培したい人は、次のシーズンに実践してみませんか?

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