日本の畜産を盛り上げたい!―JGAPを通じて人にも動物にも優しい畜産を目指す遠野牧場の挑戦―|マイナビ農業

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日本の畜産を盛り上げたい!―JGAPを通じて人にも動物にも優しい畜産を目指す遠野牧場の挑戦―

日本の畜産を盛り上げたい!―JGAPを通じて人にも動物にも優しい畜産を目指す遠野牧場の挑戦―

日本各地の農畜産物の生産現場で認証取得に向けた取り組みが広がる「JGAP 」。前回(記事はこちら)紹介したプライベートブランド「顔が見えるお肉。」を展開するイトーヨーカ堂の商品「いわて遠野牛」もJGAP認証農場「遠野牧場」で育てています。
そこで今回、岩手県遠野市を訪れ、「いわて遠野牛」が育つ環境や、JGAP取得がもたらしたメリット、安心・安全な食への探究心などをお聞きしました。

JGAPとは

JGAPとは農場や JA などの生産者団体が活用する農場・団体管理の基準であり、認証制度です。また、農林水産省が導入を推奨する農業生産工程管理手法の一つです。 第三者機関の審査により、JGAPが正しく導入されていることが確認された農場には、 JGAP 認証が与えられます。適切に管理されている農場のため、安全で持続可能な農畜産物を提供することができます。

遠野育ちの黒毛和牛を!「遠野牧場」誕生秘話

岩手県を横断する北上(きたかみ)高地の中南部に位置する遠野(とおの)市は、内陸と沿岸を結ぶ交通・産業の要所で、標高1,917メートルの早池峰山を最高峰とする高原が周囲を取り囲む自然豊なまちです。

はじめて訪れても懐かしさを感じる風景は「永遠の日本のふるさと」とも表現され、遠野市に古くから伝わる数多くの民話をまとめた柳田國男の「遠野物語」は、民俗学だけでなく、文学としても高い評価を得ており、現在まで読み継がれています。

市の名前を冠した「株式会社遠野牧場」が誕生したのは2011年6月のこと。遠野市はもともと和牛の繁殖が盛んな地域だったこともあり、遠野市とイトーヨーカ堂(本社:東京都千代田区)、エスフーズ(本社:兵庫県西宮市)が「いわて遠野牛」の構想をあたためていました。

設立に向けて準備が進むなか、2011年3月に東日本大震災が発生。一時は設立の危機に直面するも、震災復興と地域振興の礎になることを目指し、関係者の尽力によって震災から3ヶ月後に「株式会社遠野牧場」が誕生しました。東京ドーム6個分もの広大な敷地では、常時、約2300頭の和牛を飼育しています。 

 
「岩手県にはさまざまなブランド牛がありますが、『いわて遠野牛』の特長は遠野で育った牛であることです。飼料も遠野産の飼料米を混ぜて与えているんですよ」。 
と、話すのは取締役場長の佐々木学さん。他にも地域資源を循環させる取り組みとして、牛糞を牧場内で完熟堆肥に加工し、遠野市内の農家に販売。農作物の肥料に利用されています。

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遠野牧場 取締役場長 佐々木学さん。畜産歴26年のベテランです

 
 

安全・安心な食肉を届けたいからー。JGAP認証への挑戦

遠野牧場がJGAP認証に取り組んだきっかけは、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)を見据えてのことでした。選手村で提供される食材の要件となったJGAPは、日本国内はもとより、世界に「いわて遠野牛」をPRできる絶好のチャンスと考えたからです。

「東京五輪がきっかけではありますが、全国各地にブランド牛が存在する日本において、JGAP認証取得は差別化を図るツールとなり、今後必要になってくると考えました。何より、消費者に一層の安全・安心をお届けすることは、畜産家としての責務。それを証明するためにもJGAP認証取得は必須でした」。

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好奇心旺盛で人なつっこい「いわて遠野牛」

家畜・畜産物におけるJGAPの審査基準は、持続可能な農場経営への取り組みに重要となる食品安全を始め、家畜の健康(家畜衛生)や快適な飼育環境への配慮(アニマルウェルフェア)、労働者の安全対策、環境保全など、全部で113項目にもおよびます。
JGAP認証取得の責任者となった佐々木さんは、基準で求められる項目を日々の作業管理に当てはめ、どのように実行するかを文書化していきます。管理する相手が命ある動物のため、さまざまなことを想定し、考慮しながら文書で表現する作業は難しく、ベース作りに苦労したと当時を振り返ります。

「既存の牛舎を各項目に当てはめながら、不足部分は新たに機械を導入したり、飼料の保管方法を見直したりなどの工夫をしました。文書化する作業は大変でしたが、項目を見ると衛生管理など、あたりまえのことが定められていることがわかりました。また、感覚に頼っていた部分を文書化することで、作業分担が明確になったのも大きな成果です」。

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空間に余裕のある牛舎。小さな柵を作り、子牛は親のもとへ自由に行き来できるようにしています

社員一丸となってJGAP認証取得に取り組んだその成果が実を結び、遠野牧場は2020年3月にJGAP認証農場を取得。
現在、イトーヨーカ堂では「いわて遠野牛」を「顔が見えるお肉。」として東日本の約40店舗で販売しています。 

安全・安心だけじゃない!JGAPがもたらしたうれしい効果

食肉の安全性や牛舎の衛生管理、飼料の保管など、項目は多岐に渡る家畜・畜産物のJGAP審査基準。そのなかには労務に関する項目も含まれています。

「生き物を扱う畜産業は休みが少なく、過酷なイメージを抱く方も多いことでしょう。しかし、当牧場を含め、ほとんどの牧場ではシフト制が組まれており、いまは夜間の勤務もありません。もちろん休日もしっかり取ることができます。JGAP認証取得による第三者機関の審査を受けたことでその意識が明確となり、改善につながったことも大きな成果です。トータルとして経費が削減され、作業の省力化・効率化にもつながり、職場環境にもうれしい効果がありました」。

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あたたかいまなざしで「いわて遠野牛」を見つめる佐々木さん

このような変化は、担い手不足による一次産業衰退の歯止めになると佐々木さんはさらに期待を寄せます。
「企業として安全・安心に取り組むことは、新規就農者に農業の魅力を伝えることを意味すると考えています。当牧場がロールモデルとなり、畜産業を盛り上げて行きたいですね」。

JGAP認証を通じて就労環境も向上させた遠野牧場。畜産に興味のある従業員を通年で募集しているそうです。興味のある方はぜひお問い合わせを。

いわて遠野牛を日本全国、そして世界へ

遠野産飼料米を食べて育つ「いわて遠野牛」は、適度な霜降りを帯び、融点が低いため脂はしつこくなく、肉の味をしっかり味わうことができます。
イトーヨーカドーの精肉コーナーに並ぶ「いわて遠野牛」のパッケージには、JGAPロゴマークと佐々木さんの似顔絵が。消費者はおいしさと共に安全・安心を食卓に運ぶことができます。

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イトーヨーカドーで販売されている「いわて遠野牛」

このようなJGAP認証への取り組みは、地域農業の発展につながると佐々木さんは話します。

「法人、または生産者単体ではなく、地域全体がJGAP認証取得に取り組むことで、ブランド化や産地化へとつなげることができると思います。その輪が全国に広がれば、国単位で日本産食材の安全・安心を謳(うた)うことができます。当牧場としては今後も認証項目のチェックを徹底すると共に、品質向上を目指し、岩手を代表するブランド牛として日本全国、さらには世界へと『いわて遠野牛』を発展させ、JGAP認証農場としての役目を果たしていきたいと考えています」。

消費者、生産者、それぞれにさまざまなメリットがあることを伝えるJGAPのロゴマークは、丹精込めて農畜産を手がけた生産者への「勲章」のようにも見えます。

安全・安心への取り組みのみならず、業務改善や経営安定にも期待ができるJGAP認証取得は、日本の基幹産業である農業を明るく照らす道標になることでしょう。

取材協力

遠野牧場
電話:0198-64-2452
住所:岩手県遠野市附馬牛町東禅寺7地割95−3

お問い合わせ先

一般財団法人日本GAP協会 Japan GAP Foundation

JGAPの詳細はこちら
持続可能な日本の農業 JGAP認証を知ろう!
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GAP(ギャップ)とはGood Agricultural Practiceの頭文字で、直訳すると「よい農業の取組」という意味になります。「農業生産工程管理」とも呼ばれます。農林水産省では、「工程管理」のことを「農産物を作る際に適正な手順やモノの管理…

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