取材中、“自動的”に農地が集まってくる瞬間を目撃
中森さんは東京農大を卒業後、青果店の経営などを経て就農を決意し、2016年に株式会社の中森農産を設立した。
就農当初から規模拡大を目標に掲げており、地権者を回って積極的に田畑を集めてきた。2021年は150ヘクタールからスタート。コメと小麦、大豆が主な栽培品目で、裏作として作っている面積もカウントすると、栽培面積は合計で200ヘクタール近くに達している。
しかも2021年は、途中でさらに25ヘクタール増えた。米価下落の影響で、営農を縮小する農家が出始めたためとみられる。中森さんは「半ば自動的に農地が集まるようになっている」と話す。中森さんほど拡大意欲が強く、田畑を引き受ける農家は少ないからだ。
今回の取材で、偶然その場面を見ることができた。田んぼをバックに中森さんの写真を撮影しようとしていたときのことだ。トラクターに乗ってたまたま通りかかった2人の農家が中森さんに声をかけ、何やら話し込み始めた。
話が終わって戻ってきた中森さんにたずねると、「たったいま合わせて0.5ヘクタール増えた」という。高齢で規模を縮小している農家の田んぼと、家族が食べる分だけつくっていた農家の田んぼだ。中森さんが言うように、「自動的」に農地が集まってくる瞬間を見ることができた。
農業関係者の間には「専業の大規模農家ほど米価下落の影響が大きい」という指摘がある。兼業農家は別の収入で稲作の減収をカバーできるのに対し、専業で規模が大きいほど損失がふくらむ恐れがあるからだ。
その点に関して言えば、中森農産は「超」のつく大規模経営だ。しかも専業。ふつうなら、下落の影響をまともに受けそうなところだろう。だが中森さんに聞くと、「影響はない」という答えが返ってきた。
米価安の影響を回避できた二つの対策
「埼玉のコメは外食向けが多く、コロナで米価が落ちるのはわかりきっていた。だから、影響を受けないように手を打った」。中森さんはそう話す。